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無双xロジスティクス ~落ちこぼれ部隊?いいえ、最強実践部隊です~  作者: テンチョウ
第三章 ~盤面の将、兵の影絵~

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第50話 心証

土産(みやげ)が届いているぞ」

 馬豹が言った。

 なんの比喩(ひゆ)かと思ったら、文字通り百鈴が孟国に置いてきた土産物だった。

「これどうしたんですか?」

「どうもこうも──、そんなの送ってくる人間は限られてるだろうが」

 百鈴の問いにあきれた様に答える馬豹。

 輸送基地を管理し、百鈴たち第三輜重隊の素性を知る人物。

「王女様が!? 私のために態態(わざわざ)!」

 百鈴が感動しかけてるところに。

「あー、態態ではないな。どちらかと言えば、事のついでだろう」

 そう言うと、付いてこいと百鈴を外に(いざな)った。



 二人が馬屋に行くと、そこには孟国で乗っていた駿馬(しゅんめ)がいた。


「馬を届けてくれたんだ」

 百鈴が言うと。

「ああ──。まぁ、これもついでの一つだろうがな」

 馬豹が応じる。

 じゃあ何がメインなのかと百鈴が目で訴えると。

「待ち伏せされていた件についてだ」

 言って馬豹は続ける。

「情報漏洩は間違いない。で、その入手経路だが、死んだ太子の所に馗国から手紙が届いていたらしく、それに輸送計画が書かれていたようだ。ここで問題なのは、その手紙に使われていた状袋が、国軍の物だったというんだ」

 ここまで言って、百鈴にも、馬豹が馬屋に連れてきた理由がわかった。

 人が出入りする兵営では、いつぞやの百鈴みたく立ち聞きされる可能性を考慮したのだろう。

「それって間諜とは違いますよね? なんだろう、味方を売るみたいな感じですね」

「ああ。本営が事務所荒しにあったときに、情報を抜かれたと考えられている」

「犯人はわからずじまいのやつですね」

「そうだ。だが今回、実際の手紙が届けられたみたいだから、そこから探れないかという動きになってるらしい」

「だとすると──。そのお手紙が主役で送られてきたって事ですか」

「そういうことだ」

 なるほどと納得した百鈴だったが、馬はともかく、土産まで届けてくれるのは、やはり雍白(ヨウハク)なりの思いやりだろうと解釈した。


「今にして思うと、意外にイイ人でしたね」

 百鈴が言う。雍白のことだ。


 馬豹としては、いささか賛同しかねる意見だった。

 彼女は、太子が殺された件は勿論、その前の周国軍との戦闘に関すること、(さかのぼ)って二派の対立構造からして、どこか()に落ちない感覚がしていた。

 最終的に太子派は我田引水の徒とされたが、実際、雍白派も交易を独占するという真似をしているわけで、そこにはそれなりの金が落ちたと、馬豹は見ていた。

 馬豹も、雍白は真実国を(おも)う者であったと考える。

 だが同時に、名状しがたい酷薄さを感じるところもあり、それも王族という生き物の姿であると割り切っても、正直、好きにはなれなかった。


 ()りとて、あえて百鈴の雍白像を壊す必要もないと。

「かもな──」

 とだけ返した。





──また、あの女といるのか。

 遠目から萩淮(シュウワイ)を見て、崔姜(サイキョウ)は思った。

 別段、彼が誰といちゃつこうが知ったことではなかったが──。

 崔姜は、あの笑わない女、泡易(ホウエキ)に対して言いようのない嫌悪感を感じていた。

 理由を考えても、何がどうしてかはわからず、崔姜はまるで自分が悋気(りんき)を起こしているみたいで、それもまた不快であった。


 不快ついでをいえば、いつの頃からか萩淮の側に(はべ)るようになった居攸(キョユウ)という男からも、説明できない(いや)さを崔姜は感じていた。


 その居攸の発案らしいが、萩淮の親衛隊をつくるのだという。

 まぁそれ自体は好きにすれば良いという気がするが、崔姜が引っかかるのは、その隊員は萩家に仕える武官の子供らで構成するという点である。

 無論、子供といっても童子のことではない。次代の家を継ぐ者だったり、その候補である者達のことだ。

 彼らが集められるのは、同じく萩家に仕える者達として、より親睦を深める機会を設けるという事になっていた。

──家どうしの結束を高めるのは結構だが・・

 これにも崔姜は、言葉にできない違和感があった。



 崔姜としては、気に入らぬ事が多かったが、彼女はどこか、それも自分のせいではないかと感じているところがあった。


 彼女は幼き頃より武芸に秀でており、それを買われて、同じく幼い萩淮の稽古相手を務めていた。

 大人たちは、二人が切磋し合って成長する様を期待したのだろうが、実際はそのように素敵なことにはならず、崔姜の圧倒的な才能の前に萩淮が劣等感を感じる日々が訪れた。

 もちろん崔姜とて、自慢気に振る舞ったりしたわけではない。萩淮に合わせて、彼の成長を助けるべく、適宜努力した。

 しかしどういうわけか、(かえ)って萩淮は卑屈になり、仕舞いには稽古をサボるようになってしまった。


 振り返ってみると、萩淮が人を遠ざけるようになった、最初の切っ掛けが自分なのではないか。

 崔姜はそんな事を考えていたのだ。



 こんな事が頭に浮かぶのは、先日、九門の国軍を訪ねた折。

 練兵場にて、若い二人の立ち合いを見たからだろうと、崔姜は結論づけた。


 静と動、質と文、剛と柔、何とたとえたものか、正反対の性質をもつ二つの才能が互いに研磨し高め合う姿は、崔姜をして憧憬(しょうけい)(いだ)かざるを得ない輝きがあった。

 そして自分と似たような事を考えている者も見た──。

 褐色の肌に獣のような瞳をもった女。

 一見して、これは自分に比肩する力があると崔姜は悟った。彼女は思わず。

──立ち合いに誘おうか・・

 とも考えたぐらいであった。


 崔姜は萩家軍最強の兵であったため、満足な稽古相手もおらず、やや()んでいたのだ。



 崔姜は、名も知れぬ強者との立ち合いを想像し、(しば)し間、自らの屈託を慰めた。

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