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漆黒の姫と月の約束  作者: 月子
幼少編
7/33

会議

周囲の声に異常事態の発生を感じ取ったシェーラは慌てて水面から顔を放し立ち上がったが、何が起こったのか理解出来ないでいた。


(えっどうしたの? 何があったの? なんでみんなそんな目でこっちを見てるの? そんなに見られたら恥ずかしいじゃない!)


家族はともかく、若い魔術師団長レイザや騎士団長カイなどにも穴のあくほど見つめられて居心地の悪い思いをしつつ、何か失敗したのかと自分の身に目を移したシェーラは、そこで初めて身体に張り付いている黒髪に気がついて絶句した。


(えっ……???)


「あの、わ、私……クシュン!」


「レ、レイズ!温風だ!シェーラが風邪を引く!」


シェーラの小さなくしゃみに正気を取り戻したアルダンが、慌てて指示を出す。


十分後、レイズの魔法で乾かしてもらったシェーラは、白い布を頭から被せられ人目につかないよう裏口から皇宮へと戻り、許可がでるまで出ないようにと繰り返し言われて、自室へと入った。本来であれば、空へと一斉に放たれる月風船のロマンチックな光景をテラスで眺めながら家族水いらずで過ごすはずの晩餐の時間も、どうやら今年は独りで過ごさなくてはならないらしい。


(お父様もお母様も、お誕生日おめでとうって申し訳なさそうに抱きしめてくれたけど、かなり顔色が悪かった。やっぱりこの黒髪のせい、だよね)


シェーラの髪は、前世の白崎ましろのものより黒々とした、まさに「ぬばたまの」という枕詞がしっくりくる漆黒の黒髪だった。透けるようにきらきらとしていた金色はどこへやら、今は艶やかな黒が腰までを覆っている。シェーラは前世の記憶もあって黒髪自体にはさしたる抵抗を感じていないが、この世界では極めて特殊な例を除いて、黒髪は存在しない。しかし、その例外を知っているからこそ、シェーラはそれほど深刻に考えてはいなかった。


(黒髪という例外は、私だけじゃない。月の魔術師様、彼女は黒髪だったと伝えられている。絵本もシリーズ化されるくらいの英雄なんだし、黒髪だからって処刑されるとか、そういう最悪の事態にはならないはず。もしかしたら、私も英雄になっちゃったりして。月の魔術様とは元日本人の転生者という共通点もあるし、黒髪もそのせいなのかなぁ)


部屋に運ばれてきた月明祭用のご馳走を食べ終えると、シェーラはすることもなくベッドに横たわった。


(窓も開けちゃいけないって言われてるし月明祭を楽しめないのは残念だけど、お父様達が落ち着くまで大人しくしてるしかない。今日は私の誕生日でもあるのに、暇だー!)


枕元にたくさん並べられたクッションの一つを抱きしめながら考えていると、だんだんまぶたが重くなってくる。やはり疲れていたのだろう。シェーラは少しの間、睡魔に抗うのをやめて意識を手放すことにした。



その頃、皇宮の円卓の間では、シェーラの処遇を巡って会議が紛糾していた。


「陛下!やはり黒髪となったシェーラ様をこのまま皇宮に留めておくのは危険でございます」


「黒髪は月の魔術師様という前列がある。月の約束にあるからといって、シェーラが災厄をもたらすとは限らないではないか!」


「い、いえ、シェーラ様が災厄の元という意味では……」


「ではどういう意味だ!」


「陛下。確かに月の魔術師様は黒髪でした。我が国が誇る英雄です。そしてそれまでの月の約束の解釈に問題があったとする説が近年有力になってきているのも事実。しかし、月の魔術師様のそれは月の大狐様と契約され、災厄を退ける力があったからこそという説も一方ではございます。それに我が国はともかく、他国に知られたらどうなるか……」


「その通りです。他国の中には未だ従来の月の約束の解釈が有力なところも多くあります。シェーラ様は月の魔術師様ではございません。もし災厄が起こらないとしても、知られれば利用されるのは明白」


「うーむ。しかし、月の魔術師様が遺した新月石で黒髪は抑えることができる。そうすれば今まで通り……」


「陛下! !ジンドラード皇国の姫君は世界の注目の的。これから社交界に出られるともなれば尚更です。方々から探りも入りましょう。万一のことがあってはならぬのですぞ!!」


「そうです、シェーラ様を愛する陛下のお気持ちはよくわかりますが、それならばこそ、危険からはできる限り遠ざけておくべきと存じます」


大臣達からの猛攻を受け、アルダンはとうとう決断を下した。


「わかった、わかった……。仕方がない、シェーラには新月石を持たせて黒髪を封印し、しばらくは北の森で暮らさせる。皇家の血を引くことも隠さなくてはならないが、瞳の色が濃くなっていることを考えると、聖なる水を断つだけでは色が消えないかもしれん。これについてはレイザ、なんとかしろ」


「かしこまりました」


「それから、魔法学校だが……黒髪という縁もあるし思い切ってサーラ魔法学園に入れようと思うがどうだろうか。あそこは水準は高いが、生徒数は少ないし、探りの目もさほどうるさくない。シェーラはソフィアの遠縁、ファンドール公爵家の傍流の娘ということにして、公爵から話をつけてもらうように頼めばよい」


「シェーラ様のことを公式発表する社交界前だったのは幸いでしたな。今ならまだシェーラ様のお名前は我々くらいしか知りませぬ。第二皇姫様はご病気で療養中、ということにすれば表に出て来なくともなんとか誤魔化せましょう」


「サーラ魔法学園ですか、それはよいかもしれません。北東の森からも近いですし、人目にもつかないでしょう」


「まあまだ先の話だがな。それまでは森でシェーラの侍女頭、フランに面倒をみさせよう」


「では、北の森にシェーラ様のお住まいを作るよう、手配します」


「私は公爵家に連絡を」


「うむ。私は明日、シェーラに話をする。実行は一週間後だ。それまでに準備を整えよ」


「「御意」」



シェーラが何も知らずに眠るうち、運命を大きく動かすことになる森への引越しが決まった。

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