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漆黒の姫と月の約束  作者: 月子
中等部編
13/33

寮生活

入学式まで、あと三日。


シェーラとココは、今日から寮で生活することになっていた。寮は、一階が食堂、共同浴場、ホール、多目的室など、そして二階から中等部一年、二年と上がってゆき、高等部三年の部屋は七階となっている。シェーラの部屋は一番奥の角部屋で、偶然にもココの部屋はその向かいだった。

お互いの部屋を見せ合った後、二人は寮で初めての夕食をとるべく、一階の食堂へと向かっていた。


「いよいよだね~!どきどきするよぉ」


「うん、ほんと、新生活にココがいてよかったよー。緊張もちょっとほぐれる」


「それは私も!ごはん食べたら、制服でファッションショーだね!」


「そうだね。制服可愛いから楽しみだね~」


(前世で着てた高校の制服にちょっと似ててびっくりしたけどね!やっぱり、月の魔術師様が元日本人だったから、制服も日本のに似てるのかなぁ?でも、魔術師様は二百年前に生まれたんだよね。転生には時間軸はあまり関係ないってこと?うーん)


「おーい、シェーラ、ぼーっとしてるけど、大丈夫?食堂着いたよ」


「えっ?ああ、大丈夫大丈夫」


「もー。シェーラってばたまーにこういうことあるんだから。あっ食事はバイキングなんだねー!美味しそうっ」


食堂の中央には、サラダ、肉、魚、付け合わせの惣菜、パン、ライス、スープ、デザートが並べられている。ちょっとしたホテルのバイキング並の品ぞろえだ。ココと一緒に並んでいたシェーラは、ほとんどの人がスルーしてゆくスペースがあることに気がついた。


「ね、ココ、あそこだけ誰も取らないけど……」


「あっほんとだぁ。何だろうね?」


列が進んで近づいてみると、そこには数年ぶりにみた懐かしいものが並んでいた。


(納豆!お豆腐!油揚げ!わー、魔力測定の前日に食べたきりだよ。さすが月の魔術師様、ありがとう!!)


「えっ?シェーラ!?三つとも取っちゃって大丈夫なの??」


「うん、私、これ大好きなんだー」


「そ、そうなんだぁ」


(こうなるとお味噌汁も欲しいところだけど……あ、あのスープコーナー!やっぱり取る人ほとんど居ないみたいだけど、あったぁぁ!!)


久しぶりの日本食にテンションが上がったシェーラは、ココや周りの生徒達の驚愕の目には気付かず、ご機嫌で席に着いた。


「いっただっきまーす!」


「い、いただきます。シェーラそのネバネバしたの、ほんとに食べるの?」


「うん。美味しいんだよー。ココも挑戦してみる?」


「う、ううん、遠慮しときます。……シェーラ、せっかく可愛いのに、今は別の意味で注目されちゃってるよ……」


「えっ?ココ、何か言った?」


「なんでもないっ!」


シェーラ以外にとっては驚愕であったの夕食の後、二人は部屋に戻って制服に着替えた。


「えへへー。これで私達もサーラ魔法学園の生徒だね!」


「なんか照れちゃうねー。あ、ココもリボンにしたんだ?」


「うん、お母さんとおばあちゃんに、リボンの方が似合うって言われて。シェーラとお揃いだね」


「ネクタイも可愛かったから迷ったけどねー。あー、早く学校行きたいっ!」


サーラ魔法学園の制服は、胸元にサーラの花をかたどった校章がついたベージュのブレザーに、グリーンチェックのスカート。それに赤のリボンかネクタイを選べるという仕様になっている。

久しぶりの学校生活に、シェーラの胸は高鳴っていた。


(前世では地味な生活だったけど、今回はココもいるし、思いっきり楽しもう!友達たくさん出来るといいなー)


「あ、シェーラ、お風呂どうする?」


制服を着て鏡の前でくるくると回っていたココが、小首をかしげて訊いた。

寮の部屋には、浴槽は無いがシャワーがついている。大浴場は中等部と高等部で使用できる時間帯が一時間半交代で定められているため、それ以外の時間は自室で済ませることになっているのだ。今は、午後七時十分。中等部は午後八時までだ。これを逃すと遅くなってしまう。


「もうこんな時間だったんだね。行こっか!」


「うん!」


浴場はシェーラ達が思っていたよりも広く、二人は感嘆の声をあげた。


「ふわぁ〜すごい!」


「思っていたより広いし立派だね!お風呂がたくさんある!それにサウナも!」


百人分はある洗い場の空いたところで髪と体を洗ったシェーラとココは、大喜びで泡風呂や薬湯など数種の風呂を楽しんだ。


「シェーラ、サウナ行こう!」


ココに言われて乾式サウナへと入ると、みな数人で連れ立って来ている中、一人でピンと背筋を伸ばして座っている人物がいた。


(うわー、美人さんだぁ。しかも中等部にしてこのスタイル!大人っぽいし、三年生、かな?)


シェーラがココの方を見ると、どうやら同じことを考えていたらしい。

落ち着いた紫の髪を上でお団子にしてまとめ、髪と同じ紫のキリッとした瞳は、入口に置かれた砂時計を見据えている。既に出るところは出ている体は引き締まっており、中等部しかいないこの中では一番の長身であることとも相まってかなり大人っぽい印象を与えていた。

成長の兆しは見えるがまだまだ子供っぽいシェーラと、未だ幼児体型から抜け切らないココは、思わず自分の体と見比べてしまう。


「シェーラ……」


「うん。わかってる、ココ。大丈夫、私達はきっとこれからだよ……!!」


こうして、謎のダメージを受けながらもバスタイムを満喫した二人は、三日後の入学式や講義のことなどを話し合って、寮の初日を無事に終えたのだった。

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