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無双xロジスティクス ~落ちこぼれ部隊?いいえ、最強実践部隊です~  作者: テンチョウ
第三章 ~盤面の将、兵の影絵~

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第52話 驚嘆!?

 国軍は戦時体制をとる事を決定した。

 (ライ)国が本格的な侵攻を準備しているからだ。

 これまでも小競り合いや、防衛部隊が奇襲を受けるといったことはあったが、今度は正面切っての大軍同士の戦いになりそうだと見込まれた。

 国軍全体が緊張を持つ雰囲気は、自然と伝播し、国全体にまで及んだ。


 さはさりながら、兵站部運搬科の仕事はあまり変わらない。

 馗国は常に物を動かし金を回す国である。

 それは戦時下であっても同じであり、文字通り、雨が降ろうが槍が降ろうが荷車を押すのだ。




 この日、第三輜重隊は九門で積んだ荷物を、北東の文国との国境へ運んでいた。

 国を(おお)う、きな臭い空気に誘われたのか、国境近くで賊があらわれた。

 毎度のことのようだが、百鈴は久し振りに緊張した。

 なぜなら、賊の方が寡兵(かへい)だったからだ。


 第三隊の強さは、多数に対して強くなる袁勝のスキルによるところが大きい。だから、その補正が期待できない分、いつもより厳しいと考えた。

 また、少数をもって攻めようというからには、賊もそれなりに腕に覚えがあると推測でき、それも百鈴の警戒心を高めた。

 それは馬豹も同じだったのか。

「百鈴、油断するな」

 そう短く言った。


「一班二班は俺と、三四は馬豹、五六は百鈴に付け。三小隊での連携でいく」

 袁勝は淡々と指示する。

 彼の用兵の根幹をなしているのはスキルがなくとも戦える軍という考えであり、当然の事ながら、己のスキルが封じされる事も想定している。

 袁勝は、大勢を相手にすることに慣れた隊員たちの状況を鑑み、あえて部分的に寡兵になることで感覚のズレを最小限に抑えようとしたのだ。

「百鈴たちが先陣で当たれ、敵は出端(でばな)を叩きに来るぞ気を付けろ」

「了解!!」

 百鈴は気合いたっぷりで返す。


 ここで隊員たちの何人かは、先駆けが馬豹ではないことを意外に感じていた。

 以前、百鈴が務めたときは、そのあとに馬豹が隊の半数を指揮する展開であったから、理解はできた。だが今回は三者による指揮であるから、機先を制する意味で、馬豹の方が適任ではないかと思ったのだ。

 ほどなくして、彼らは疑義の答えを知る──。



 互いに喊声(かんせい)を上げ、二つの勢力がぶつかろうとする。

 賊の先頭、三騎が歩兵を引き連れる形で迫ってくる。それに向かい合う百鈴率いる小隊。

 すると不意に賊の一騎が飛び出した。

──騎馬のスキル!

 瞬時にして敵は眼前に攻め寄せた。

「あっ!」

 誰かが思わず声に出した。これは輜重隊の多くにとって慮外の動きだった。

 だが──。

 百鈴はその短く持った槍を即座に持ち替えると、騎馬に向かって投げ()った。

 これは相手の意表を突いた。

 そしてその対処の間に、百鈴は馬ごと体当たりするが如く肉薄し、次の刹那には敵の首を撥ね飛ばした。続けてくる二騎には攻撃を()なしつつ、一人は腕を斬り、もう一人は剣を突き刺して絶命させた。

 その寸劇は、賊に自分たちの見込み違いを認識させるには十分な絵であった。


 僅かに生じた逡巡(しゅんじゅん)を見逃す第三輜重隊ではない。

 袁勝、馬豹に率いられた二隊が、ややタイミングをずらす形で攻め掛け、その間に百鈴たちが回り込み賊の背後を突き、それで敵は完全に崩れた。

 時を待たずして賊たちは潰走に至り、例によって隊員たちはそれに烈火の勢いで襲いかかる。ほとんどを討ったが、一騎、逃げの可能性を捨てた者がいて、誰かを冥府へ道連れにしようと目論んだ。

 その者は、馬豹がスキルを使った直後を狙って彼女の背後を取った。分の悪い相手であっても、背後からの捨て身の攻撃なら一念(いちねん)を通せると考えたのだ。

 百鈴はすぐにフォローに行こうとしたが、なぜか馬豹は味方から遠ざかるように駆けた。

 賊の馬も、馬術も相当なのか、馬豹をして振り切れないかに思われた。

 そのとき。



〔 威馬進燕(イバシンエン) 〕



 馬豹が一瞬、加速したと思ったら、馬が地面を滑るように急旋回して賊と正面から向き合う格好になった。そしてすぐさま馳せ違い、次の瞬間には、ただ空馬が駆け去るのみだった。




「軍曹、見事な判断だった」

 袁勝が百鈴を(たた)えた。

 彼は賊が何かを仕掛けてくることを予見していた。

 百鈴は常に臨機応変の戦いをする者であったから、袁勝は彼女なら、敵の不意打ちにも(うま)く対応するだろうと考えたのだ。

──槍を投げるとは思わなかった・・

 そして実際その通りになったが、百鈴の対処は敵ばかりでなく、味方の意想も超えるものだった。

 驚きで言えば、もう一人。

「馬豹。あれは新たなスキルか?」

 袁勝は聞いた。

 馬豹は緊張した面持ちで。

「はい。すみません、戦闘中に得たようで──。危険かと思ったのですが、実戦で試したい欲が勝ち、使ってしまいました・・」

 そのように言った。

 彼女は、自らの行いを振り返り、反省するところがあるようだ。

「うむ──。まぁ難しいところだ。礼国のこともあるし、曹長が(はや)るのもわからんではない。俺も動きを見れて良かった。今後の指揮の幅が広がる」

「はっ。おそれいります」

「方向を即座に変える騎馬のスキル。という認識で構わんな?」

「はい。ご明察の通りです」

 言った馬豹は、尚も張り詰めた表情であった。


 そこに──。

「いやいやいや・・ ちょっと待って下さいよ」

 と、百鈴。

「新しいスキルって? 曹長、それってレベル20になったって事ですか!?」

「まぁ──、そうなる」

 目を丸くして言う百鈴に、馬豹も気まずく返す。

「おかしい!」

 百鈴としては、どうして馬豹ばかりという心境だ。

「いや、おかしくはない・・」

 馬豹も、百鈴の気持ちがわかるだけに、あまり強くは返さない。

「理不尽だ!!」

 百鈴は大きな声で言った。



 この後も、百鈴は変だの、おかしいだの言い続け、馬豹を困らせた。

 隊員たちは、馬豹が百鈴に絡まれるという、普段見られない状況を楽しんだが、二人に配慮してその心中を表に出すことは控えた。

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