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無双xロジスティクス ~落ちこぼれ部隊?いいえ、最強実践部隊です~  作者: テンチョウ
第四章 ~帰結の門、進発の扉~

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第83話 類型

「偉いさんなのに、いいんでしょうかね?」

「本人が言ってるのだから問題あるまい」

「ほら。後になって怪我させられたとか訴える奴とか、いますからね」

「ふむ──。経験者の言葉だと説得力があるな・・」

 百鈴の指摘に、馬豹も頷き返す。


 袁勝が、後越国の高位と(おぼ)しき者と立ち合うことになってしまい、百鈴なりに成り行きを危ぶんだ言葉であった。

「にしても、ひとの事だと冷静なのだな」

 馬豹が据えた目で言う。

「どういう意味です?」

「どうもこうも──、後先考えずに喧嘩を売るくせによく言う、という事だ。今の配慮の半分でも使っていれば、ややこしい話にもならなかっただろうに」

 あきれた馬豹の声に。

「過去の経験を(かて)にしてますからね」

 (もっと)もらしく応じる百鈴。

「なにが過去なものか。さっきも無駄に殺気を垂れ流しおって・・ 私は、あれが向こうの闘争心に火を付けたと思っているぞ」

「いやいや・・ 曹長が隊長を侮辱するな、みたいに言ったんじゃないですか!」

「私は殺気など出していないだろう。相手の不躾(ぶしつけ)に釘を刺したまでの話だ。それでうまく収まる算段だったものを、お前が(ほた)をくべるものだから、隊長に御苦労をかけることになる」

「あー、その手は通じませんよ。曹長のことです。どーせ、私の反応を見越していたでしょうに。自分の代わりに私を使って、相手をビビらせたかったんじゃないですか?」

 ドヤ顔で言う百鈴に。

「お前の中で私はどうなってるんだ?」

 馬豹は怪訝(けげん)な顔で返した。


「お二人とも、始まるみたいですよ」

 一緒に状況を見守る第三隊の一人が言う。

「うむ。良い機会だ、皆も剣を遣うのであれば、袁勝大尉の動きをよく見ておけ。百鈴などより余程に参考になるぞ」

 馬豹の言葉に。

──そういえば、隊長の剣技はよく知らないな。

 百鈴は思った。

 彼女は第三輜重隊に来てから結構な回数の戦闘を(こな)してきたが、袁勝は基本的に指揮に徹する人であり、積極的に剣を振るったのを見たのは、数えるほどしかなかった。

 僅かながら捉えた印象だと。

──直線的な剣。

 百鈴の所見としてはそんなところだった。



 袁勝と高位の男が木剣を構える。

 途端、サッと間合いを詰めたのは男の方だ。勢いそのままに豪快に振り下ろしにいく。

 袁勝は少しだけ引いて斬撃のギリギリ範囲外に逃れる。それは即、反撃できる彼の間合いに相手を呼び込むという事でもある。

 ここで剣を止めるか誘いに切り替えて、袁勝の反撃を待つという手もあったはずだが、男は構わずに振り切ることを選んだ。

 生じた隙を見逃さず袁勝も攻撃にいくが、男は尚も前に出ながら、振り切った剣をもう一回しするように再び振り下ろしの体勢をとる。

──二の太刀が本命。

 初撃が力の抜けた偽物だったわけではない。

 むしろ強烈な一振りで助走をつけ、更に速度と威力を増して襲いかかる格好だ。

 百鈴の目には、猛威となった二撃目に袁勝が食われそうになっているように見えた。

 カッ!っと音が響く。

 袁勝が斬撃を受け止めた。

 その体勢は極めて低く、四股を踏んだ後のように腰を落としている。

 膝の力を瞬間的に抜くことで、体全体を沈み込ませると共に、逆に腕は即座に上昇する。筋肉の自然な反射を利用した動きである。

 次の刹那、袁勝はその低い姿勢のまま()るように踏み込みながら、相手の剣を横に流して、最小の動きで添えるが如く胴に当てた。


 数秒の攻防は、袁勝の勝利で終わった。



「あの二の太刀は胆力のなせる技で、それも見事だが──。流石は大尉、今の低い防御と、そこから前に出る動きは強靱な足腰があってこそだ。一朝一夕では真似できぬが、日頃の鍛錬を怠らなければ到達しうる技でもある」

 馬豹は隊員たちに聞かせるように評した。

 袁勝の剣は、何のことはない基本のそれであるが、熟練によって築かれた堅牢さがあった。

──熊収(ユウシュウ)よりか控え目かな。

 百鈴の知るところでは、熊収の質実剛健な剣に近いと感じた。違う点は、彼女の剣には天賦の才に裏打ちされた力強さがあるのに対して、袁勝の剣はどこか凡庸であった。

──でも、そういうのが厄介なのよ。

 強みがないというのは、逆に隙が少ない事でもあった。

 百鈴は無意識に、自分と袁勝との立ち合いをイメージして、やりにくさを感じていた。

 そして馬豹が言ったように、自分のそれよりも、袁勝の剣は皆の参考になっただろうという感慨を持った。



「ハハハッ──、(うま)いな」

 高位の男は笑って言うと。

「すまん。一席と言ったが、もうひと勝負やってはくれまいか?」

 泣きの一回を袁勝に頼んでいた。

 これに袁勝は。

「折角のお申出ですが──。自分も血気ある者に一太刀当てたと自慢したいので、これにて終了とさせて頂きたく存じます」

 と、これまでとは違って慇懃(いんぎん)に礼をして返した。

「なんだ──、気付いておったのか!?」

「いえ。反撃をおそれぬ太刀筋にそうではないかと思ったまでです」

 袁勝は再び泰然とした態度に戻り、答えた。

「なるほどな。試すつもりが、試されたのかな?」

「そのような意図はありません」

 男は袁勝の返答に頷くと。

「この後、勝ち戦の祝勝をする。付き合ってもらった礼として、ささやかなものだが、そこもとらの席も設けよう」

 それだけ言って、颯爽と立ち去った。




 袁勝と男、二人のやり取りを見ていた百鈴が。

「曹長、血気ある者って何ですか?」

 聞くが。

「知らぬなら、知る必要はないさ──」

 と、馬豹はどうでもいいという音で答えた。

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