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無双xロジスティクス ~落ちこぼれ部隊?いいえ、最強実践部隊です~  作者: テンチョウ
第三章 ~盤面の将、兵の影絵~

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第46話 そぞろ

 実戦の機会が欲しかった。

 鉤鎌槍(こうれんそう)を振りながら、呼延吹(コエンスイ)は思望する。

 袁家軍との戦い以来、彼女が戦場に出ることはなかった。



 馗国から帰還した呼延吹に与えられた罰は、(かわや)の清掃だった。

 てっきり降格や謹慎といったものを想像していた彼女だったから、この処分には驚いた。それは呼延吹に近侍していた者にとっても同じで、彼らはこの処分はおかしいとして、撤回、変更を求めた。

 その事で呼延吹は、母である(キョウ)太后に呼び出され。

「あなたのお付きが何やら抗議をしているようですね──。見苦しいのでやめさせない。聞かぬなら、暇を出しなさい。これ以上は王家の恥となると、あなたも自覚することです。軍の規律を乱し、その罰も受け入れぬ、それが王族の姿と我が国の将兵に思わせる気ですか!」

 そのように言われた。

 冗談でも間違いでもないことは、それでよくわかった。


 汚物を()み取り、肥溜(こえだ)めまで運ぶ。

 臭いや、重労働という部分は勿論あったが、それは苦痛の範囲であったため、我慢することはできた。

 しかし、肥に(たか)ってくる虫と、それを捕食する虫やら何やらには、不快感、嫌悪感が酷く。ものによっては恐怖すら感じる始末だった。

 剣だろうと槍だろうと恐れぬ呼延吹だったが、小さな体躯の虫たちに感じるそれは如何(いかん)ともしがたく、何がそうさせるのかと不思議でもあった。

 そしてしみじみと。

──私にとって、これ以上の罰はない。

 そう思った。



 兄、呼延枹(コエンホウ)の軍を引き継ぎ、特佐となった于鏡(ウキョウ)の補佐を受けながら、呼延吹は兵を鍛えた。

 騎馬百、歩兵四百の軍。

 馬が足りぬゆえ、まだ完成には至っていないが、人員は固まった。

 訓練、模擬戦は続けているが、やはり実戦でどれくらい動けるのか、またそれを経験することで軍がどのような変化を見せるのか、気になるところだった。


 他に呼延吹自身のこともあった。

 彼女は現在レベル19。レベル20になれば新たにスキルを獲得できる──。

 本当は二つ目のスキルを得たときを20と定めているので、話が逆なのだが、理解が容易(たやす)いので一般的な言い方だった。

 20まで到達できる者は千人に一人と()われ、なかなかに貴重な存在だった。

 そこに、あと少しで届きそうなのだ。

 レベルが上がる基準はわからない。

 訓練してもしなくても、上がる者は上がるし、上がらない者は上がらない、そういうものだった。それは実戦に()いても同じで、経験の有無が成長に直結しないと知られていた。

 それでも呼延吹は実戦を欲した。

 彼女は袁家軍との戦闘を経て、現在のレベルに至ったのだ。だから、自分には実戦が適しているのだろうと呼延吹は考えた。



 強い軍を育て、自身も更に成長することを願う呼延吹。

 彼女を突き動かすのは、馗国軍の少数部隊。彼らの存在だ。


 あと少しで袁家軍を全滅させられるというときに現れ、最終的に袁家当主の兜も取られてしまった。

 極めて精強な者達。

 その中でも、呼延吹に一太刀あびせた女。

 槍と剣を(たく)みに(つか)い、呼延吹の反撃スキルも通じなかった。今にして思えば、あの両手に武器を持つこと自体が、あの女のスキルなのかも知れない。


──あれに勝つためには!

 呼延吹は彼らを倒すための、精強な軍と、強力な攻撃スキルを希求ききゅうしていた。




 そんな折、国の東側で文国との小競り合いが発生した。

 これまでも何かにつけてぶつかることの多かった国だが、ここしばらくは内乱が起きていたため、文国が此方(こちら)に矛を向けることはなかった。今は乱も治まり、外に対して軍を動かす余裕ができたのかも知れない。

 なんにせよ。

 これは呼延吹と彼女の軍にとって、またとない出陣のチャンスでもあった。

「特佐殿。私はこの機に軍を動かしたく思います。しかし勝手な真似はもうできません。なんとか私達が参加することは叶いませんか?」

 于鏡に頼み、彼は本営と交渉し、出撃の許可を取り付けてきた。

 呼延吹自身が出向けば話が早いのだが、王族のそれで押し通すやり方は控えたかった。喬太后の言葉ではないが、将兵にどう思われるかは常に考えなければならない事だと、呼延吹も理解するようになった。


「今回は七十騎と歩兵三百五十で編制したいと思います」

 于鏡が言う。

「はい、いいと思います。その選抜は新兵を含んだものですか?」

 呼延吹は確認した。

「はい。新兵を全て組み入れたものです」

「聞くところによると、新兵の中には文国出身の者もいるとか。その辺りは大丈夫なのでしょうか」

 裏切るとまではゆかずとも、同郷の者と戦うのを忌避(きひ)するのではないかと思ったのだ。

「ご懸念には及びません。彼らは乱によって居場所をなくした者達です。そこに恨みがあるかどうかはわかりませんが、少なくとも手心を加えることはないでしょう。(オウ)国と文国の戦いは昔からのこと、この国で兵に志願した以上、(はな)から覚悟はできているはずです」

 于鏡はそう返した。

「わかりました。出発は?」

「明朝、日の出と共にと考えております」

 呼延吹は頷くと。

「了解しました。特佐殿も、今日は早めに切り上げて休んで下さい」

 そう言った。

「はっ!」

 于鏡は短く返し、一礼して退出した。



 于鏡に休むよう促した呼延吹だったが、気持ちが高ぶって、自分はなかなか寝付けなかった。

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