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無双xロジスティクス ~落ちこぼれ部隊?いいえ、最強実践部隊です~  作者: テンチョウ
第四章 ~帰結の門、進発の扉~

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第81話 兵糧運搬

 第三輜重隊は北の街、(カン)門にて穀物を積み、馗、湯、謳、三ヵ国の国境が交わる辺りから北上、後越国を目指して行軍していた。

 道なき道というわけではないが、国軍にとって未知である事に違いはなく記録をしながらの移動となった。

 そのため休止が多く、普段よりも一行の歩みは遅かったが、荷の重量もまた増していたので、それに慣れる意味でもゆっくりなペースは丁度良かった。


 第三隊は行程の半分を過ぎた所で、事前の情報にはなかった村を発見した。

 位置的に湯国の村になる。

 今回の任務に当たり輜重隊には、現地民との接触は極力避けるよう指示が出されていた。

 政府側と話がついているとはいえ、乱の真っ最中である。当然、反乱側に(くみ)する勢力も点在しており、立ち寄った村などがその支配下であった場合、事態がややこしくなる事が予想されるからだ。

 さはさりながら、元より集落というものは人や物の通り道に成り立つ事が多く、村を避けようとすれば、かなり戻ってから大きく方向を変える必要があった。

 判断は難しいところだったが、反乱に関係なければ、今後休憩地として利用できるとも考えられ、輜重隊はあえて村に立ち寄る事にした。


 村では流石に注目を集めたが、これといった事もなく、休憩と水を補給してから出発した。

 それが一昨日の話。

 今、第三輜重隊は、謳国の勢力圏を避けるために西に回り込もうとしていた。



 百鈴は相変わらずの最後尾で警戒の任に当たっていたが、時折、馬を走らせては少し戻り、追跡する者がいないかもチェックしていた。

 これが先遣隊としての重要任務であるから、いつも以上の注意は(もっと)もな事として、百鈴はそれとは別に、先日の村がどうにも胡散臭く感じており、以降、一段と用心した。

──取り越し苦労なら、それでイイ。

 百鈴は、かの村の事を、何がどうして気に入らぬのか自身でも判然とせず、そのモヤモヤを解消したいのもあって偵察には力が入った。

 結果、どこぞの斥候と(おぼ)しき者を発見するに至った。


 百鈴はすぐに袁勝に報告した。

 何者かが、こちらの所在を把握せんとしているのは確かだが、それが湯国の政府側なのか、反乱側なのかは不明であったし、謳国軍という可能性もなくはなかった。

 一行は一旦道を外れ、森に隠れる事にした。


 しばらくすると百名ほどの武装した集団が通り過ぎた。

 遠目に軍装で判断することは難しく、彼らも旗を掲げていたが、それがどの勢力を示しているのかはわからなかった。

「人数的に謳国軍とは考えにくいと思われます」

 馬豹は所見を述べた。

 あやふやな所もあるが、一応、湯国側の地ゆえ、謳国軍ならもう少し数が多いだろうという見立てだ。

「俺も曹長の意見と同じだ。であるなら、必然、湯国のどちらかになる」

 袁勝も賛同を示し。

「出来れば、いなくなるまでやり過ごしたいとこだ。しかし補給の遅れは、軍の士気に直結する。(くだん)の軍の構成は知り得た。彼らが反乱側であった場合、戦闘になることも覚悟し、輸送を再開する」

 そう語り、第三輜重隊は森を出て道に戻った。


 武装集団の後をゆく形になるため、彼らが逆行するか、偵察の者を背後に伸ばさない限り発見されることはないと思われた。

 その通り、夕刻まで順調に進むことができ、そこで野営となった。



 翌日、第三隊は日の出前に出発し、昼前まで進んだ所で──。

 ワァッーという喊声(かんせい)を左右から受けた。

 完全なる待ち伏せでの奇襲だ。

 相手が、湯の政府軍なのか反乱軍なのかは不明だったが、仕掛けられた以上、敵として対処するしかない。

「奇数班は馬豹と右に、偶数は百鈴と左に当たれ」

 袁勝は指示を出し。

「迎撃!!」

 大喝した。



〔 窮鼠噛獣 〕



 馬豹、百鈴に率いられ、それぞれ敵に向かう隊員たち。

 今回、袁勝はあえて動かない。


 袁勝は、現在の隊長、副官の第一、第二の指揮官だけでなく、第三、第四の指揮官も入れた編制を考えていた。それは単に指揮権の順序というだけでなく、実際に動かすことを前提とした構想だった。

 そこには、以前、馬豹が落馬させられた事が関係していて。あのときは百鈴の活躍で大事には至らなかったが、袁勝自身は全隊の指揮のため咄嗟には動けなかった。彼は、あの場面を思い起こし、すぐに隊を分け、適宜それらが機能していれば、もっと簡単にフォローできただろうと考えたのだ。


 馬豹は、第三隊の連携を以て戦うやり方を十分に理解していて、その指揮もほぼ問題がない。

 百鈴は、指揮に関してはまだまだだが、状況判断はよい勘を持っている。

──まずは二人の指揮者としての経験を高める。

 袁勝はそのような方針をもった。

 そして彼は独り、その準備として、これまで輜重隊では使うことのなかった弓の修練を行っていた。

──足りぬ部分は俺が補う。

 袁勝は全体を見回し、側面を取られそうになっている百鈴側に向けて──。



〔 抑梟扶雀(ヨクキョウフジャク) 〕



 弓を引き絞る。

 騎射には向かぬ強弓(ごうきゅう)であったが、スキルを使うことで、普通の弓と変わらず引くことができる。

 袁勝は狙いを定め、次の瞬間──。

 ケンッ!

 弦の高い音が、矢が放たれたことを知らしめたとき、二人の敵兵が(きびす)を接するように倒れた。袁勝が、一矢を以て二人を(ほふ)ったのだ。

 その光景は逡巡(しゅんじゅん)を生みだし、百鈴たちはそれに付け込んで敵を圧倒した。

 一方、馬豹の側は危なげなく戦いを進め、不利を悟った敵は逃げに転じた。



 袁勝は追撃は命じなかったが、逃げ遅れた敵兵を捕らえて集団の正体を問うた。

 兵の話では、彼らは反乱側の勢力になり、穀物を積んだ輸送隊がいるとの情報を受け、それを奪う目的で第三隊を探索していたのだという。

 一度見失ったが、それまでの進路から当たりを付けて待ち伏せる事にしたらしい。

 ただ、兵は情報の出所までは知らなかった。

 他、軍の規模や拠点の位置など細細と聞き出して、最後に。

「可能なら軍をやめることだ──。次に会ったときは容赦はせん」

 袁勝はそれだけ言って、兵を解放した。




 第三輜重隊は武器だけ鹵獲すると。

「時間を無駄にした。本日は完全に日が落ちるまで移動とする」

 袁勝が言い。

「進発!」


 何事もなかったかのように、ゆっくりと荷車は動き出した。

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