11 俺からのプレゼント
最近まで、バレンタインデーで俺から贈り物をしたと思っていた。
当時の自分は、世の中にバレンタインデーというものがあるらしい。それは、意中の男子に、女子がプレゼントを贈り告白出来る日らしい。と知って、さらに、こんなことを知っているのは、俺ぐらい?などと思っていて、暫くは、このプレゼントは、バレンタインデーの逆プレゼントと思っていた。
《手紙のやり取りが頻繁になったころ、思い出に、手紙を見直して見ると、季節的にバレンタインデーではなく、それなら貴女の誕生日に贈ったのだろうとまだ暫く思っていたんだ。でも今思い出すとそれも違っていたんだね》
交際が始まっても、頻繁な手紙の交換や、デートをすることでもなく時間が無為に過ぎていった。自分でも何の変化も感じていなかった。
それなら何かきっかけがほしいと考えていると、当時テレビで宣伝していたグルックという毛足の長い人形を、チョコレートの応募の景品でプレゼントするというCMがあり、当時東京で仕事をしていた姉に頼んで、購入してもらった。
届いた人形は、箱がつぶれていて、変形していた。どう見ても新品のはこではなく、いわゆるくたびれた箱だったため、彼女に贈るための包装に苦労した記憶がある。
一体姉はどのように入手したのか。しかし外観の見た目を良くすることは、中学男子には無理で、見た目は相当良くなかったはず。
自分でも少し興味があり、中を開け、付属?していたブラシで形を変えて遊んだため、中のビニル包装はテープで閉じ、精一杯未使用品のように繕った記憶がある。
毛の色は、白、眼は青だったような記憶がある。1967年9月から12月までのテレビ宣伝であったので、彼女に贈りたいと考えて手に入れるまでは、一ヶ月程度の時間経過があると思う。
グルックは、敬俊に彼女の席を予め聞いておき、手紙と共に、放課後、ほとんどの生徒が下校したのを見計らって、机の中に入れた。俺からの手紙には、こけしのお礼ともっと他の意味もあると思うと書いた。これが私から改めての正式な交際の申し込みであった。
《貴方の席は、窓から二列目、後ろから二列目だったかな。ふた式の机だったかな。もし手前が空いている机だったら、誰かに見られてしまうとか、何かの拍子に落ちてしまうとかあったろうけど、そんな心配は必要無かったようだね。正直 この時教室から出た直後から、貴女から手紙の返事をもらうまで、入れた机が間違っていたらどうしようと不安だったよ》
《大事にしてくれただろうけど、まだ持っているかい。もうないよね》




