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漆黒の姫と月の約束  作者: 月子
幼少編
2/33

ファンタジーのお姫様

シェーラ・ジン・メル・ライラ、5歳。


お姫様、という身分にもすっかり慣れて、第二の人生を満喫中。

一歳にならないうちに絵本を音読しているところをうっかり見つかってしまい大騒動を巻き起こしたりもしたけれど、五歳となった今は、普通より賢い、くらいでおさめている。


新しい世界の生活は全てが新鮮で面白かったが、シェーラがなにより心を躍らせているのはこのファンタジー世界のお姫様にふさわしい自分の容姿。


父アルダンから受け継いだ銀色の瞳にさらさらストレートの金髪、母ソフィアから受け継いだ透き通るような白い肌に紅い唇。フリフリふわふわ、パステルカラーのドレスを着て過ごす毎日。


(地味系女子だった前世からは考えられない……!!)


それもそのはず、シェーラの前世、白崎ましろは、特徴と言える特徴がないごく普通の容姿を持つ地味系女子。小さい頃から通っていた薙刀道場では明るいキャラで通っていたが、学校では何を間違ったか真面目な地味キャラのイメージが定着してしまい、万年図書委員、くらいの印象しかもたれないまま毎日を地味~に過ごしていたのだ。


当然男子から相手にされることもなく、本と薙刀一筋、いや二筋?で18まで生きていた。それが生まれ変わって可憐なお姫様となったのだから、少々浮かれるのは当然だろう。


しかしそれでも、


(この容姿でお姫様となると、将来はどこぞのイケメン王子さまと結婚?? 耐性ないのに大丈夫かな……)


などと不安になってしまうのは非モテの性なのか。


とにかく、今はおとぎ話的お姫様ライフに忙しく、あっと言う間に過ぎてゆく毎日を目一杯楽しむのに精一杯。余計なことは考えないことにしようシェーラは決めた。


ちなみに、現在兄クレイルは13歳、姉セイラは10歳。二人とも金髪くるくるの美少年、美少女に成長中だ。シェーラの髪だけストレートなのは母ソフィア譲り。


そして、父アルダンから受け継いだ銀眼は、皇家の証。銀眼を持つのは皇家の血を引く人間だけなのだ。


皇宮がその中心部に位置している月の湖は、月明かりの滝と呼ばれる、日本で言うところの那智の滝チックな滝の水が流れ込んで出来ているのだが、滝の裏側には月の大社と呼ばれるお社があり、そこでは神聖な水が湧き出している。その聖なる水を一ヶ月に一度飲むことで、皇家の人間は銀眼を保っていた。皇家の血を引いたものでも、三ヶ月も水を飲まなければ、瞳の銀色は失われてしまうらしい。


今銀眼を持っているのは、父アルダンとクレイル、セイラ、そしてシェーラ。


銀の瞳は、月の大社に祀られている月の大狐様、この世界の唯一神と言ってもよい存在の加護の象徴であり、これによって皇家、ひいてはこのジンドラード皇国の権威と、平和が守られているのだ。


確かに、この銀の瞳は神秘的で、なんとなくではあるが、淡く輝きを放っているような気もする。シェーラは毎日鏡で見るたび、ついつい自分の瞳の奥を覗くのようにじっと見つめてしまうので、フランには


「シェーラ様はおませさんですわね。なんてお可愛らしい!」


などと言われている。


侍女頭のフランは、蒼眼白髪でどっしりとしていて、いかにもなメイド服がよく似合うベテランだ。


「侍女に対してさん付けなど必要ございません、シェーラ様!」


と以前はっきり言われてしまったので、皇姫の身分とはそういうものかと抵抗を感じつつもそれ以後呼び捨てにしている。


少しずつ始まった家庭教師による教育のうち、この世界の共通語である世界語や算数の授業に関しては、前世で学んだ勉強を進めるにあたってのノウハウもあってかなり順調だったが、この身分特有の立ち居振る舞いを学ぶ、いわゆる行儀作法はなかなか難しい。フランをはじめ、臣下の身分にあたる人を呼び捨てにするのもそうだし、元庶民であるシェーラとしては心理的抵抗を感じることも少なくない。


(その点、クレイルお兄様とセイラお姉様はとっても自然で優雅なんだよね~。本当にうっとりしちゃう。やっぱり、生まれながらの王子様お姫様というのは違うねー。いや、一応私も生まれながらのお姫様ではあるんだけど……)


(とはいえ、私もだんだんと優雅な言葉遣いや振る舞いが自然とできるようになってきているし、あと数年もすれば立派なプリンセスになれるはず!待ってて私の王子様!)


落ち込みかけたところで思い直して、前世では縁がなかったロマンチックな恋物語に思いをはせるシェーラだった。


やっぱりスペースの空け方がわからない……。

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