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無双xロジスティクス ~落ちこぼれ部隊?いいえ、最強実践部隊です~  作者: テンチョウ
第四章 ~帰結の門、進発の扉~

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第79話 留意

 段昂(ダンコウ)は単独で調査をする。

 任務は大人数でやるものもあるが、自分には一人の方が向いていると、段昂は思っていた。


 (リョ)国と後越(ゴエツ)国が、実質的に謳国に反旗を翻したことになる今回の派兵拒絶。その後に来るのは軍事的な圧力であるという予測は、よく事情を知らぬ者でも容易に到達しえた。

 そして、その威力が履行された場合、二ヵ国に抗うだけの力はない。

 にも関わらず、彼らはそれを断行した。

 単に良い条件を引き出すためのパフォーマンスで、すぐに講和する思惑と考えることもできたが。

──何かしらの勝算があるのか?

 段昂はそのように思い、呂国の方を調べだした。

 理由は、ここまでの調べで、此度の二国の協調は呂国側からの提案であることがわかっていたからだ。



 後越の国王、華漢(カカン)は血気ある者として知られ、若い頃は軍の先頭に立って戦っていたこともある男であった。だから、彼の方から話を持ちかけたなら、無謀ではあるが、あり得なくはないと思われた。

 一方、呂国の王、潘会(ハンカイ)はまだ若いのもあってか、これといった名代(なだい)の話もなく、これまでの謳国との関係でも従順な男であった。それがここに来て、反抗を首謀する者となったのは、(いぶか)さざるを得ない出来事といえた。



 潘会の事を調べているうちに、段昂は、ひとりの女の存在を知った。


 名は泡易(ホウエキ)

 潘会が外出した折に、足を(くじ)いて難儀していた彼女を見つけ、馬車に乗せた事が出会いであったという。以来、泡易は潘会の庇護下に置かれたことから、周囲の者は将来的に夫人にするのではないか、との臆測も持ったようだ。

 ところが潘会は泡易を別の街に住まわせ、そこには使いを送るだけで、彼が出向くことは勿論、彼女を呼び付けることすら、する事がなかった。

 泡易に関しては、もしかしたら只の気まぐれの可能性もあった。小動物を拾い、可哀相に思って餌をやるようなそれだ。

 しかしながら、時を同じくして潘会は積極的に後越に働きかけた形跡があり、段昂としては、泡易の登場と何からの関わりがあるのではないかと(にら)んでいた。


 こんなことを人に話せば。

「女一人の存在が如何(いか)ほどのことか」

 と、笑われるかも知れない。それは段昂とてわかっている。

 さはさりながら、彼の(つちか)った諜報部としての勘が、何かあると訴えており、段昂は自身のそれを信じることにした。



 段昂は泡易の屋敷を見張り、そこに出入りする人間を調べていた。


 ある晩、馬に乗って一人の男がやって来た。

 平服であったが剣を()き、その乗馬の動きから察するところ、男は軍人であると段昂は判断した。

 男は一晩屋敷で過ごし、翌早朝には屋敷を出たが、その際に門の所まで一人の女が見送りに来ていた。

 つまらないといった感じの、冷たい表情の女。

──あれが泡易だろうな。

 段昂は知らぬが、そうであろうという推測をもった。

──問題は、あの男が何者なのかだ。

 軍人と(おぼ)しき男の正体を探るべく、彼の後を追うことを考えた。

 来た方向はわかっているのだから、今から馬の所まで行ってから追い掛けても十分に間に合うだろう。

 段昂がそう思って立ち去ろうとしたとき──。


 泡易が笑った。


──!?

 その破顔に、段昂は我を忘れた。

 (くだん)の男は騎乗し、泡易に見送られながら駆け去った。

 段昂は男の後を追い、彼がどこぞの者かを知るつもりであった。しかしどういうわけか、段昂はその場を動かず、じっと泡易のことを見ていた。





「先遣隊という位置付けになる。という事でしょうか?」

「そうだ。俺たちが最初に輸送を行いルートを精査し、問題がなければ、臨時の輸送隊を中心として兵糧の運搬を始める事になっている。だが、それ一度きりというわけではない」

 馬豹の確認に、袁勝が応える。

 第三輜重隊には、また特別任務が与えられる事になり、隊長の袁勝より隊員たちに説明がなされているところだ。

「今回は実質、敵地での活動と同じだ。湯国側とはネマワシが済んでいるが、反乱軍側がどう動くかは未知数だ。謳国側だけではなく、そちらへの警戒も怠ってはならない」

 袁勝が言う。


 馗国は、謳国からの侵攻を遅らせるため、かの国からの独立を狙う二ヵ国、呂と後越を支援することを決定した。

 二ヵ国の焦眉の問題は、謳国と干戈を交えるだけの備蓄がないことにあった。

 それを補うため馗国から兵糧を運ぶことになったのだが、その道筋は謳国と湯国の国境を通るという大雑把なものでしかなく、正確な地図すらない状態だった。

 そこで国軍は、その先駆けとして第三輜重隊に行路の選定をさせることにした。彼らは少数精鋭であり、実際に荷車を引く者であったから、その任に打って付けだったのだ。


 隊員たちは再び訪れた危険度の高い任務に、神妙な面持ちだった。




「礼国とのときもそうでしたけど、何かヤバそうなのを最初に押しつけられてません?」

 百鈴が不満げに言う。

 いつもの立ち合いを終え、一息ついての発言だ。

「おや、おかしいな? まともなリアクションをしてるぞ。無駄に好戦的なお前なら、ここは嬉々とするかと思ったが」

「人を戦闘狂みたいに言わないで下さい」

 馬豹のいじりに、ジトッと返す百鈴。

「いや、戦闘狂であろう。よりにもよって崔姜(サイキョウ)の真似などするのだからな」

 先日の顔家軍での一件を引き合いに出して言う。

「あれは一回やってみたかったんですよ、豪快なのを。本物じゃ重くて無理だろうし。それに鼻っ柱を折るにはインパクトがあっていいじゃないですか」

「いや、別に折らなくてもいいからな・・」

「またまたぁ~。私に押しつけたのは、そういう意図でしょ?」

「さて──。なんのことだか」

 馬豹は、すっとぼけたように言い。

「まぁ、これでお前も、顔沖(ガンチュウ)殿から注目されるようになるかも知れんな」

 と、続けた。

「あ──。まっ、それならそれで、返り討ちにしてやりますけどね」

「いや、なんで戦う前提になってるんだ・・ というか、やっぱり好戦的じゃないか」

「そうですかね」

 今度は百鈴がとぼけた。

「なんでもいいが──、今度の任務では慎重に頼むぞ」

 馬豹は言った。その音と眼光には、彼女の振るう槍のような鋭さがあった。

 やや調子に乗ってる後輩に釘を刺したのだろう。

 百鈴もこれには黙って頷くにとどめた。




 数日後、第三輜重隊は北の街、(カン)門を目指して出発した。

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