公的機関による世界的人権侵害 その記録
※この作品はフィクションです
・なんちゃって科学が横行しています。
・パクリは受け付けていませんし、よそ様の作品をパクっているつもりもございません。
諸々注意事項は増えると思いますが、それでもよろしければどうぞ。
鯨の民達が言うには。
私たちがいた国の話をしようか。
君たちの現代で言う西暦、が27000年以上になった時代、人類は繁栄を極めていた。
人口は遠慮も恥もなく増え続け、それによる食糧問題も居住地問題も技術によって解決した時代。
そんな時代だからというか人間だからというか、人々の欲望はとどまることを知らなかった。
暴飲暴食を続けても健康的で美しい肉体、記憶のバックアップやクラウド化が進められたことによる忘却の喪失、精神や肉体に問題が発生しても難なく対応できる社会情勢と他者からの理解、完璧に体を修復する技術による死への恐怖の減少、法定労働時間が1日6時間以内に定められたことによる賃金アップと健康的な生活etc,,,
論理道徳全て無視された戦乱の時代が長い歴史の中で何度も繰り返されてきたからこその技術の発展と論理感の著しい低下は止まることなどなく、、、分かり辛いかもしれない。
具体的にかつあけすけにいえば、犯罪とされるものの数が大幅に減少した。性犯罪に関してはそれ専用の場所が用意されることでそこでされることに関して法の関与することではなくなり、食料品の窃盗などはそもそも起こらず、殺人は政府に殺害方法や殺害動機を申請すれば政府がその通りに殺してくれる。
国の管理が杜撰になりそうなことばかり書き連ねたが、問題はない。全て幻覚であるが故に何をしても現実ではなかったんだ。
幾度も行われた世界大戦が惑星間国家での規模にまで発展した頃、戦争を行う国家たちは大幅な国力低下による危機感と焦りによって判断を間違った、いや、間違えた判断を下してでも戦争を続けなければならなかった。故に、現実を一つの仮想空間としてまとめ上げ、全ての国民の不平不満を仮想世界にてぶちまけさせたのだよ。
国民の反対必死であったろうと思われるかもしれないが、国民の意見を聞いていなかった戦争中であったため、配給に幻覚剤などを混ぜ込むことにより人を攫いやすくして実験に使っゲフンゲフン、幻想空間を見せるための機械を取り付けたりした。
「あれ、あんまり意味変わってなくない?」「あー確かに、まあ今大事なのは説明でしょ。」「りょーかい」
えーっと、概念を理解しなければ分かりづらいだろうから、簡単にやり方を書き連ねておこうか。
まず国民全員の認知を曲げ、国民一人一人に都合のいい世界を作り出す。視覚触覚味覚嗅覚聴覚、五感全てを支配下に置き、一人の人間に関わるもの全員に変わるそれぞれのロボットを(家族役、子供役、恋人役、友達役など)配置し、もし幻覚を見ているもの同士の恋愛や情愛などがあればロボットに全ての動きを真似させ、全ての感覚を伝えさせて快楽を得る。ロボットの中に精子と卵子が保存されるため、産もうと思えばいつでも産めるし孕ませようと思えばいつでも孕ませられる。
例えば、ある女性があの男性の子を孕みたいと思えば自身の卵子にその男性が誰かに出した、もしくは無駄打ちした精子が次の性交の際にロボットから提供されるし、そのロボットは恋人となったあの男性と認識される。触れる手は確かに人間の肌を感じるし、体温を感じる。髪や服からはその人間の匂いがするし、聞こえる声はその人間そのものであるし、視界に映るものも最初からその人間だけなのだ。たとえロボットに感情が浮かび、自立して自己判断で行動するようになったとしても、求めた側の人間は求められた人間がそう言う人間ではないと言うことを知らないので、そのロボットを愛する人間と思って幸せに暮らすだろう。ロボットたちは人間のあらゆる器官を真似して作られているため、人間の生活を真似することなど簡単なのだ。故に、人間でないとバレることもなく、トラブルも起こらない。
そうして国民全員の幸福をもたらし、政府に対する不平不満はなりを顰めた。認知を曲げるとはこういうことだ。
バカみたいな話だけど、確かに全ての人間の幸福度は90%近くを常に叩き出していたんだ。
『全ての人が幸福な世界』は実現された。国家間で戦争が続けられていようと、それは変わらない。
全ての人々は遠くの国の戦争を見るように自分の国の人間が死んでいくのを見て同情し、悲しみ、慈しみ、死に際に幻覚が外れ現実を見るまでそれが真実だと思って暮らした。
人間嫌いには人間のいない夢を、動物嫌いには動物がいない夢を、動物愛護家には動物を思う存分愛でられ誰も動物を食べない夢を、引きこもりには引きこもっていても問題ないほど豊かな生活と精神の夢を、、、
生活の状態は全くと言っていいほど悪化の一途を辿ったが、それでも人々は幸せであった。
物を食べられず酷い栄養失調に陥っていても、食中毒にあって前後不覚の状態であっても、常軌を逸した労働で心身ともにボロボロでも。
家族が戦争に駆り出されても、恋人が人体実験のため連れ去られても、子供が酷い障害をもって生まれたとしても、友人が自身に対して殺害衝動を抱いていても、隕石が落ちてきて学校や職場、家がなくなったとしても。それら全て乗り越えて街のヒーローに、なんていう都合のいい夢物語にも、疑問を抱かないほどに。
それらは全て幻覚なので、それらは全て自分が『こんな展開あったらいいな』と想像した物を現実に起こりうるもの全て再現されているだけなので、被害を被っているのはその役を淡々とこなすロボットなので、人々は平和である。
「もう一度言っておこう。」
「認知を曲げるとはこういうことなの。」「倫理観など全て捨てられたのだ。、、ってね。」
「セリフとられたな。後の説明任せても?」 『いいよ〜。』
「んじゃ説明の続き。」
流石に国家元首や高官、現実で物を開発する必要のある職人や研究者などは幻覚作用を引き起こす機器を『在職期間中のみ』外されてたよ。でも、一般市民である人間たちはそんな機器があることも知らないから、違和感なんてないんだよね。まあ大概、政治家や研究者になる人間は幻覚を見せる機器の存在に自力で気付いた人間たちだったから、外す必要もあまりなかったのかもしれないけど。
「そんな滅亡必至の終末国家達は、人造生物兵器にも当然のように手をつけていたのよね。」
「亀に保存されていた記録によると、、」
ある国では鳥を捕らえ、遠き過去から受け継がれた伝承に描かれるような、死ぬことのない火の鳥へと変えた。その実験場となった星は不死の炎に焼かれ、消えぬ炎に永遠に焼かれ続けている。
ある国では亀を捕らえ、まだ母なる星が動かないと信じられていた頃、世界を支え歩き続けていると信じられていたようなものへと変えた。その実験場となった星は自らが与えた巨体によって踏み潰され、あっけなくその生を終えた。
ある国では蛇を捕らえ、母なる星の遠き過去栄えていた国々の神話に描かれるような、水を司る伝説へと変えた。その実験場となった星は自らの全てを雪ぐような大雨に遭い、人のみを溶かすその雨に全てを流された。
ある国では狸を捕らえ、母なる星のとある国で信仰されていたような軍を率いる総帥へ変えた。その実験場となった星では蠢く植物による人間ごっこが行われている。
ある国では狐を捕らえ、信仰されていた九つの尾を持つ妖へと変えた。その実験場となった星は今もなお妖につままれ続け、内々の国にて争いを続けている。
ある国では兎を捕らえ、いくつかの国に伝わる伝承へと姿を変えさせた。その実験場となった星は母なる星と同じように人間が発展し、母なる星とは違いたった一つの兎を信仰している。
ある国では猫を捕らえ、伝承に残るようなあらゆる伝説へと姿を変えた。その実験場となった星は芽吹いた花を刈り取るように、発展し気まぐれな、見つかれば最期と言えるそれに翻弄され続けている。
ある国では犬を捕らえ、忠誠心と不死性を持たせ、主人を与え続けた。その実験場となった星は強大な力となった忠実なものを使い、他の星々へと侵攻を続け、最後には間違った主人を与えた罰のようにそれに滅ぼされた。
「そして私たちの国は、とある鯨を捕らえた。私たちのラボは国からの指令で、この鯨を兵器に改造しなければいけなかった。」
その鯨はなぜか、どれだけ非道な実験を行なっても我々人間を害さなかった。
その鯨はなぜか、実験体となった人間にも実験を行う側の人間にも同じだけの興味を見せた。
その鯨はなぜか、どの人間が亡くなったときも同じように悲しんだような行動を見せ、なくなった人間の骸を水槽に落とせば食べることなく慈しむように突くだけだった。
鯨は兵器に改造されている間も成長を続けていた。食事は一般の鯨と同等かそれ以下しか食べておらず成長に回すようなエネルギーもなく、種族としての成長限界と見られていた数値を超えてもなお、成長を続けていたんだ。
私たちは、と言うより私たちの当時いたラボ全体が、この鯨を人を殺す兵器にしてはならないと。この国の常軌を逸した倫理観を知っていてなお容認する私たちであってもそう思わせた。故に国に兵器の方針転換を提案した。国はそれを承認することはなかったが、承認するよりも先に完成させてしまったし、完成よりも少し前にその当時の世界大戦もひとまず終了した。国同士の遺恨はあれど、お互いの体力が尽きたのだ。
「兵器開発に資金を注ぎすぎたとも言えるね。」
その兵器となった鯨はのちの大戦でも”領土を守り、人命を守る”という一点において他国の兵器よりも圧倒的に優秀だった。
「そして幾度もの大戦を乗り越え、いくつもの時代を見守った鯨は、、、ゆっくりと自らを生んだ国を乗っ取っていったんだ。」
「乗っ取ると言っても、ものすごく気の長い、穏便で平和な方法でだから誰も傷つけなかったんだよね。」
鯨は、人間たちを夢から目覚めさせたかったらしい。
世代ごとに違和感の出ないように少しずつ、本当に少しずつ幻覚作用を弱くしていき、ついに全ての人間から幻覚作用の機器を取り除いた。
それと同時に、国の現状を少しずつ変えていった。貧困者をなくし、相対的貧困を改善し続け、国を発展させ、幻覚の一部を少しずつ現実のものとしていった。どんな人間にも差し出され続ける救いの手は、国の神話を変えるのも容易だった。
少なくとも28000年以上の歴史を持つその国は、その歴史上初めて、自身のルーツとされる神話を8歳以上の国民全員の総意によって捻じ曲げたんだ。
天皇家は続いている、というより説得力が増した分積極的に外交なんかに力を入れて、更に国を盛り立てた。
「あの頃のニュースに天皇家が取り上げられることは少なかったけど、実質的な国家元首である総理大臣に会った後には天皇家の誰かしらに挨拶することがいつの間にか慣例になっててさ、あの時は笑っちゃったな。」
神様の加護を受けた家の人間であることが絶対の共通認識になっちゃったから、ただの人間に挨拶するならそちらにも挨拶するべきだとか自国の宗教団体につっつかれてたんだって何かの番組で見たような気がするけど、本当だとしたら感謝しなきゃね。
「そうやって少しずつ、私たちの国や協力してくれた国が襲われることはなくなっていったんだから。」
「他の国は次々と滅んでいったな、自分の作った兵器で滅んだり、一蓮托生となっていた国家がアホなことしてそれに巻き込まれたり、国民に革命起こされて泥沼化してったり。」
「酷いとこだとたった百年で50回くらい国の名前とか教義が変わっていましたね。」
「まあそんだけ荒れてたんだよ。28000年だっけ?ながーく続いたうちの国も、滅ぶ時は結構あっさりだったよな。」
「滅んだといっても、鯨の上に乗った人と自主的に国に残った人で別れただけだったんだけど。」「鯨の国と東の国、だっけ?」「もう少し正式な名前はあったと思うのですが、通称はだいたいそれでしたね。結局国の数自体が少なくなったのでただの愛称が正式名称のような使われ方してたみたいです。」
「え?何があってそんなことに、って。えっと確か、私たちの国の象徴だった天皇家が全員死んじゃったんだよね。爆殺だっけ?」
「鯨を崇め過ぎてトチ狂った人間が自爆特攻して、それを手引きした国が滅ぼされたやつ。」
「あの後それした国どうなったんだっけ。」
「鯨の怒りに触れたらしくそれを指示した人間以外の国民を全部鯨がぶんどってきたんだよね確か。」「あー思い出した。拐われた人たちがいるって問題になる前に鯨が全員のメンタルケアとか公式手続きとかも済ませてたやつ。」
「あの時は本当に大変でした、、、公式手続き済ませたと言っても最低限だったから政府の中の人間でもないのに書類仕事を手伝わされて、、」
「ラボのデスマーチの何倍も辛かった。なんで30分仮眠しただけなのに書類の山が復活してるんすかねぇ、、」「止めよう病んでしまう。」
「えっと、その後指示した人間ごと国を沈めたんだっけ」
「物理的にね。大火事にして台風やら竜巻やら起こして建造物も何もかも壊して雨で流して海で強制的に全部分解して、、結果的に星の寿命伸ばしてたね。」
「結果的にね。その後連れ去られてきた人たちを国に帰して、鯨のせいで何にもなくなっちゃったから滅ぼされた国の復興の手伝いして、」
「文化を再現するのがなんだかんだ一番大変だったよな。」
「構成する物質も当時のものを再現して、技術も当時のものだから人間がやるしかなくって、でも当時レベルの技術を持ってる人間は少なかったから急いで教育して育成して、、」
「まじでよくやったと思う私たち。人柱必要って言われた時にクローン提供しませんかっていった時はまたかって思ったけど。」
「そこまで再現しなくても、って思ったぶっちゃけ。」「わかる。」
「技術とかも星に優しい人間にも優しい倫理観0の時代に培った技術に変えてその件は終わったんでしたね。」
「襲われた後の国家元首になった人がもう鯨に襲われないようにって属国になりにきたのは笑っちゃったね。国のプライドとかはいいのか?って。」
「そんで一番びっくりしたのはさぁ、似たような事件が結構な数あったことだよねぇ。」
「一番被害が大きくなったのは先ほど言った天皇家爆殺国家でしたが、その前にも自爆覚悟で私たちの国に特攻しようとしたもの達を捕まえて元の国の意思かどうか確認しに行くなどしてた気がしますね。」
「よく細かく覚えてるね、うん十年どころかうん百年経ってるっていうのに。」
「記憶力増強つけっぱなしなんです。」「あれまだつけてんの?疲れない?」「私だったらすぐ外しちゃうね絶対。」「かなり便利なんですよ。そういえばカレー先月作ったきりだったなとか思い出せるので。」「それを聞いたらカレー食べたくなっちゃった。作って?」「今日は餃子です。」「カレー餃子にする?」「明日シチューですよ?」「カレー粉だけ入れるとかさ。」「レシピ検索しといてくださいね。」『はーい』
「ああごめん、話がそれちゃったね。」
色々あって星の上にあった国のほとんどが、東の国も属国になって、鯨の国の影響力が大きくなり過ぎたの。だから他の星に居た人類から警戒されちゃってたんだ。
そんな時に他の星、元他の国々が自分の領土にした星で開発してた生物兵器を鯨がとってきちゃったんだよね。
「あれびっくりしたな〜。いつも通りラボで研究しようと起きたらラボの目の前に鳥やら亀やら落ちてきたんだもん。しかも結構でかいの。」
「自分を作れたんだからその子達も改造できるでしょ、みたいな圧を感じましたね。」
「頼られてると思ったら嬉しかったんだけどねぇ、、いかんせん鯨の時みたいな資金もなかったし、他の研究もあったからなっかなか進まなくて。」
「最大何徹したっけ?」「徹夜自慢はやめとこう、精神が社畜になる。」「徹夜しまくって仕事に追われる人間という意味ではもう社畜ですけどね。」
「元兵器の子達に何したって?うーんと、まず暴走を抑えるために幻覚機器を埋め込んで夢の世界行ってもらって、肉体の方は負荷がかかり過ぎてるところがあればどんな負荷がかかってるのか記録取りながら細胞とって複製して耐性とか調べて、」
「ようは、何をしてもいいのか、何をしちゃいけないのかを調べる段階ですね。」
「んでそれが終わったら意識を起こして、何ができるのか、どんな命令が出されているのか調べて、政府に報告する報告書も作って、、」
「ラボの研究員何人か死にそうになりましたよねあの実験。」「あぁあの鳥の子ねぇ、私もまだやけどの跡残ってるから結構強かったんだと思うよ。」「強者のセリフじゃん、かっこいー」「棒読みやめろ。」
「んん、そのあと政府に返還命令出されて元の国に返したけど、何回返しても鯨が攫ってきちゃうから貸し出しってことになったんだよね。」
「でも国のど真ん中に置いておくのもダメってことになったから、鯨の中を急いで改造してラボそこに移したんだよね。」
「あの時ほんとうにがんばったよ私たち。上から突かれる事はあっても鯨自身からあんなに強くアピールされるのは初めてだったからね。」「あぁあの時のこと思い出して溶けてるな?固まれ固まれ。」「もうやだよあの作業量はほんと得意な仕事でも辛かった。」「わかる」
「そんで私たちはここにラボを移して、研究員もちゃんと引っ越させてちゃんとした研究を始めたんだよね。」
「その後は君も知ってる通り。兵器達をちゃんと直して、それぞれの設計に沿った形で力を使えるようにして、ちゃんと国に帰して。その後の国がどうなったかまでは責任取れないから、関与してません!」
「その後の研究は完全に私たちそれぞれの趣味だよね。私は植物の研究。」
「俺は動物。」「私はロボットとAIが専門です。」
というわけで、鯨の上で暮らすようになったこれまでの説明は終わり。
ああ、君たちがそれぞれ選ばれた理由?ランダムだと思うよ。特に理由はない。運が悪かったね。選ばれなければ、普通に死んで家族と一緒に生まれ変われたかも知れないのに。
「ああでも、動物たちがなんか色々やってたから、呼び寄せられたっていう可能性もあるのかな?」
「鯨は『鯨の国と東の国の魂持つ人からランダム』って言ってたけど、他の動物たちに関しては何にも聞いてないからワンチャンあるね。」
「ああでも、狐とか猫はマスターって呼んでる人がいたりしたね。なんか独自の基準で読んでるみたいだったから、私たちにはよくわからないな。」
「今度聞いてみます?」「今の猫達には近づけないよ、鯨の中だし」「そうでしたね、残念。」
多分現実でやるのは課題が多すぎるから無理な方法だけど、近々できそうだなっていう予感はしている。




