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無双xロジスティクス ~落ちこぼれ部隊?いいえ、最強実践部隊です~  作者: テンチョウ
第二章 ~敷く擬石、咲く造花~

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第39話 襲撃計画

 本営は騒然となった。

 兵站(へいたん)部の当番の者が朝一で事務所に来ると、扉の鍵が壊されており、中は滅茶苦茶に荒らされ、あちこちに書類が散乱する状態だったのだ。

 当然のことながら、何かが奪われた可能性があると早急(さきゅう)に調べられたが、特に紛失した物はなかった。

 それでも兵站計画は軍事の要諦で──。

 例えば、輸送ルートなどが()れると、そこに賊を招き入れてしまう(おそれ)があったため、急遽(きゅうきょ)行路の変更がなされた。

 また同時に、誰がやったのかという犯人捜しも行われる事になった。


 ただ一つ失念があったのは──。

 兵站部は自分たちの立てた計画が漏洩することに大いに危惧を持ち、神経を尖らせたが、それ以外の予定についてまでは関心が及ばなかった。

 そしてその中には、(モウ)国内での輸送計画も含まれていた。





 馬豹が疾風(はやて)のように戻って来て。

「三百程います」

 そう報告した。

 偵察は主に百鈴や、他三騎の仕事であったが、特に怪しいと(おぼ)しき場所は馬豹が受け持った。彼女ならば敵に発見されても騎馬のスキルで逃げ切れる。



 最初、馬豹が隊からはなれるのを袁勝は(あや)ぶむところがあった。しかし──。

「百鈴がいるので問題ないかと。私の代わりには程遠いですが、豎子(じゅし)にしては動ける者です」

 馬豹自身がそのように言ったことで、袁勝は彼女を偵察に出すことにした。

 百鈴としては、頼りにされるのは嬉しいことであったが。

──後半は()らんだろうに・・

 褒められてるのか、馬鹿にされてるのか──。たぶん両方だろうと思われる馬豹の言葉に、若干のモヤりを感じるところだった。

 ちなみに、豎子とは未熟者をやや(さげす)んだ言葉だ。



「よし。少し戻り、道を変える」

 袁勝はそう言って、第三輜重隊は進路を変更した。



 孟国での運行を始めてから数回、百から二百程の敵を撃退した。

 すると太子派は、五百を超える数を集めてきて。それを知った雍白(ヨウハク)派も兵を集め、両軍が対峙する状態にまでなった。

 そのときは結局なにも起きなかったが、以来──。太子派は、三~四百の兵を動員する事が多くなった。ぎりぎり気付かれずに動かせる数がそれなのだろう。彼等の狙いはあくまで輜重隊だ。

 袁勝はそれとの戦闘を避けるため、屡屡(しばしば)道を変えるようになった。



 夕刻。馬豹との立ち合い前に、百鈴は隊員たちと軽く木剣をあわせる。

 初めのうちは方倹(ホウケン)とやるだけだったが、いつしか十人程と手合わせするようになった。また他の隊員も、それを見たり、自分で剣を振ったりなんかして、ちょっとした自主練の時間みたくなっていた。

 百鈴がそうであるように、隊員たちも、(いささ)かの消化不良を(かか)えていたのかも知れない。


 食事のとき。

「三百ぐらいならやっちゃてもイイと思うんですけど」

 百鈴が言うと。

「私の前で堂々と大尉の判断にケチを付けるとは、いい度胸だな」

 馬豹に獣の目で(にら)まれた。

「いや──。そういうんじゃなくて、倒しちゃった方が話が早いかなーって思っただけです」

「お前は顔に似合わず好戦的な奴だな」

 馬豹はジトッとした目を百鈴に向けて言った。

 続けて。

「大尉のスキルがあれば、三百だろうと四百だろうと関係ない。敵が増えればその分、こちらも力が増すのだからな。だが大尉が気にされてるのはそこではない──。百鈴、敵の狙いはなんだ?」

 百鈴は少し考え。

「それは──、荷を奪うことでしょうか」

「わかってるじゃないか──。敵の数が多くなれば、部隊を分けて、戦闘中に荷車だけを盗むといった事も可能になる。かといって荷車を気にしながらでは、流石に戦いにくい。我等の運搬は雍白派の動脈ともいえるから、それが奪われるとなると死活問題だ。大尉が戦いを避けるのはそういう理由だ」

 と、語った。

「それは隊長から聞いたんですか?」

「聞くまでもない。敵味方の状況から、何を考え、どう行動するかを想見すれば、おのずと答えは出てくるというものだ。(もっと)も、私は大尉とは長い付き合いだから、それも幾分かはあるかも知れんがな」

 得意の自慢気な朗朗とした言葉を吐いた。

 聞いた百鈴は頷きながら。

──自分だって顔に似合わずお喋りじゃない。

 思ったが、言葉にしなかったのは言うまでもない。





 太子派の面面は集まった。

 しかしながら、それはいつもとは少し異なるものであった。集まってみても、誰が召集を掛けたのかわからなかったのだ。

 大概は田牽(デンケン)や、その他重鎮の者が声を掛けて会合が(もよお)されるのだが、今日に限っては彼等も知らぬ話であった。

──どういう事か?

 田牽たちが思ったとき。

「待たせたな。皆集まっているな」

 と、太子が現れた。

 その言葉から、彼が発起人であるとは推測できたが。

──まだ(おもね)る者がいるか・・

 田牽はそう思った。



 ここ何回か、田牽らは太子抜きでの話し合いをしていた。

 いたところで、偉そうにダメ出しするしか能がないのだから、話を聞くだけ時間の無駄だと判断された。

 しかし、そのような太子外しとも取れる流れを面白くないと感じる者や、これを気に太子に近づこうと考える者たちもいて、彼等は密かに太子と連絡をみつにした。

 今回は、太子の指示のもと、太子派を集めることに尽力した。



 当の太子自身は、高官たちの微妙な牽制を知ったことでもない様子で。

「輸送の妨害に難儀している其方らに朗報があるぞ」

 と、喜色を見せて言った。

「朗報ですか?」

「うむ。輸送を担当している連中の計画書を手に入れた」

 太子はそう言って合図し、数枚の紙を持ってこさせた。

「それによると、今日を含め、五回分の計画が記されている。私が遅れたのは、本日分の報告を待っていたからだ。先程戻った早馬によると、確かにそれに書かれた場所と時間で荷の交換が行われていたそうだ」

 太子は一度、皆を見回してから。

「田牽よ。輸送部隊を襲おうと兵を用意して、逃げられているようだな?」

「はい──。面目次第も御座いません」

「よい。衆寡(しゅうか)敵せずと言ったのは私だ。人数が増えれば目立つことを忘れていた。だが、この計画書があれば、いつどこに向かうかは明らかだ。あらかじめ少数に分けて兵を伏し、輸送隊が来る機会で集合し、一気に叩けば良い」

 なめらかに言った。


──流暢(りゅうちょう)なものだ。

 おそらく誰かに知恵を付けられたものだろうが、滔々(とうとう)とした語り口は、田牽をして引き寄せられた。

──血のなせるわざか。

 雍白がどのように馗国を説得したかはわからぬが、この太子の姉であるから、同じように(たく)みに言葉を並べて()の国を動かしたのかも知れないと、田牽は思った。

──しかし、計画書など、どうやって手に入れた?

 疑問に思ったのは田牽だけではなかった。

「殿下。それ程の機密を如何(いか)にして入手されたのでしょうか?」

 誰かが聞いた。

「昨日手紙が届いた。それにこれらが入っていたのだ」

 事も無げに言う。

「どなたからの送られたものですか」

「差出人はわからぬ。だが、馗国国軍の状袋(じょうぶくろ)に入っていた」

「それは──」

 言った者は、それ以上の言葉を控えたようだ。


 田牽にはわかる。

 たとえこれが本物の計画書でも、斯様(かよう)な怪しい手紙に飛びつき、調査の結果も定かでないうちに人を集める太子の性急さに、一部の者らがあきれているのを。

 先程までの弁舌があっただけに、その落差は大きなものと感じられた。


 それでも何人かからは感嘆の声があがり、太子は満足そうに応えていた。



 太子派は計画書の最終日に狙いを定め、兵を動員することを決めた。

 青緑の輸送隊はもとより、現地に来るであろう馗国の輜重隊も、群盗を装って襲う計画が立てられた。今後の輸送を頓挫(とんざ)させる目的もあり、内容は殲滅戦が想定された。また、これの失敗は許されないとして、高官たちは私兵の多くを出し、総勢六百を超える規模になりそうであった。

 重要な作戦であったが──。

 田牽ほか数名は、雍白派の兵を引き付ける陽動役として、襲撃への参加はなかった。田牽等は、やはり手紙の存在を怪しみ警戒した。なので、最悪、自分たちの私兵は温存したいと考えたのだ。


 ともあれ、話はまとまり、この日の会合は思いのほか早く終わった。

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