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漆黒の姫と月の約束  作者: 月子
中等部編
16/33

初授業

入学式から三日。身体測定や各授業の説明会、校内見学などが終わり、ようやく初めての授業日となった。

サーラ魔法学園では、魔法講義・魔法実習・治癒学・召喚学・世界学・世界語・数学・体育・家庭科の九教科が教えられる。魔法講義と魔法実習はセットとなっており、講義で習ったことを実習でやってみる、というパターンが多い。今日は、一限目で最も低いレベルである初級魔法について学習し、二限目では外の演習場に出て実際に魔法を使用する、という予定になっていた。


「では、これから魔法実習の授業を始めます」


本館の北側に広がる演習場に、リージンの低く柔らかな声が響いた。

この世界では、中等部に入るまでは魔法の使用は固く禁じられ、基礎魔法学という座学の授業しか受けないことになっている。そのため生徒達にとっては、これが実際に魔法を使用する初めての機会であり、どこかそわそわと落ち着かない空気が漂っていた。


「一限目でもお話しましたが、魔力は全部使ってしまうと気を失い、最悪意識が戻らないこともあって大変危険です。みなさんは魔力量D以上ということで、上級魔法もある程度の回数使用できるだけの魔力は持っていますが、魔力切れの危険は常に頭において魔法を使用してください。初級魔法であっても、慣れるまでは無駄に消費する魔力も多いです。具合が悪くなった人はすぐに使用をやめ、私に伝えること。いいですね?」


はーい、という生徒達の返事を聞くと、リージンは一列になり間隔を空けて立つよう指示した。


「では、自分の使用できる属性の初級魔法に挑戦してみましょう。まずは、私が手本を見せますので、参考にしてください」


「炎よ、顕現せよ。イグニス!」


リージンが唱えると、左手の人差し指にピンポン玉ほどの火の玉が出現した。生徒達から歓声が上がり、拍手が起こる。


「ありがとうございます。それでは、みなさんも始めてください」


一限目の授業で習った各属性の詠唱のうち、自分の適性属性の詠唱をメモした紙を手に、生徒達がそれぞれ唱え始める。


「大地よ、顕現せよ。ラピス!……あれぇ?」


元気よく唱えたココが、首を傾げる。見ると、他の生徒もなかなかうまくいっていないようだ。


「いいですか、ただ唱えるだけではいけません。火・水・風の人は指先に意識を集中して、土の人は地面から出てくるのをしっかりイメージしないと、上手くいきませんよ」


生徒達の間を歩いて見て回りながら、リージンが指導する。

そんな中、ユーフィは既に指先に小さな水球を出現させ、それをふわふわと身の回りに浮遊させていた。


「ユーフィ、素晴らしいですね。他の属性でも試してみてください」


「はい」


褒められたユーフィは静かな微笑を浮かべ、風属性と土属性の練習に移ったが、それらもあっさりとクリア。適性属性が無く、隣で苦戦していたシェーラは目を丸くして話しかけた。


「すごいね。適性は、水だけ?」


「いえ、水の他に、土と、風です。火は使えません」


突然話しかけらても動じることなく、穏やかに答えるユーフィ。


「三つも適性があるの!?私は適性属性もないし、なかなかうまくいかなくて」


「珍しいですね。しかしさっきから色々な詠唱が聞こえますが……」


「うん、四大属性は一応全部使えるらしいの。まあ、測定ではみんな低級だったんだけどね」


それを聞いて、それまで表情を崩さなかったユーフィの眉が微かに上がる


「適性がなくて、全部、ですか? それはまるで……」


ちょっと考えるそぶりをしてから、何かをのぞき込むようにシェーラの瞳を見つめる。


「えっと……」


困惑するシェーラに気づき、また静かな笑顔に戻ったユーフィが続けた。


「あ、いえ失礼しました。適性属性がなくても、全属性を使えるなら工夫次第で強力な魔法も使えそうですね」


「そうなるといいんだけど……ありがとう。それにしてもまずは初級魔法を使えないとね。あ、そういえば、私の名前、シェーラよ」


「ふふっ知っていますよ。よろしくお願いしますね、シェーラ。僕はユーフィです」


「それこそ知ってるわ」


小さく笑いあった二人は、また練習を再開した。


三十分が経過する頃には、みなそれぞれの適性魔法を使えるようになり、中にはユーフィのように自由に動かしたり、多少形を変えたりできるようになった者も出てきた。


「炎よ、顕現せよ。イグニス!……だいぶ慣れてきたな」


ふぅ、と息をついたのはノア。


「大地よ、顕現せよ!ラピス!!」


やったー、とバンザイして喜んでいるのは、ココ。


「風よ、顕現せよ。アニマ!……ふむ」


指先に小さな竜巻を起こし、それを自在に動かして色々試しているのは、ミレーユ。


「水よ、顕現せよ。マイム」


ユーフィについては言うまでもない。


そしてシェーラは……


「もー、どうして~!」


一人成功せず、焦りを募らせていた。

その様子を見て、離れたところで他の生徒の指導にあたっていたリージンが駆け寄ってくる。




だがそれは、あと一歩のところで間に合わなかった。




「あーもう、どうせ適性もないんだし、なんでもいいから、何か出て!!!!」



シェーラがヤケを起こして勢いよく指先を前に出したと同時に、小さな白銀の光の球が出現。


爆風と共に、閃光が奔った。

活動報告、始めました。

次回の更新予定などを載せておりますので、よろしければご覧ください。

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