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無双xロジスティクス ~落ちこぼれ部隊?いいえ、最強実践部隊です~  作者: テンチョウ
第四章 ~帰結の門、進発の扉~

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第82話 とぜん

「やはり王の凱旋(がいせん)の方が()えるのではないですか?」

 鍾棋(ショウキ)が言うが。

「何をおっしゃる。後越(ゴエツ)に鍾棋ありと内外に示す、この勝ち戦は絶好の機会ではありませんか。それに、将軍の首に箔を付ける必要があると言ったのは、鍾棋殿ではないですか」

「わし一人だけ目立つのはどうもなぁ・・」

「ハハッ──、王命と思って諦めて下され」

 渋る鍾棋に、華漢(カカン)は笑って返した。


 後越軍千五百は、進軍途中であった謳国軍の一つを撃退し、戦捷(せんしょう)の軍として今まさに城の門をくぐろうとしていた。

 軍が高々と掲げるのは鍾の旗。

 知る者は懐かしさと共に、老いても流石、鍾棋と思い。

 知らぬ者は、よもや本当に謳国軍を負かしてくるとはと、鍾棋に対して感心と関心を持った。




 華漢は自分が近くにいては鍾棋が目立たぬかも知れぬと考え、僅かな供回りだけ連れて、さりげなく隊列から離れ、正面の広場を避けて脇の馬屋などがある方へ向かった。


 番の者に馬を預け戻ろうとしたとき、自分たちとは異なる軍装の者達が、壁にもたれるようにして休んでいる姿が目に映った。

 華漢は彼らの所まで行くと。

「休んでいるところ悪いが、その格好は、馗国軍の軍装で間違いないかな?」

 近くの者に尋ねた。

「ええ、そうですよ」

「おおっ──。では兵糧を運んで来てくれたというわけか」

「はい。穀物の方ですけど」

 兵糧は、それそのまま糧食を意味するが、携帯できるように加工した物も兵糧といった。返答の意味は、その曖昧さを回避するためのものだ。

 聞いた華漢は忠実(まめ)な者だと思ったが、それよりも、彼らの軍装に返り血を浴びた痕跡があるのが気になった。既に拭き取ってはあったが、つい最近付着したように見えたのだ。


 そこに隊長と(おぼ)しき男と、その副官だろうか、女が二人やって来た。

「うちの者が何か?」

 毛色が違う者が寄れば、多少のいざこざが起こるのが世間であったから、何らかのトラブルが発生したのではないかと考えたのだろう。

「いや──、兵糧の運搬かどうかを確かめていたまでだ」

 華漢は応えながら、三人を観察した。

 女二人は、他の者らと同じく血で汚れた跡があったが、隊長の男からは全くその気配が感じられなかった。


「一つ聞くが、此方に来るまでの間に何かあったのか?」

 華漢は戦闘の有無を問うた。

「湯国の反乱側の勢力と少々。その情報を報告し、今は、こちらの判断を待っているところです」

 男はそう答えた。

「なるほどな──。ところで貴公は、その戦闘で何をしていたのか」

 華漢がここまで言ったとき。

「待て!」

 女の一人が声を出す。

 その眼光は獣のように鋭く、放つ威勢は華漢をして圧を感じる程であった。

「貴方が何者かは存じませんが、何者であっても、我等の隊長を侮辱するつもりなら、これ以上の会話を続けるわけにはゆきません」

 華漢の装いは王としてのそれではなかったが、並ではないというのも明らかで、供回りもいることから、かなり上位の立場にあると容易に推測できた。にも(かかわ)らず、女は()めず臆せず言葉を放った。

 彼女自身は凄みを持っていたが、同時に落ち着いた感じでもあった。

 だから華漢達は、圧はあっても危険はないと思った。


 問題はもう一方だ。


 先の女の言を聞くと、もう一人は、あからさまな殺気を華漢と彼の供達にぶつけてきたのだ。

 そのとき感じたものを言い表すなら。


──どの順番で斬り殺すか。


 若い女が考えてる事は、それであろうと華漢は思った。

 こちらの対処、対応を予測し、それを上回る動きをするための準備をしている。

 その認識は供達も同じだったようで、彼らは身構えるとまではいかなかったが、体には相応の緊張が走っていた。

「失礼した──、ただ、どのような者たちなのか知りたいと思っただけだ。無論そこに、返答によっては(さげす)む可能性がある事は認めよう。だが断じて(わら)うために問うたのではない」

 華漢は、にわかに生じた戦場の気味を撥ね()けるように堂々と声にした。

「自分は皆の動きを見ていただけです」

 隊長の男は意に介した風もなく答えた。

──ほぉ、行儀の良い男というわけでもないのか。

 華漢は男の言葉に、どこか反骨の匂いを感じた。それは、華漢の好むところでもあった。


「ならば手持ち無沙汰であったのではないか? 皆、優秀な者達のようだからな」

「まぁ、そうかもしれません」

「実は俺も、殆ど見てるだけをやったばかりで()んでいたんだ。どうだ、お互い運動不足を補うために、一席、稽古でもしようではないか」

 華漢は男を立ち合いに誘った。



 華漢には指揮官たる者、自ら先頭に立って進むべしという考えがあり、実際に彼自身それを実行してきた者であった。周囲は王族でありながら前に出て戦う彼のことを、血気ある者と評した。

 斯様な華漢であったから、隊長の男の姿を見たとき。

──後ろから指示を出すだけ者か?

 という、華漢が、あまり好きではないタイプなのかと考え、はっきりさせたく思い、問いを放った。

 それは思いがけない反発を生んだが、華漢としては悪くなかった。むしろ(かえ)って、二頭の獣と、その上司である隊長に興味を持った。

 剣を交えればわかる、というほど達人でもないが、剣の動きにはその人間の気質出るとの考えもあったから、立ち合うことで好奇心を満たそうとした。



 隊長の男は(しば)し考えたようだったが。

「そうですね。自分でよろしければ、お相手しましょう」

 泰然と応えた。

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