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無双xロジスティクス ~落ちこぼれ部隊?いいえ、最強実践部隊です~  作者: テンチョウ
第三章 ~盤面の将、兵の影絵~

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第54話 邂逅

 方倹たちが森で狩りをしているころ。

 馬豹と百鈴は、少し離れた草原で騎馬の修練を積んでいた。



〔 威馬進燕(イバシンエン) 〕



 二騎が()ち合う寸前に、馬豹が斜めに飛び出してスキルを使う。

 互いに右構えの状態であるから、馬豹から見て百鈴は右前方に位置したが、スキルを使い滑るように一回転することで相手の左側を取る形となった。

 そしてそのまま馳せ違う二騎──。


 その後も二人は幾つかの場面を想定し、その時々の対処を考えて動きを確認した。



 一通り終えたところで。

「流石曹長。もう応用技を使ってくるとは思いませんでしたよ」

 百鈴が言うが。

「お前だって左の逆手で剣を抜いていただろう。初見で対応してくるとは生意気な奴だ」

 馬豹は()えた目で返す。

「お褒め頂いて光栄です」

 百鈴はわざとらしく礼をする。

「フンッ──」

 馬豹は鼻を鳴らしてから。

「帰るぞ」

 と、言った。





──こんなときに狩りとはな。

 崔姜(サイキョウ)はあきれていた。

 萩淮(シュウワイ)の事だ。

 国軍が戦時体制に移行し、当然、四軍閥もそれに備えているわけだが。萩家軍当主の萩淮は、軍事的な部分を全て武官に丸投げして、自分は親衛隊と共に森へ狩りに出かけていた。

──何のための親衛隊なのか?

 親衛隊が、言うまでもなく護衛役だ。だが、なにぶん新設の部隊であり、萩家の属する家々の若人(わこうど)を集めたため、経験不足も否めないところがあった。そこで、崔姜他数人が率いるそれぞれの部隊が、周囲を警戒しているという二度手間のような状態になっていた。


「報告します。この先で、国軍と思われる軍装の二騎が何やら模擬戦をしているようです」

 周囲を偵察に出ていた者が報知した。

「模擬戦? 二騎でか? このような場所に国軍がいるのか・・」

 崔姜には心当たりがなかった。

「二騎がいたところで何もないとは思うが、一応見に行ってみよう」

 彼女は部隊を報告のあった方へ進ませた。




 崔姜たちが件の二騎の所へ着くと、確かに槍をもって馳せ違うことを繰り返していた。

 遠目からでもなかなか良い動きだったが、ほどなく終わってしまった。

 崔姜は、若干の物足りなさを感じたが、それは臆面も出さず。

「とりあえず話だけでも聞いておくか」

 と、帰還しようとする二人に近づいて行った。


 二騎も崔姜の部隊に気付いたのか、歩みを止めて待っていた。


「ほぉ──、これは・・」

 崔姜が最初に注目したのは馬だ。

 並の軍馬では追い(すが)ることすら叶わぬ駿馬(しゅんめ)であるとわかった。これほどの馬は、過去、顔家軍との訓練で見た、彼らの驃騎(ひょうき)兵の馬以来であった。



 顔家軍は、他の軍閥と違い(ゆう)は持たず、九門の近くで商売しながら軍を維持しているという者達だった。彼らは総勢四百ほどの組織でしかなかったが、軍は全て騎馬隊で、そのうち精鋭の五十騎は驃騎兵と呼ばれ、全員が騎馬のスキルを持ち、騏驥(きき)を操る者だった。

 崔姜は先代のときに、萩家軍の精鋭として訓練に参加したことがあり、そのときことは良く覚えていた。



──どんな者が乗っているのか?

 名馬であれば、乗り手も気になるというもの。

 崔姜がそのように思って見てみると──、忘れもしない、あの褐色の強者(つわもの)ではないか。そしてその隣は、崔姜でさえも憧れるほどの立ち合いをしていた若い女。

──こんな所であうとは。

 崔姜は、この遭逢(そうほう)に運命めいたものを感じていた。

 それは相手も同じだったか。

「萩家軍の方でしたか」

 そのように言葉にした。

「ああ──。そちらは何かの任務かな?」

 崔姜も返す。

「いえ──。少し時間ができたので、後輩と鍛錬していただけです」

「なるほど。貴公が先達ならば、あれほどに成長するというわけですか」

「さぁ──。それはなんとも・・」

 別段、謙遜しているという雰囲気でもない。であるなら、若い女の力を、この強者も相当に評価しているという事だろうか。


──いや。そんな事はどうでもよい。

 崔姜は、この機会を逃せば、二度と巡り会うことはないかも知れないと考えた。

 彼女が長らく持っていた渇望を潤すには、この時を()いてない。

「どうであろう。まだ時間があるのなら、私と一席、手合わせして頂けぬか?」

──本気か、私は!?

 言った後から、崔姜は己の言葉を聞いて驚いた。

 二度目であるが、実質、初対面の相手である。よく考えたら名前も知らないではないか。立ち合いを頼むにしても、順序を曲げている気がする。ぶしつけにも程があると、我が事ながら崔姜は思った。

 ところが相手は。

「構いませんが、その斧槍を(つか)われるのですか?」

 と、聞いてきた。

「いや──、流石にこれは危ないのでな。剣で、ごく普通にと考えている」

「いいでしょう」

 言って、女は馬から下りた。

 崔姜も同じく下馬する。



──知り合いなのかな?

 そう思ったのは百鈴だけではない。萩家軍の兵達も似たような事を考えた。ただ、その割には馬豹が、崔姜のことを萩家軍であると初めて知った風なので、どのような関係なのか不思議だった。

 ()りとて、知り合いでもなければ、出会ったついでに立ち合いなどしないだろうと、あまり深く考えることはなかった。

「合図は要りますか?」

 一応、百鈴は聞いた。

「いらん」

 馬豹が短く応える。相手も同意のようだ。


 両者は互いに剣を抜き、軽く構える動作をすると、スッと同時に動いた。

 そして──。



〔 針立雷(ハリタテイカズチ) 〕



 崔姜はスキルを使い一気に斬り込む。

 馬豹は辛うじてそれを()なし、すぐさま低い体勢からの突きを放つ。崔姜はそれに剣をあわせてギリギリで(かわ)す。そしてすかさず──。



〔 針立雷 〕



 またスキルを使う。

 崔姜の〔針立雷〕は、ほんの一瞬、力を増すだけの弱く単純なスキルだ。しかしながら、その僅かな効果ゆえにインターバルは短く、出し惜しみなく立て続けに使用できるというメリットがあった。


 踏み込みながら大胆に袈裟懸(けさが)けに振り下ろす崔姜。

 馬豹はそれに向かっていく動作をとりつつも、腕を縮めて斬撃を受け止める。だが、攻撃が重いのか体勢が崩れる。

 崔姜はそれを見逃さず強引にねじりに行き、またしてもスキルをつかう。

 が、今度は馬豹はその力を逆用し、崔姜の攻撃を大きく往なす。馬豹は相手の、やや前のめりの姿勢になったところに剣を向かわせるが、崔姜はバッと転がるようにして距離をとった。

 馬豹もそれには食いつかない。崔姜が再びスキルを使うと読んでいるのだ。

 それで二人は(しば)し膠着したが、またスッと動いてから剣をあわせた。

 大ぶりの豪快な崔姜の攻めを、馬豹が最小で受け流す。生じた(かす)かな隙を馬豹が突くが、崔姜はスキルで強引に反攻する。

 全体的な技術に於いては馬豹に()がありそうだったが、崔姜はスキルを巧く使って立て直しつつも強烈に仕掛ける。それを往なし、反撃し、相殺され、また受け流す。

 両者の戦いは、一進一退を繰り返す歩兵隊同士の合戦のようでもあった。

 しかし徐々にだが、馬豹の方がほんの少しずつ優勢になってきた。崔姜の動きに疲れが出てきたのだ。これはスキルを使い続けた結果であったが、崔姜自身これほどの頻度で使ったことがかつてなく、スキル特有のものなのか単に肉体的な負担による疲労なのかは、判然としなかった。

 それでも、勝敗を決するまでの差は生まれず。二人の動きは再度膠着へと至った。

 双方は剣を構えたまま乱れた息を整え、それが落ち着いたとき、どちらからともなく剣を鞘に収めた。



「ハハッ──。やはり強いな、思った通りだ」

 崔姜が言う。

「まぁ──、剣ならばというところでしょう。貴方が遣う斧槍は、これの比ではありますまい」

 馬豹の言葉に。

「それを言うなら、貴公の槍もそうではないですか」

 崔姜が返す。

「さぁ──」

 馬豹は息を吐くように弱く言うと。

「私達はそろそろ隊に戻らねばなりませんので──」

 と、素早く騎乗した。


 崔姜はそんな馬豹に。

「今更過ぎて申し訳ないが──、崔姜という」

「馬豹です」

 馬豹は返すと百鈴の方をじっと見た。


 百鈴は当惑の表情を浮かべていたが、ハッと気付いて。

「ひゃ、百鈴です」

 と、名乗った。

「では、失礼します」

 馬豹が言って、二騎はあっという間に駆け去った。



 崔姜は二人の背中をしばらく見ていた。そこに──。

「お知り合いではなかったのですか?」

 兵が疑問を呈した。

「あー。知ってはいたさ」

 崔姜はそう応えたあと。

──どこの部隊か聞くのを忘れたな。

 思ったが。

──きっと、どこかの騎馬隊が野営訓練でもしてたのだろう。

 そのように考え、それ以上、二人の所属を気にすることはなかった。


 崔姜の頭の中には、馬豹と百鈴、どうすれば彼女たちと、また立ち合えるか。そればかりがあった。

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