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「〜〜っリオイはいつになったら来るの?!」
パーティーの開始時間の1時間前になっても私の屋敷にも来ない。基本パーティーは殿方が令嬢を迎えにくるのが礼儀で、あの日リオイは私にパートナーになってと言ったし、迎えにくるとも言った。
流石にここ男爵家から王家に行くにはもう出なくては間に合わない。
男爵家が王家のパーティーに遅れるなんてもってのほかだ。
「.....サルト、もしリオイが来たら....」
メイドに私は先に向かうことを伝えて、と言おうとしたところで執事が私の名前を叫んだ。
驚いて振り向くと、
「ユリアナ」
執事の後ろにリオイがいた。
確かにそこにいるのはリオイで間違いなかった。
_____顔は。
「.........え」
私はリオイの着ている服に釘付けになる。
リオイが着ている服は王家の紋章がついており、王族の証であるそれが彼は王族であると主張していた。
「.......なに....その格好」
目は逸らさなかった。いや、逸せなかった。
「...君には色々と説明しないといけないことがある」
リオイは不安そうな顔で私に近づき私の両手を握る。
「.....まず答えて。.....王族なの....?」
リオイの方を見ずに俯きながら聞く。
「....うん。第一王太子、イオリ・ベルバッド。これが俺の本当の名前」
...名前。
名前を言われ、あ、私が知っていた名前は偽名だったのかと。イオリを逆にした偽名だったのね。と胸にぽっかり穴が空いた感覚がした。
あ、泣きそう。と思ったけれど、これからパーティーに向かわないといけない。グッと込み上げてくる感情に蓋をして、出た言葉は
「.....折角迎えに来ていただいたのに申し訳ないのですが、男爵家である私が殿下のパートナーは務まりませんわ。....辞退させていただけませんか」
繋がれた両手をサッと離し、そのまま自分の胸の前にもっていき握りしめる。
「.....ごめん。それは無理だ。....どうしても今日、君のパートナーをさせてほしい」
「....わかりました」
王族にどうしてもと言われ、断れるわけがない。
「....詳しい話は移動しながら話そう。」
もう移動しなければ間に合わないと言われ、エスコートをされながら馬車に乗り込む。
馬車の中は2人きりだった。リオイ、ううん。イオリ殿下が私と話すからと護衛を乗せなかったのだ。
「まずごめん。....王族であることを隠してて....でもユリアナに見せていた俺は嘘じゃない。」
そう言うと、過去の話をしてくれた。
リオイの親である前王妃が亡くなり、現王妃はカリス殿下を王位につかせるためにリオイの命を狙った。何度も繰り返される暗殺未遂に頭を悩ませ、王はリオイをメーリン様のお屋敷に隠した。そしてリオイは身を隠すために変装を覚えた。そして逃げ続けるわけにもいかないため王妃の弱みを探す旅に出た。そして今日、やっと断罪できるのだと教えてくれた。
「パーティーで....ですか?」
今日のパーティーに断罪イベントがあるなんて....
「あぁ、今日王妃の仲間も潜入しているから、一網打尽にする予定だ」
「なるほど、私になにかお手伝いできることはありますか?」
そう聞くとリオイは決して自分から離れないでと言った。
そして馬車は王城に着き、何事もなくパーティーが始まった。
王と王妃は並んで入場し、私たちは挨拶をした。
「お久しぶりです。父上、母上。今日は俺のためにパーティーを開いてくださりありがとうございます。」
「ええ、元気そうでよかったわ」
王妃が扇子で口を隠しながら笑顔で告げる。
「彼女は今日俺のパートナーのユリアナ・ファルニ令嬢です」
そう言われ、慌ててカーテシーをする。
「そう。主役なんですからふたりでダンスでも踊ってらっしゃいな。」
」
王妃はこちらを見て、優しそうにそう告げると王と一緒に王座に座る。
「.....踊ろうか」
そう言って殿下は私に手を差し出した。
大きなシャンデリアの下、私たちはダンスを踊った。
1曲分踊り終える。殿下の足を踏まなかったことにホッとしていると、ダンスを終えたその足で再度王妃がいる席に向かう。
そして無表情でこちらを見る王妃に殿下は言った。
「シャンデリアが落ちなくて残念でしたね」
その言葉に私は驚く。
先ほど私たちが踊っていたのは大きなシャンデリアの下だ。そこに上にあるシャンデリアが落ちてきたらまず助かるわけがない。
ゾッとしていると、殿下は大丈夫だと言うように私の手を後ろで王妃たちに見えないように握った。
「俺たちがダンスをしている間に貴方のお仲間は全員捕まえました。そして、貴方の罪も明らかになりました」
証拠です。と殿下は胸ポケットから一枚の紙を王妃に渡す。
それを見た王妃はワナワナと震え、王の方を向き叫んだ。
「っっ私を嵌めましたわねっっ!!!?」
そう叫びながら王に掴みかかろうとしたが、警備兵が立ち塞がり、複数の警備兵が王妃を拘束した。
「...連れていけ」
王が一言そう告げると、王妃は叫びながらも連れて行かれた。
「父上、約束のことですが、彼女との結婚を、俺は望みます。」
殿下は突然私の方を抱き、王に進言した。
「....え?」
突然何を言われたのかわからず私は呆然とする。




