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そしてあの日のことは何も分からないまま月日は流れ、季節が変わった。
そして一つ国を騒然とさせた出来事が起きた。
それは第一王太子が帰還したという内容だった。
第一王太子は幼少期の頃馬車の事故で行方不明とされていた。
それが8年経った今、第一王太子が帰還したと国中が大騒ぎになった。
第一王太子派だった派閥は第一王太子の帰還に歓喜した。
彼らは第一王太子の帰還を待ち続けていたのだ。
そして帰ってきた今、おとなしかった第一王太子派閥が王位継承についての話で二つの派閥がぶつかり合っている。
そして、王太子の帰還を祝したパーティーが開かれることになり、大規模なパーティーとしてユリアナにも珍しくパーティーに招待状が届いた。
「...男爵家の私にまで招待状が届くなんて相当大きなパーティね...」
招待状を見ながら私はため息を吐く。
元々パーティは好きな方ではなければ、王家が開くパーティは豪華すぎてユリアナのような貧乏貴族は恐れ慄く。
よって気乗りはしない。
「行きたくないなぁ...」
なんて呟いていたら、窓からコンコン、と音を立てられる。
「リオイ!」
窓の外にはまたしても変装した姿のリオイだった。
駆け寄って窓を開ける。
「よ!」
そう言って当たり前のように窓から私の部屋に入ったリオイは、私が見ていた招待状に触れた。
「あ、今度王家のパーティに私も呼ばれてさ」
あまり気乗りしないけど行かないといけないんだよねと告げると、リオイはそれに笑って私に言った。
「そのパーティ俺がユリアナのパートナーになってもいい?」
そう言ってリオイは私に大きな袋を渡した。
いつものお土産!と思いながら開けるとそこには水色と紫のグラデーションのかかった綺麗なドレスだった。
「わ、綺麗」
そう呟くと、リオイはそれを今度の王家のパーティで着てと言う。
「え、リオイも招待されてるの?」
リオイは王家との繋がりもあるのだろうか?
商人だと思っていたけれど何処かの貴族だったのだろうかとリオイを見つめるも、思い当たる家がない。
「リオイって貴族だったの?...商人じゃなくて?」
ちょうど私もパートナーに悩んでいたのでいいよとパートナーになることを了承した。
「なに、ユリアナって俺のこと商人だと思ってたの?」
ふっと笑われて私は慌てて訂正する。
「き、貴族に見えなかったとかそういうんじゃないよ⁈ただ、リオイはいつも旅をしてるから...」
そこら辺の貴族よりリオイの顔立ちは良いし品性も感じる。でも貴族らしくない行動で商人だと思ってしまっていた。
「まぁ、いいや、じゃあパーティの日迎えに来るから。それ着て待ってて」
そう言ってリオイは窓から私の部屋を出て行った。
「.....結局リオイはどこの貴族なんだろ...?」
そう呟いた言葉は誰にも拾われることはなく消えていった。
翌日王城に行くとパーティの話で持ちきりだった。
よほど大きなパーティなのだろう、お城で働くみんなが忙しそうに動き回っていた。
私も殿下の部屋に向かうと、殿下は服の寸法を図っていた。
「あ、ユリアナいいところに来た」
おいでおいでとこっちに手招きして殿下が見せたのは、綺麗な深緑の正装と、真紅の正装だった。
「どっちがいいと思う?」
そのふたつを見せて聞くので私は深緑の方を指差した。
「こっちですかね?」
と殿下に似合いそうな方を指差す。
「...こっちにするか...じゃあこいつのドレスも頼む」
そう言うと殿下は続けて私の寸法も測れと言う。
それに慌てて私は首を振った。
「わ、私は大丈夫ですっ!」
「?もうドレスの準備したのか?」
「あ、えと、幼馴染が用意してくれて....」
「それは......ただの幼馴染か?」
「え.....と.....」
答えに戸惑っていると、殿下はまっすぐ私を数秒見つめてからスッと目を逸らす。
「.....いや....いい」
それから殿下はカフスやネクタイも私に聞いてくるので答え、すべてが決まる頃には日は落ちかかっていた。
「今日の変装は....」
「いや、当分変装はいい」
そう言われ、私にも当分登城はしなくていいと言った。
パーティで忙しいから町へ行かなければ、私は必要ない。
私は分かりましたと返事をすると、殿下は今日ももう帰っていいというので私は帰宅した。
そしてなにもせずにダラダラ過ごしパーティの日がやってきた。




