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無双xロジスティクス ~落ちこぼれ部隊?いいえ、最強実践部隊です~  作者: テンチョウ
第一章 ~散ずる道、成す小径~

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第6話 バレバレ!?

 ()国の首都、九門(キュウモン)

 百鈴(ヒャクリン)たち、第三輜重隊(しちょうたい)は南の国境から、南東の都市、巽門(ソンモン)へ行き、また荷を受け取って十日ぶりに戻って来た。

 帰路は、やや緩やかな上り坂も多かったが隊員たちは物ともせずに荷車を押し、特に何事もなく、予定通りの到着だった。


 百鈴は馬上から彼等の働きを見ていたが、相当に足腰が鍛えられていると感じた。

──曹長はあれで鍛えられたのかも。


 馬豹(バヒョウ)は騎馬のスキルを持っていたが、それを使わずとも卓越した馬術を見せた。

 最初、百鈴は馬が違うのかと考え、馬豹に頼んで交換してもらったが意味はなかった。

 おかしいなと首を(かし)げる百鈴を見て。

「修行が足りんだけだ」

 馬豹は言って笑っていた。


 馬豹は、この輜重隊での叩き上げで、一兵卒から曹長になり現在は隊の副官を務めている。

 彼女が達人の(いき)に至るのに、輜重兵としての仕事が、何か関与しているのではないかと百鈴は推測した。



 運んで来た荷は、簡単な屋根だけある場所に降ろされた。

 明日、別の隊が運ぶのだという。

「荷車に乗せたままじゃダメなんでしょうか?」

 百鈴が袁勝(エンショウ)に聞くと。

「荷車は隊ごとに管理している。その整備、点検も隊の責任で行う」

 そう説明した。

 道中で不具合が出ても、他に文句は言えないというわけだ。


 百鈴から見るに、袁勝は上官らしい上官だった。

 寡黙でも多弁でもなく、適度な堅さと遊びのある態度で、隊員たちからの信頼も厚かった。

 特に馬豹の心酔ぶりは凄く、百鈴には何がそこまで彼女を突き動かすのかわからなかったが。反目(はんもく)しあう関係よりはマシであろうと思った。


 その馬豹は見かけによらずの饒舌家(じょうぜつか)で、一度(ひとたび)しゃべり出せば、とどまることなくスラスラと言葉を発した。

 葡萄酒が配られた折は、その蘊蓄(うんちく)を延延と披露(ひろう)していたのだが──。それが初めてではないようで、一部の兵達は、ウンザリした表情を浮かべていた。

 百鈴が知りたい大概の事は馬豹に聞けば良かったが、斯様(かよう)にしてよく喋るので、手短に済ませたいときは袁勝や、他の兵に尋ねた。



 部隊は兵営に戻ると、隊員たちは荷車の泥を落とし、綺麗に掃除しだした。

 きっとこの後、整備などもするのだろうと百鈴は想像した。

 隊長の袁勝は、賊の首、彼等の武具、乗っていた馬などを本営に届けに行ったようだ。

 百鈴は馬豹と共に、報告書など、書類仕事を(こな)した。

 慣れぬ作業ではあったが、夕刻前には全てを終わらせる事ができた。


 本営から戻った袁勝は皆を集め。

「討ち取った賊徒に賞金が掛かっていた。また、武具と馬から報奨金も出た。あわせて四十七金になるが、通例通り、一人一金とし、残りを討ち取った馬豹曹長に渡したく思う。異論のある者はいるか?」

 そのように聞いた。

 誰も文句はないだろうと思われたが──。

「隊長。敵の首領に一太刀あびせ、潰走(かいそう)に追い込んだのは百鈴軍曹であります。彼女にも特段の配慮があって(しか)るべきかと具申(ぐしん)いたします」

 馬豹が、なめらかに舌を回して言った。

 途端(とたん)、百鈴に集まる視線。

──余計なことすんなよ!

 思ったが、否定するのも違う気がして、どうしていいか分からず──。みっともない姿だけは見せたくないと考え、さも泰然(たいぜん)としてる様に、涼しい顔をつくった。

 袁勝は(うなず)くと。

「なるほど、それは一理あるな。では、軍曹は三金、残りを曹長に渡す」

 言って話は終わった。



 任務終わりは基本翌日が休みだ。

 一日二日程度の短いものなら無いこともあるが、今回は、のべ十日間に及ぶそれだったため当然であった。

 隊員の中には九門に家族がいる者もいて、彼等は家に帰ったりするようだが。そうでない者は、連れだって街に出かけた。臨時収入も彼等の行動に弾みを与えたようだった。


 百鈴は一つ任務を終え、今後について、あらためて整理したかった。

 一度は諦めようかと考えた軍人の道を、この隊で続けてみようかとか、そういう事をだ。

 しかし──。

「よかったな。分け前が増えて」

 と、馬豹が恩着せがましく(から)んできた。

 百鈴も。

「曹長の配慮、大変ありがたく思います」

 一応の謝意を表すと。

「そうか、そうか。感謝の言葉を聞くのも悪くはないが、兵営では堅苦しさが残っていかん」

 とか何とか言って、馬豹は百鈴を街へと連行した。


 道すがら。

「私に分け前を渡したいなら、曹長が自分で渡せばいいじゃないですか」

 百鈴が言うと。

「何を言ってる。隊長や、皆の覚えをめでたくしてやろうという、私の心遣いが理解できないのか?」

 やれやれといった感じでいう馬豹。

──感謝をねだるような事をしておいて・・

 思ったが、そこには言及せずに。

「理解はしています。ですが、実際大した活躍でもないですし、変に目立ちたくないです」

 そう返した。

「敵の指揮官に攻撃し、潰走させるのが大した事ないか」

 馬豹は、思いのほか静かに言った。


 百鈴は少し戸惑った。

 なにか、馬豹の触れてはいけない部分をさわってしまったのでは、と危惧した。


「なぁ百鈴──。まだ辞めたいのか?」


──!?

 馬豹は歩きながら続ける。

「驚くことはないさ。ここに来た奴は大概そうだ。一般兵なら基礎訓練後だから、それ程でもないかも知れんが──。お前のような学校出なら、二年も修練したあげくに輜重隊じゃ、やってられないだろ」

 百鈴は返答に(きゅう)した。

 それでも何か言わねばと思い。

「私は、前衛の部隊で活躍することを夢見ていました」

 ひりだすように言葉にした。

「だろうな──。でなければ、大したことないなどとは思えんさ。賊徒ではなく、正規の軍人を倒す事を考えているのだから」

 馬豹は続ける。

「袁勝大尉の元にいれば、レベルは上がるかも知れない。でも輜重隊の任務は、自分の思っていた軍人の姿とはかけ離れている。このまま続けようか、別の道を探そうか・・」

 百鈴は得体の知れぬ汗が(にじ)んだ。

 それ程に自分の態度は雄弁だったであろうかと、百鈴に自問させる馬豹の言葉だった。


 しばし沈黙が続いた。

 百鈴は気後れする自分を叱咤(しった)し、なんとか言葉を出そうとした。

 それをわかってか、知らずか、馬豹はタイミングよく。

「で──、どうするんだ?」

 立ち止まり、百鈴の目を見て聞いた。

 そこには、あの獣のような眼光はなく。

 百鈴は。

──そんな優しい目も出来るんじゃない。

 と、不思議な気持ちになった。

 それで、どこか余分な力が抜けたのか。

「わかりません。でも、もう少し続けてもいいかと思ってもいます。今は、まだ、自分でも曖昧なんです」

 考えていたよりも、すうっと声が出た。

 馬豹は聞くと。

「それならそうと早く言え。もったいぶりおって──、生意気だぞ」

 言ってニヤリとした。

 これに百鈴も。

「行儀良くしなくてイイと言われましたので」

 と、ことさら小生意気に返した。


 馬豹はフンッと鼻を鳴らすと。

「行くぞ」

 と、また歩き出した。

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