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無双xロジスティクス ~落ちこぼれ部隊?いいえ、最強実践部隊です~  作者: テンチョウ
第四章 ~帰結の門、進発の扉~

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第91話 脚下照顧

「待つ必要はありません──。ここに至るまでの間に使者を立てなかった事が、後越の回答である」

 (キョウ)太后の声が響く。

 謳国軍の軍議の席である。


 既に後越の首都、胴州(ドウシュウ)の三つの門は謳国軍の兵によって固められ、城への出入りは完全に断たれた状態になっていた。

 将軍以下、上級武官が揃い、城攻めについて話し合われていたが──。

 その行方が、前もって考えられていた兵糧攻めを軸にした降伏勧告案に傾こうとしていたとき。それを真っ向から否定した言葉だった。

 

「第一陣の撤退、そして兵糧の集積──、我等の計画は大きく狂い、後越に出し抜かれた格好となった。今を以て尚、当初の作戦に(こだわ)るのは時宜(じぎ)を逸していると言わざるを得ません」

 ここで喬太后は群臣の一人の方を向き。

「先程、兵糧について湯国側からとありましたが、その出所についてはどうか」

「委細については不明です──。流れ者の証言で、南から運ばれていたようだという事しか」

 返答を受け頷くと視線を戻し。

「南とは、馗国の事でありましょう」


 喬太后の言葉に一同がざわめく。


 彼女の言は臆測である。

 臆測であるが、謳国の軍人達には確信の音として聞こえた。

 そしてその心中に湧いたのは。

──華漢(カカン)の印象に惑わされた。

 という思いだ。

 派兵拒否からの独立戦争という無理筋も、あの男なら・・という先入観があり。馗国の工作の可能性を失念していた。

 考えてみれば、手練手管(てれんてくだ)の生存術こそ馗国のありようであり。

 過去に文国、湯国に行われていたそれと同じである。

 此度は二国に余裕がないため、その対象を謳の属国に切り替えたのだろう。


 武官達がそれらの結論に達したとき。

「めいめい自覚しなさい──、この戦いは既に南征の一部であると!」

 喬太后は鋭く言い放った。



 軍議は一転し、攻め落とす方向で作戦が練られた。


 その際、呂国からの援軍を足止めするため北に五百の軍を配置することになり。その軍と城攻めの本隊の中間地点に、元より遊撃隊である呼延吹軍が置かれることとなった。

 これも予定されていた割り振りとは異なるもので、城攻めを優先した形だ。

 二つの軍は日の沈まぬうちに素早く移動した。


 開戦は払暁(ふつぎょう)よりとなり、本隊の兵は早早(はやばや)と寝に就いた。





 どこぞの斥候と(おぼ)しき影があった。

 百鈴たち第三輜重隊は後越国から北上して呂国に兵糧を運び、今再び後越の地まで戻って来たところだ。


「謳国軍、おそらく呂からの援軍に対処する兵だろう。ならば胴州では既に戦が始まっているとみて間違いない」

 報告を受け、袁勝はそのように見解を示した。

「最早、空の輜重に拘りを見せるとは思えませんが、我等を捕らえて情報を得ようとする可能性はあるかと」

 馬豹が具申する。

 ここで百鈴も──。

「変に追われるのも面倒臭いですから、いっそ待ち伏せてから追い払いませんか?」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 意見してみるが、袁勝、馬豹から沈黙を引き出してしまった。


──お前は戦いたいだけだろ。

 二名の上官はもとより、近くで話を聞いていた他の隊員たちも等しく思った。


 さはさりながら、百鈴の心胆は例によってわかり易く伝播し、第三隊の面面は戦闘意欲を大いに刺激された。

 袁勝もその辺りの機微は察し、考えをめぐらせた。

 結果、百鈴の言葉から作戦行動がとられることとなった。


 とはいえ──。

 来るかどうか分からない相手を待ち伏せるのは、移動を主体とする輜重隊にとって非効率極まりない。

 袁勝は隊を分け、馬豹、百鈴に先行させ、自身は残りを率いた。

 輓馬(ばんば)を含め、荷車は全て袁勝の側に置いた形だった。




「馗国軍、太后陛下の見立て通りならそうだろう。ならば捕らえ情報を聞き出すとしよう」

 斥候の報告を受け、五百の軍を預かる中佐はそう判断を示した。

「しかし我々は呂軍を警戒する最中、それほど多くは動かせませんぞ」

 部下が具申する。

 ここで中佐は──。

「ハハハッ──、何も全てとは思っておらん。一人二人捕らえて、あとは追い払えばよい」

「なるほど」

「それなら」

 意見した者も感心した様に頷き、中佐の得意顔を引き出した。


──一応手柄になりそうだ。

 中佐はもとより、部下達も等しくそう思った。


 ()りとて、敵も四十人ほど部隊、本当に馗国の輜重隊ならば練度も高いはずであった。

 中途半端な数であれば返り討ちの危険も考えられた。

 結果、騎兵二十騎を含む百名が編制されることとなった。


 とまれ──。

 輜重隊を逃がしてしまっては全てが水泡に帰す。

 追走隊を任された隊長は隊を分け、騎馬を先行させることにした。

 進路に先回りさせ、足止めから挟み撃ちを狙う形だった。





 敵を後進する格好となった歩兵隊は戟塵(げきじん)を感じ取った。

「思った通りだ」

 馗国の輜重なら二十騎ばかりに逃げ出したりはしない。必ず撃退を狙うはずだと、隊長は読んでいた。

 眼で捉えた。

 敵は騎兵あいてに懸命に槍を伸ばしている。

──数が少ないな。

 思ったが、流石に何人かは逃げ出したのだろうと臆断した。

「よし、敵を取り囲んで一網打尽にする。行くぞ!!」

 隊長は声を張り、自ら先頭で突き進む。

 彼の頭では勝利は確定し、今は捕らえるため殺しすぎないようにしなければ、という事でいっぱいであった。

 だが──。



〔 脱兎捉爪 〕



 突如あらわれた騎馬に、味方の騎兵を指揮していた者が突き落とされた。

 続けて、どこからか駆けてきた歩兵の一団に勢いのまま突撃され、騎兵達は次々に落とされた。

「なにが!?」

 言ったときには騎兵達は数騎まで減り、彼らは隊長達と合流しようとして敵に背を向けた。

 そこに併走するかのように滑り込んだ新手の騎馬。

 刹那、一人は背中から槍で突かれ、また一人は石突きで打たれて落馬した。

 その状況に、あさっての方向へと離脱を計る騎兵がいたが、最初の騎馬に追走され討たれた。


──只者ではない。

 そして。

──撤退するべきか?

 隊長は思ったが。

──こちらも八十いる・・

 彼は迷い──、決断は遅れた。



〔 窮鼠噛獣 〕



「かかれ!!」

 袁勝の大喝とともに、騎兵を平らげた第三輜重隊が歩兵へと牙をむく。


 第三隊と謳軍、その()ち合いは一瞬で決着した。

 先頭にいた指揮官と思しき者を討ち、勢いのまま突っ込んだところで謳軍は潰走した。


 第三輜重隊は深追いせず、武器と馬を回収してすぐに移動した。



「意外にあっさり終わっちゃいましたね」

 言う百鈴に。

「どうもお前は、このところ調子に乗ってるようだな」

 ()えた目を向けながら、吐き捨てるように馬豹は言った。




 この日の夕餉前、久々に馬豹と百鈴の立ち合いが行われたが──。

 いつもとは違い木剣が(つか)われることになり、馬豹はそれで百鈴を散散に打ちのめした。


 その激しさは隊員たちも息を呑むほどであったが、百鈴は汗だくになりながらも充実した顔で。

 百鈴と立ち合って汗一つかかせられない己に。

──自分は、まだまだだな。

 と、馬豹の言葉じゃないが、調子に乗ってはいけないと隊員たちはそれぞれ気を引き締めた。

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