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無双xロジスティクス ~落ちこぼれ部隊?いいえ、最強実践部隊です~  作者: テンチョウ
第四章 ~帰結の門、進発の扉~

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第93話 息継ぎ

 あの村は、今や輸送基地のようになり、屋根付きの集積場所も作られていた。

 湯国の乱の情勢に動きがあったか、村周辺は反乱側の領域圏からは外れたようだった。

 第三輜重隊はそこで荷を積んで、再び呂国を目指す。


「おい。あまり(にら)んでやるな」

 馬豹が百鈴に釘を刺す。

「別に睨んでませんよ」

「顔に出さずとも、お前はわかり易すぎる。村の者が気に入らんのはわかるが、彼らも生きるのに苦労している。長いものに巻かれ、(おもね)るのも、ひとつの知恵だ。お前も、いつまでも世間知らずのイイトコの子ではあるまい」

 かつては百鈴たちを売り渡すようなまねをした村だったが、今では輸送隊相手に商売などもしているようで、第三隊にも菓子やら何やら売りつけようとしていた。

 たくましく健全な状態とも言えるのだが──。

 百鈴としては、そのような豹変に不快感を禁じ得なかった。


 馬豹も百鈴の性情はよくわかっていて。

「お前の素朴な熱さは、皆、好んでいるよ」

 どこかを眺めながら言葉にした。


「湯戻しって事は、いよいよなんですかね?」

 百鈴も(こだわ)るつもりはないと示すため話題を変えた。

 彼女の言う湯戻しは携帯用に加工した糧食の事だ。特に、そういう言い方があるわけではないが、たぶん意味は通じるだろうという見積もりだ。

「だろうな──。(もっと)も、既に始まっているわけだが」

 馬豹も百鈴にあわせる。

 後越国の胴州(ドウシュウ)は籠城戦の真っ最中である。

 今度の兵糧輸送は、呂の援軍がすぐにでも動くことを意味していた。

「また来るでしょうか?」

「楽しそうに言うな、まったく・・」

 謳軍が出てくることを期待した百鈴に馬豹があきれて言う。

 それでも少し考えながら。

「あれは呂軍を警戒してる軍だ。先日は部隊を差し向けたが、私達に構い過ぎれば任務を失敗することにもなりかねん。見つけたとして、私が指揮官なら、無視か他の者に丸投げすると思うな」

 推測を語ると。

「いやいや、曹長──。負けが認められずに、しつこく絡んでくる奴もいますからね」

 百鈴が含蓄深い音で言うので。

「ふむ。しばらく前にもあったような話だな、言葉に重みがある」

 あきれと感心を併せた音で馬豹は返した。

 それはどこか皮肉めいていたが、百鈴は満足そうであった。





 広げられた地図に石が幾つか置かれている。

 石は于鏡が説明の際に配置したものだ。

 呼延吹はそれを視界の隅に入れながら軽く溜息をつく。

──未練がましいものだ。

 己のことだ。



 北に配置された軍との打ち合わせに行っていた于鏡が急ぎ戻り。

「例の部隊と(おぼ)しき一団があらわれました」

 そう言って、得た情報を元に、地図上で予測される現在地と進行ルートを指し示したのだ。

 皆まで言わずとも理解した。

──双剣の百鈴。

 彼女のいる、あの精鋭部隊が来たのだと。


 于鏡は呼延吹の思いを知るだけではない。

 彼にとっても、かの敵の存在は呼延枹(コエンホウ)の死に繋がる因縁ある相手である。

 戦いに()いては于鏡自身も深手を負い、その事で──。いや、そのせいで掛け替えのない友を失ったと、自らを責めている。

 だからであろう。

 于鏡の言葉は熱を帯びていた。


 それは普段の姿とは、ほんの僅かだけ違っていた。


 些細な、些細な違い。

 そこに違和感を持ったことで、呼延吹は冷静になれた。


「特佐殿。私は──、この輜重は無視すべきだと考えます」

 呼延吹の言に、于鏡はハッとしたようだった。

 おそらく彼も冷静さを取り戻しただろうが、それでも呼延吹は言葉を続けた。

「私達は援軍を向けると思われる呂国軍と、城攻めをしている本隊、その二つに注意を払うため此処に陣取っています。北で呂軍とぶつかったなら、それに加勢し。呂軍が警戒を()(くぐ)って胴州に迫るなら、本隊の援護にまわる。今ここで他の敵に構い、軍を分けるようなことをすれば、不測の事態は勿論、予期されていた事態にすら対応できないおそれがあります。それは任務の失敗でありましょう」

 それはしっかりと、自分に言い聞かせるような語りだった。


「はい。まったくその通りかと。私も少し、気が()いていたようです。面目御座いません」

 言って于鏡は頭を下げた。

 反省の言であったが、于鏡は得心がいった顔つきであった。



「未練がましい」

 今度は声に出した。

 于鏡の前では無視すると言ったのに、いつまでも忘れられずにウダウダと思考している自分に、呼延吹は毒突くことで前に進もうとした。

「呂はまだ動かないのか・・」

 言って。

「ああ──、愚図なものだ」

 それは呂に向けられた言葉ではなかった。

 呼延吹は、呂軍が来れば、その対処で気が紛れるであろうと期待している自分に気付いて、また我が身を罵ったのだ。


 しばらくの間、呼延吹は独り反芻していた。

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