表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無双xロジスティクス ~落ちこぼれ部隊?いいえ、最強実践部隊です~  作者: テンチョウ
第三章 ~盤面の将、兵の影絵~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/103

第48話 伯仲

──また強くなったか!?

 熊収(ユウシュウ)は思った。

 鋭い突きが向かってくる。

──これはフェイントだ。

 熊収の回避を誘って、踏み込みながらの強烈な振り下ろしが来る。

 彼女は咄嗟(とっさ)に膝の力を抜いて重心を前に移動させる。その僅かな勢いを利用して逆に間合いを詰め、斬撃が十割になる前に止めに行く。

 カンッ──と、木剣が打ち合う良い音が響く。

 そのまま互いに押し合う膠着(こうちゃく)状態に移る。

──ここで流れを変える!



〔 錠除利剣(ジョウジョリケン) 〕



 肢体のリミッターを外し潜在能力を最大限に引き出す、熊収のスキルだ。

「ハァァァア!」

 気合いと共に強引に前に出る。

──崩れた。

 熊収は隙を見逃さず、低めの姿勢からの斬り上げを狙う。しかしその攻撃は巧く合わされ、紙一重で()なされてしまう。いや、実際は些些(ささ)ほどに(かす)っているので、髪一本のギリギリだ。

 すかさず攻めに転ずる姿勢に。

──攻撃ごと粉砕する!

 打ち返すのではなく弾き飛ばし、そのまま倒す、そういう反撃を熊収は放った。

 が──。

 サッと身を引かれて間合いは大きく開き、熊収の攻撃は不発に終わった。

──またフェイントか・・

 攻めに見せかけた、逃げるための予備動作だった。

 熊収は、生じた距離は自分から縮めるしかないと理解した。現状はスキルが切れるのと、そのあとのインターバルを待たれている格好だ。

 当然、熊収も詰めるが、やはりその分だけ距離を取られ、また膠着へと戻った。


 スキルが切れた。

 こうなると逆に熊収の方が時間を稼ぎに行きたくなるが、それは思う壺だと知っている。守勢は通じないのは百も承知なのだ。

 息を合わせたように、二つの影が()ち合う。

 カンッ、カンッ、カンッ──。

 激しく打ち合い小気味良く音が鳴る、真剣ならば火花が出ていそうだ。

 熊収は側面を取りに行く、横への動きは彼女の方に()がある。だがそれにも回転の動きで対応され、決め手にはならなかった。


 その後、数度にわたって打ち込み合ったが、勝敗はつかなかった。




 疲れ果てて同時に座り込むと、遠くから拍手が聞こえた。いつの間にかギャラリーがいた。

 ヤジなどなかったから、行儀良く見ていたようだ。

──軍人の分別かな。

 熊収は息を整えながら、そんな事を考えた。

「流石、百鈴──。スキルを使えばと思っていたけど、崩しきれなかったわ」

「そこは滅茶苦茶、警戒してるからね。熊収の早さも流石だったから、小細工して誤魔化した」

 熊収の賛辞に百鈴はそう返した。



 百鈴は小細工と称したが、それこそが彼女の戦い方だった。様々に工夫を凝らして相手の虚を突く、型にはまらない変幻自在、千変万化の剣、それが百鈴だと熊収は見ていた。

 対する熊収は、自分の剣をしっかりと定め、その一つ一つを徹底的に磨き上げる、質実剛健、剛毅木訥(ぼくとつ)といった感じのものだった。

 剣の違いは性情(せいじょう)の違いを表しているようで──。

 何事にも当たり障りなく、争いを好まない熊収に対して。

 百鈴は好き嫌いが分かり易く、何気に好戦的なところがある人間だった。



 最初、熊収にとって百鈴は、その他多くの友の中の一人でしかなかった。しかし彼女は、熊収と立ち合う(たび)に強くなり、やがて一本取るようになった。

 剣を交え感じたのは、色んな者の技を吸収しているという事だった。

 普通、技というものは、安易に真似れば自分を見失う(おそれ)のあるものだった。人によって筋肉にクセがあると考えられていて、合わぬ動きは怪我の元だったり、もともとのクセを壊してしまう可能性があった。だからこそ自分の剣という概念が存在したのだが、百鈴はそれに反抗するように色んな技を真似た。

 その是非はわからないが、結果として、百鈴は熊収と互角の戦いをするようになった。

 このときより、このチグハグな友に熊収は興味を持った。


 後に二人の関係は、互いに切磋琢磨し自他共に認めるライバルへと進化した。



 孟国から戻った百鈴は、十日間の休みを経て職務に戻ったが、ここ数日は輜重隊としての任務もなく、ずっと書類仕事に忙殺されていた。

 それを知った熊収が気分転換にと百鈴を誘い、練兵場にて立ち合いをしていたのだ。


「でも、双剣の百鈴の全力を見れなくて残念」

 熊収はそう声を掛ける。

「だから、違うって──」

 百鈴は困ったように返す。

 いつの間にか『双剣』なる二つ名が生じており、腕に覚えのある者の間では、ちょっとした噂になっていたのだ。これはおそらく、百鈴が槍と剣を持って戦ってるのを見た者が語ったものに、尾ひれがついたり消えたりしながらできた話だと思われ。百鈴としては第十一輜重隊の連中が怪しいと(にら)んでいた。

「私、剣二本持ちはしたことないから」

 百鈴が否定するが。

「槍と一緒に持つより、現実的だと思うけど」

 と、熊収に言われてしまう。

「いや、馬上の話だし、それにいつもやってるわけじゃないからね」

 百鈴は、多数を相手にするため、手数を増やそうとしたらそうなっただけだと思っている。別段、二刀流が優れているとも考えていないのだ。これも彼女の()()()()()()剣であった。

「百鈴、たまにでも普通はやらないからね」

 熊収は言って笑った。

 その笑顔に百鈴も釣られて笑い、熊収の思惑通り、煮詰まった神経をリフレッシュさせた。




 馬豹は本営からの帰りに、練兵場に人だかりができている見つけて、何事であろうかと覗いてみた。

 すると百鈴が、誰かと激しく木剣で打ち合っていた。

 一瞬、また喧嘩でもしてるのかと思ったが、両者はどこか楽しげでもあったので、友人との(たわむ)れだと判断した。

 相手の女も百鈴に負けず、なかなかの猛者で、派手さはないが、どれもこれも洗練された動きをしていた。百鈴が動なら、女は静といったふうに見えた。

 馬豹は二人の才能を、どこか羨ましさをもって見ていたのだが。

 ふと、自分と同じような気配を感じて、視線をそちらへ向けた。


 それは向こうも同じだったようで、すぐに馬豹の存在に気付いた。

 知らぬ者同士であったが、互いが互いに、只者ではないとの認識を持った。

 国軍とは違う軍装をした女だった。

 どちらからともなく会釈をし、以降は視線を合わせる事はなかった。


 百鈴たちの立ち合いが終わり、気付くと、女はいなくなっていた。

──軍閥の者とは思うが・・

 馬豹も、そちらの方の情報はよく知らなかった。


 ハハハッ──。

 百鈴たちの笑い声が聞こえる。

「ところであいつは、仕事を終わらせたんだろうな?」

 馬豹は()えた目で後輩を見つめながら、独り呟いた。


 百鈴は何の警戒心もなく、無邪気に笑っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ