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無双xロジスティクス ~落ちこぼれ部隊?いいえ、最強実践部隊です~  作者: テンチョウ
第二章 ~敷く擬石、咲く造花~

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第42話 漠漠

 第十一輜重隊は西の街、兌門(ダモン)に着いた。


 ここに立ち寄ることは予定になかったが、軍営には報告せねばならない。併せて、追加で増えた荷物を引き取ってもらうという目的もあった。

「少尉、ここは任せた。終わったら先に宿舎へ行って休んで構わない」

 隊長は、鹵獲品その他の手続きを副官にゆだねて、自分は兵站部の事務所に向かった。




「待ち伏せされていただと!?」

 報告を受けた少佐は驚いていた。

「はい。我々と第三隊、双方の背後に三百ずつです。状況から考えて、集合地点を知った上で、あらかじめ兵を伏していた。そして、両隊が揃うまで待っていた。袁勝大尉はそう言っておりました。私も同意するところであります」

 隊長はそう返した。

「まさか、本営の事務所が荒らされた事と関係があるのか・・」

 少佐は腕組みをして考え込む。


 これまでは、情報漏洩(ろうえい)に起因すると(おぼ)しき事件や被害は出ていなかった。だから、これがその第一号に該当する襲撃だとすれば、事務所荒らしの犯人は、孟国の太子派に(くみ)する者である可能性が高い。

 普通に考えてそれは、軍関係者に外国の諜報員か、その者に密接に関わる人物がいることを指し示しているだろう。

 少佐は、孟国との所縁の方向から、犯人捜しをした方が良いかも知れないと考え始めた。


「わかった──。こちらから早馬を出し、本営にも連絡しよう」

「はい。私の報告は以上です」

「うむ──。大変な目にあって疲れも溜まっているだろう。今日はよく休みなさい」

「はい。既に隊員たちには休息の指示を出しています」

「的確な判断だ」

「ありがとうございます。では、私はこれで──」

 十一隊の隊長は言って、そのまま退室しようとしたが──。


 入り口で振り返って。

「少佐。ひとつ質問を宜しいでしょうか?」

「ん? 許可する──」

「第三輜重隊は──、あの強さは何なのですか?」

 そう尋ねた。

 少佐は困ったように顔をしかめると。

「あまり他言してもらいたくはないが、一応、袁勝のスキルという事になっている」

「スキルですか」

「ああ。敵に対して寡兵であれば力が増すのだという。範囲は五十人ほどらしいが、奴の部隊はそのスキルの影響で強く戦える」

「なるほど──、そのようなスキルがあるのですね・・ ですが、一応とは?」

「見てどう思った?」

 逆に少佐は問うた。

「極めて精強だと」

「うむ。それはそうだが──、どうだ、強すぎるとは思わなかったか」

「た、確かに・・」

「どういうわけかわからぬが、第三隊の者はみな実力者に育つ。最初はそれもスキルの影響かと思われ、何回か実験的な試みも行われたみたいだが、結論は違うとなったようだ」

「はぁ・・」

「なんにせよ、あそこの兵は一人一人が並ではない。少数精鋭の部隊という事だ。それが戦闘時には更に力が増す、結果、十倍の敵であろうと物ともしない集団となる」

「それが輜重隊ですか」

「言いたいことはわかる。だが、軍とは組織だ。駿馬(しゅんめ)は時として集団で駆けさせるのは難しい側面がある。全体の動きを優先するのであれば、あえて足の速いものを外すのも、ひとつの判断だ」

「なるほど──」

 隊長が頷くのを確認すると。

「他に何かあるかね?」

 少佐が聞く。

「いえ、お手数を掛けました」

 隊長は言って、頭を下げて立ち去った。



「実際、何なのだろうな・・」

 少佐は独り呟いた。

 (もっと)もらしく返した彼もまた、疑問を持つ一人に過ぎなかった。





 二台の荷車は完全に運行不能であった。

 他のも所々壊れており、荷物の積み上げと固定には苦労した。

 そういうわけで、細かい鹵獲品の運搬は十一隊に任せて、第三輜重隊は交易品と捕まえた九頭の馬を引いて伯陽への帰路に就いた。

 特に馬を使うわけではなかったが、雍白派の兵に回せばよいだろうという判断だ。


 一台当たりの重さが増したため、一行の歩みはいつもより遅かったが、激しい戦闘の余熱を冷ますには丁度よく、隊員たちは徐々に普段の心神を取り戻した。

 日が傾き野営の準備をしたが、この日は流石に疲れたのか、自主練も立ち合いもなく食事を取り、皆すぐに眠りについた。


 翌朝も日が出てから、ゆっくりの出発となった。




 昼過ぎに伯陽へ到着すると、基地の人間はみな目を丸くしていて。

──いつにも増して血まみれだし、そりゃ驚くよね。

 と、百鈴が思っていると。

「無事だったんですか!!」

 叫ぶように言われ。

「よ、雍白様に知らせてきます~」

 と、なにやら大事になってしまった。

 しばらくして雍白が馬車で駆け付け、同じように驚き、声を上げていた。


 百鈴以下隊員たちは、袁勝、馬豹が王女様の相手をしている間に、粛々と自分たちの仕事を(こな)した。

 基地の人間が連絡したのか、その間に雍白派の兵がやって来て、鹵獲した馬を引き取っていった。


 雍白が帰ったあと、馬豹から。

「私達が襲撃されるかも知れないとわかったらしい。だが時間的に救出は無理だと諦めた。だから彼等の中では、私達は死んだことになっていたようだ」

 と、説明した。

「諦めたって──、ひどくないですか?」

 百鈴があきれたように言う。

「こっちにも陽動の兵が出たらしい。それで動くに動けなかったというわけだ」

「じゃあ、こっちでも戦いがあったんですか」

「ああ──。そこで、例の案山子(かかし)を使ったみたいだ。王女様は私達は死んだと思ったから、使うなら今しかないと考えたのだろう。それで敵は崩れて、そのあと徹底的に叩いたそうだ」

「だと、国境の方でも結構やりましたし、もう襲撃はないかも知れませんね。そうなると私らの役目も、他の人で代用できそうですね」

 この百鈴の言葉に馬豹は感心して。

「ほぉー、なかなか鋭いじゃないか──。王女が言うには、次の局面になった、という事らしい」

「次の局面ですか。また面倒な事を押しつけられませんかね」

 百鈴は懸念を呈する。

「まぁ流石に任務の範囲を逸脱したことはできぬし、変なことは袁勝大尉も断るだろうさ」

 馬豹は推測を語った。



──でも、あの王女様、やり手っぽいんだよな。

 百鈴は、厄介な事になりそうな予感を(ぬぐ)えなかった。

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