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無双xロジスティクス ~落ちこぼれ部隊?いいえ、最強実践部隊です~  作者: テンチョウ
第四章 ~帰結の門、進発の扉~

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第77話 無関係!?

 第三輜重隊は顔家軍の本拠地まで来ていた。

 本日の客は顔家である。



 顔家軍は(ゆう)を持たず(あきな)いで軍を維持しており、税を免除してもらう代わりに国を守る、といった感じの組織だった。

 顔家の商売は手広く様々な物を扱っていたが、一番の主力商品は馬であった。

 顔家軍は騎馬隊だけの集団だが、その馬の九割以上は自分たちで育てたものであり、彼らは優秀なブリーダー兼トレーナーであった。

 ちなみに、以前、雍白(ヨウハク)が用意した百鈴たちの馬は、顔家から買い付けたものだ。



 隊員たちが南から運んで来た荷を下ろし、馬豹と百鈴が検分に立ち合っていると。

「よう馬豹ちゃん。ひさしぶり」

 歳の割に軽い感じの男が話しかけてきた。

「どうも」

 馬豹は色のない声で返す。

「あれ? 袁勝クンは?」

 わざとらしくキョロキョロとしながら言う男。

「大尉なら事務所の方です」

 やはり馬豹の返答は淡々としている。

──何者だ、このオッサン。

 百鈴は思うが、初対面の人間であるにも関わらず、その胸裏はわかり易く伝わり。

「ああ──、僕はね、顔沖(ガンチュウ)っていうの。一応、ここの偉い人」

 男はへらへらと笑いながら自己紹介した。

 別に大して知りたくもなかったが、名乗られてしまった以上、なにも返さないわけにもいかず。

「百鈴です」

 仕方なく名乗った。

「あー知ってるよ、双剣の百鈴ちゃんでしょ。有名人じゃん。あれ? でも一本しか()いてないの?」

「はい──。敵から奪った剣で、たまたま二刀流してたのが噂になってるだけです」

 顔沖の問いに、馬豹同様、色のない声で答えた。

「ふーん。そういうものか・・」

 顔沖は言うと、続けて。

「ところで馬豹ちゃん。そろそろウチに入る気ない?」

「国軍を辞めるつもりはありません」

「ウチ、結構給料いいよ」

「そうですか」


 どこまで本気かわからない勧誘をかける顔沖を、感情を込めずにあしらう馬豹。

 このやり取りをしている間に袁勝が戻ってきて。


「顔沖殿、引き抜きは軍営を通して頂かなくては困ります」

 そう声を掛けた。

「おう袁勝クン、ご苦労様」

 顔沖は悪びれる事なく笑顔で応えた。

「こんな所で油を売っていると、また家宰の方に叱られるのではないですか?」

「あー。でも人員確保も大事な仕事だし。大目に見てくれるでしょ」

「馬豹は断ったと思いますが」

「あのね。こーゆーのは何度も頼んで口説き落とすものなの」

「これ以上は軍営に報告し、正式に抗議する事になります」

 飄々(ひょうひょう)とした顔沖に、泰然と返す袁勝。

「あー、はいはい──、もうやめますよ。で──、話変わるけどさ。これからそっちの予定、何かある?」

「あとは九門に戻るだけです」

「ならウチで飯くってきなよ。もうすぐ訓練終わりだしさ。そっちの食事は、どーせ兵糧戻すだけでしょ。こっちなら少しはマシな物が出せるよ」

 顔沖はそう提案した。

 これには袁勝も(しば)しのあいだ考えたが。

「わかりました。ご厚意を賜りたく思います」

 言って頭を下げた。

 顔沖は喜色を表し、少し待つように言って、いそいそと何処かへ消えた。




 袁勝たち第三輜重隊の隊員は、顔家軍の食堂へと案内された。

 既に顔家の兵たちが席に着き食事をしている。

 顔沖は袁勝、馬豹、百鈴を自分と同じ卓に着かせようとしたが。

「隊員たちを見る者がいなくなりますから」

 と、百鈴は固辞し、そのことで馬豹からジトッとした目を向けられた。

──うまく逃げたな。

 馬豹の心の声が聞こえた気がした。


 ともあれ、百鈴は普段の任務中はあまり機会のない、普通の食事を堪能した。

 食事中。

「あれは前からですよ」

 古参の隊員が言うには、馬豹は前々から顔家軍の勧誘を受け、断り続けているという。

──ひょっとして、あの時の話か?

 百鈴は以前に立ち聞きしてしまった、馬豹と袁勝の会話を思い出した。


 第一線に漠然と憧れていた(かつ)ての百鈴ならば、馬豹の辞退を理解できなかったかも知れない。

 しかし、今、百鈴は馬豹、そして第三輜重隊から離れたくないと考えており、その思いに似たものを、馬豹も同様に(いだ)いているのではないだろうかと想像した。

 百鈴にとって馬豹が特別な存在であるように、彼女にとって袁勝が特別なのではないか、できるなら自分もその特別でありたい。そんな風に考えた。




──あとは帰るだけだな。

 食事が終わり、ちょっとのんびりしていた百鈴の所へ顔家の人が来て。

「百鈴さんですね。向こうで顔沖と袁勝殿がお呼びになっております」

 そう伝え、困惑する百鈴を彼らの卓へ案内した。


「あー悪いね、呼び付けちゃって。あのさ、突然なんだけど──、この男、文翼(ブンヨク)っていう僕の甥なんだけど。是非ね、百鈴ちゃんと手合わせしてもらいたいんだ」

 と、顔沖。

「実はな・・」

 袁勝も困った顔で、皆から少し離れて百鈴に説明した。それによると──。



 顔沖が食事の席でも諦め悪く馬豹を口説いていると。

「伯父上、輜重隊の者などに胡麻を()るのはやめてください」

 文翼がそう言って(いさ)めた。

 どうやら、彼は誘いに見向きもしない馬豹が面白くなかったようだったが、顔沖の方は、その辺りに気が回らないのか。

「いやいや、馬豹ちゃんは騎馬のスキルがあって、明日にでも驃騎兵になれるから」

 と、馬豹を持ち上げた。

「スキルがある事と実力がある事は別です。そもそも国軍の騎馬隊にもなれぬ者に、我等顔家の兵が務まるとは思えません。力がある者ならば、とうに頭角をあらわし、噂の一つでもあって(しか)るべきです。私も国軍の騎馬隊とは親しくしておりますが、馬豹殿の名など、これまで聞いたこともありません」

 文翼はそのように力説した。

 顔沖は少し考える素振りをして。

「能ある鷹は爪を隠すって()うし、馬豹ちゃんはこの通り控え目だからさ。それに噂なら双剣の百鈴ってのがあるでしょ。百鈴ちゃんは馬豹ちゃんの後輩なんだよ。馬豹ちゃんは百鈴ちゃんよりか、強いでしょ?」

 文翼の言葉を否定しつつ、馬豹に確認した。

「まだ豎子(じゅし)に負けるつもりはありません」

 馬豹はそう返した。

 これに文翼は。

「伯父上の(おっしゃ)ることはわかります。ですが、双剣も独り歩きした話やもしれません」

「いや──。噂がどーとか、文翼が言い出したんじゃない。尾ひれはひれも噂のうちでしょう」

「普通に考えて、それ程の猛者を輜重隊に置いておくはずがないです」

「じゃあ何? 僕の見立てが間違っているっていうの?」

 顔沖も不満な音で言うが。

「過去も間違ってきたでしょう。それで自分が目利きだなどと言うおつもりですか!」

 文翼も強気に応じる。


 そうして、いつしか馬豹の話は何処かへ消え、顔沖に見る目があるかどうかで言い合いになり、その答えとして、文翼と百鈴が騎馬で立ち合うという話になった。



「すみません、隊長。まったく意味がわからないのですが・・」

 百鈴が困惑の表情全開で言う。

(もっと)もだ。すまん──、俺が口論をやめさせれば良かったのだが、変に(こじ)れてしまった。別に、この話は断っていい。寧ろ、本人の口からはっきり言ってもらった方が早いと思ってな」

 袁勝も平素見せることのない疲れた顔をしていた。

 彼も顔沖の我が(まま)()なすのに難儀したのだろう。この様子では正式な抗議すら、どこ吹く風なのかも知れない。

 百鈴が、この状況に馬豹はどうしてるかと思い見てみれば、彼女はそ知らぬ顔をして茶を飲んでいた。

──この女、私に押しつける気だな。

 百鈴は馬豹の意図を洞察し。

──あとで貸しとして取り立ててやるか。

 と、妙にやる気を出した。

 そして。

「隊長、私やります。最強を名乗る人達の力も見てみたいですし」

 百鈴は不敵に言った。


 これを聞いたときの袁勝の顔は驚きに満ちていて。

──隊長もこんな顔するんだ。

 と、百鈴は密かにそれを楽しんだ。

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