10 呼び出しされて
《申し込みをされてからも、それほど変化のある交際があったわけではなかったね》
秋、午前中の授業の合間に、教室の後ろ出入り口から手招きされ、廊下に出ると、すぐにメモを渡された。腕をおろした状態から、メモを持った手を少しだけこちらに差し出して渡すしぐさは素早かった。
メモには、
「昼食後に給食室の裏に来て欲しい」
と書いてあり、午前の授業が終わり、昼食後、何事かと、指定された場所へ先に行って待っていた。
(自分の教室は、職員室、特別教室、体育館など学校全体で使用する場所からは、淳子の教室より離れていたため、普段は自分の教室方向へ淳子が来る必然はなかった。そして自分の席は、廊下側から二列目最後部。廊下と教室を隔てる窓や、教室のガラス戸から、廊下がよく見えた。授業の合間にこちらの方向へ来るのは(メモや手紙を手渡しされるときは)当然普段来る必要のない方向へ歩いてくるため、何かあるのかな?と察することが出来た)
給食室は校舎の外れにあり銀杏の葉が地面に落ちて風に舞っていた。待っている間、自分は、呼び出されて、のこのこやってきた事をあとで、からかわれるのではないかと不安があった。
しかし、5分ぐらい待っていると彼女が現れた。給食室と校舎を繋ぐ廊下を、校庭から、給食室裏へ横切ってきた。
自分は、ああからかわれたのではないと安心はしたが、次は、はっきりとした態度を表さないことの不満でも、彼女の口から出るのではないかとまだ心が休まらなかった。
きた方向を見て待っていた俺の視線を受け、俯き気味の、小走りで来た彼女と向き合っても、彼女の表情に笑顔はなく、立ち止まって向き合った、彼女の手から無言で小さな箱を渡された。渡した彼女はすぐに身を翻し今来た方向に小走りで戻っていった。会話はなかった。残された俺はただその場に立ち尽くしていた。
彼女の姿が見えなくなってから、その場で、箱を開けると高さ4㎝ぐらいの一対のこけしが入っていて、後で渡された手紙によると小学6年の修学旅行で友達と一緒に松島で買ったお土産だと知った。
《昼食を食べ終わる時間は不定期だったので、貴女は俺が給食室へ行くのを、どこかで見ていたのか な? 少し遅れてきたのはただの偶然?》
《校内だけど、普段は殆ど生徒も来ない場所だったよね。こけしを渡してくれて、二人きりだったけ ど、すぐ引き返してしまって、あれほど積極的に誘ってくれたのに、貴女もまだ恥ずかしかったのかなあ。俺はいつになっても、どこで会っても照れくさくて恥ずかしくて、でもうれしかったよ》
《プレゼントを贈った返事から考えるとこの日はもっと後で、11月ごろだったのかな、まだ覚えて いるかい?》
交際okとなってもまだまだ お互いに遠慮と恥ずかしさがあります。
彼女には、他に わだかまりがあります。




