2-2
「え!?今日も町に行くんですか!?」
カリス殿下は暇があれば町に行くみたいで、その頻度の多さに驚きを隠せない。
「まあね、もしかして寂しいの?」
なんて私の髪をくるくると弄りながら冗談を言う。
「ご冗談を。早くご支度しましょう」
近い距離だった為、無意識に殿下の頬を手で押し返す。それに殿下は笑ってから離れた。
そして殿下にソファに座ってもらい、慣れた変装を施す。
「綺麗な顔や髪を隠すのはもったいないですね」
目を閉じている殿下のまつ毛の長さ、肌の綺麗さ、そして殿下のキラキラと輝く銀髪は人目を引く。こんな綺麗な髪を隠すのは変装だからと言って勿体無い気がする。
「それを言うなら君もね。あの綺麗な髪色はあの日以来見れてない」
あの日。殿下が私を噴水に落として髪色が戻った日のことだ。
「....私の髪色は目立つしいいことばかりじゃないので」
男爵家の私は自分の身を自分で守れない。
勿論人攫いに合うこともあるから今は茶髪に染めてると言っても過言ではないけれど、もう一つ問題がある。
貴族に目をつけられること。
男であろうと女であろうとそれぞれの危険がある。
男は言わずもがな昔あった珍しい物の収集する癖がある奴なんかに目をつけられたもんならゾッとする。
男爵家である私は私が望まないとしてもどうすることもできない時がある。
女も嫉妬や妬みを向けられたら私は対抗しようがない。
だから隠すのが一番いいのだ。
「それより、毎回同じ顔で大丈夫なんですか?」
「うん。同じ顔だと馴染みになるし、逆に顔を新しくすると見かけない顔だと警戒されるからね」
なるほど。と思った。
毎回顔を変えて同じ町にいても、いつまで経っても馴染まないけれど、同じ顔で何度も通えば町の人と顔見知りになりその町に溶け込むことができる。
「なるほど。でも、火遊びは程々にしないとだめですよ」
そう言う理由はもう彼が17歳で、そろそろ婚約者を決めると噂されている。
婚約者がいる身で遊んでいては相手が可哀想だ。
「ちょ...!私をなんだと思っているんだ!」
「え?...違うんですか?」
てっきり火遊びをしに頻繁に町に行っているのかと思えばそうではないらしい。
「私は....!」
何かを言おうとして口を閉ざした。
私は頭に?を浮かべ、真っ直ぐ殿下を見ていると、殿下はごほんっと咳払いをして私に言う。
「とにかく遊んでいるわけではない!...行ってくる......断じて遊びに行くんじゃないぞ!!」
そう言って殿下は窓から城を抜け出した。
カリスは知らなかった。先日出かけた次の日の首に赤いマークがついているのをユリアナが見ていたことを。
そしてそれはただの蚊に刺されだということを。
それによって全然誤解は解けていないということを...。
「?町娘に本気ってこと...?」
それって王太子なのに大丈夫なの...?と心配しながらもさっきの殿下の姿が昨日の彼の姿と重なった。
「....なんかリオイみたい」
昨日の私の屋敷の窓から出ていったリオイを思い出し、男って窓から出たり入ったりが好きね。とくすっと笑う。
殿下の変装が終わり、城下町に行くことで私の本日の仕事は終わりだ。帰ろうと馬車の所まで歩いていた時だった。
「あら、貴方最近入ったカリスのお気に入りの侍女ね」
そんな声が聞こえたので、声の方に振り向くと王妃様がいらっしゃった。
「お目にかかれて光栄でございます。太陽の女神様にご挨拶致します」
カリス殿下の母君であるアリアンヌ王妃に礼をした。
最初、国王は伯爵家の娘とご結婚され、イオリ殿下がお生まれになったが、その後直ぐお亡くなりになった。
そしてその後家臣達の意向でアリアンヌ様が王妃になり、カリス殿下と、フェリクス殿下をお産みになった。
「貴方、男爵家のご令嬢よね」
そう言って私の頭からつま先までゆっくり値踏みをされた。
「間違いだけは起こさないでくださいましね」
そう私に警告をすると、私の横を通り過ぎて行った。
「...こわ」
王妃様は階級制度を重視した方なのだ。だからカリス様と間違いがないよう私に警告をというわけだ。
王妃様は我が子である第二王太子のカリス殿下を時期国王に押している。
だからこそ王太子妃は慎重に、強固な貴族で選びたいのだろう。多分サラサ公爵令嬢かイリア公爵令嬢辺りだろう。
イリア嬢の家が1番繋がりが広く強い。サラサ嬢の家は当主が王太子妃の座を狙っていると聞いたことがある。
メーリン様の家は前王妃様の家との繋がりが強いこともあり、第一王太子のイオリ殿下を押していることもあり、候補には入ってないだろう。
「ま、王妃様が心配してることにはならないから大丈夫だと思うけど」
あの方は私の変装の腕を買っているだけだ。
そして私は変装の手伝いをしに来ているだけだ。と思いながら私は城を出た。




