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無双xロジスティクス ~落ちこぼれ部隊?いいえ、最強実践部隊です~  作者: テンチョウ
第二章 ~敷く擬石、咲く造花~

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第32話 特別任務!?

 前日の午後に第三輜重隊は()国、西の街、兌門(ダモン)に到着した。

 いつもと違い、荷車は、引いていない。

 小さな歩兵の集団として移動して来た。

 この日、彼等は用意された宿舎に泊まり、早めに(しん)に就いた。



 翌、早朝。

 彼等は宿舎を出て軍営に到着すると、普段の軍装を解き、用意された新たな装備を身につける。

 国軍の物とは異なる、一般に流通していて、商人の護衛などが使っているタイプの防具であった。少し違う点は、使われている布部分が、全て明るい青緑色に統一されていることだった。

「少し派手じゃないですか?」

 百鈴が馬豹に共感を求める。

「たしかにな──。まぁ、客の趣味だから仕方がない」

 馬豹は客と評したが、今回のそれは、彼女たちがこれまで関わってきた商人などとは格が違った。


「皆、準備はできたか?」

 袁勝が来て確認する。

 彼もまた青緑の明るさに包まれていた。

「はい!」

 隊員たちは、ほぼ同時に返事をした。

「よし、しばらく体を慣らしておけ。馬豹、百鈴は来てくれ」


 袁勝に付いていくと馬が三頭いた。

 三頭の馬具にも、所々、例の青緑が(ほどこ)されている。

 それはそれで目立っていたが、それよりなにより百鈴が着目したのは、馬自体の質の良さである。

 百鈴は別段、馬の善し悪しを見抜く活眼は持ち合わせてはいない。そうではあるが、彼女が今まで乗ってきた並の馬とは比較にならない良馬であることはわかった。

「なかなかの駿馬(しゅんめ)ですね」

 言ったのは馬豹だ。

 彼女は乗らずして速さがわかるのだろうか。

「ああ──。雍白(ヨウハク)殿が是非にと用意してくれたようだ」

「なるほど──」

「曹長から選んでくれ」

「はい──。では、こちらを──」

 馬豹は迷わず選んだ。

「次は軍曹だ」

 袁勝に言われたが、正直、百鈴には三頭の差異まではわからなかった。なので──。

「曹長、どっちがイイですかね?」

 馬豹に頼った。

 彼女は何か言いたそうな目を百鈴に向けたが、黙って片方を指さした。

「はい。これにします」

 百鈴が言い。

「では、こっちが俺だな」

 それで馬の選択は終わった。




「みなさん。何卒、よろしくお願いします」

 出発の前、雍白が輜重隊の一同に頭を下げる。

 前に共に旅した同じ彼女であるはずだが、その雰囲気は以前とは少し異なって見えた。

 袁勝、馬豹、百鈴は、雍白が(モウ)国の王族である事を知らされていたが、隊員たちには、要人という情報だけであった。それでも、その気配は、眼前の女が並の者ではない事を知らしめるのに十分な気品を有していたようで。

 百鈴は隊員たちのリアクションから、勘の良い何人かは気付いたかも知れないと思った。


「進発!」

 袁勝の声で部隊は動き出す。

 此度(こたび)は馬豹が先頭に立ち、中央に袁勝そして雍白の馬車、前後を隊員が埋めて、百鈴はいつも通りに最後尾という行軍スタイルだった。

 目的地は孟国の北の都市、伯陽(ハクヨウ)

 言うまでもなく、百鈴たちは雍白を護衛しながら行く事になる。

 そして到着後はそこに滞在し、国境と伯陽を往き来する輸送隊となる予定だ。



 この任務にさしあたって袁勝は、希望者には他の輜重隊への転属を認めるとした。

 彼は赴任の期間がどれくらいになるか不明であることと、輜重隊の任務としては危険度が段違いであることを理由に、上層部と掛け合って許可を取り付けた。

 しかし袁勝の努力の甲斐はなく、隊員たちは誰一人、第三輜重隊から離れようとはしなかった。

 それどころか、自分が足手(まと)いになってはならぬと思った隊員たちは、進んで稽古をするようになり、百鈴もそれに付き合わされる事が多かった。

 平素、如何(いか)に馬豹の虚を突こうかと考えている百鈴は、隊員たちと対峙することで基本に立ち返り、逆に彼女の虚を突こうとする彼等の動きから、自身を見つめ直した。

 結果、百鈴の武技は、また一歩前進することになった。



 一行は国境の手前で休止したあと、一気に越境し、孟国へと入った。

 伯陽への道は幾つもあったが、雍白はずっと孟国内にいるという設定になっているようで、人目を避けるためか、裏道のようなルートが選択された。

「逆に危なくないですか?」

 また百鈴は共感を求める。

「たしかにな──。まぁ、客の都合だから仕方がない」

 馬豹の返しは今朝と同じような感じだったが、その目には、例によって獣の眼光が宿っており、百鈴はそれを見て気を引き締めた。


 道中の村で休憩したとき、伯陽から帰って来たという者が。

「戻ってくる途中で兵の一団を見たが、あんたら大丈夫かい?」

 と、言ってきた。

 このところ太子派と雍白派の闘争は激しさを増し、あちこちで集団同士の戦闘が起きていた。

 村人は、百鈴たちが不幸な目に遭うのではないかと思い、気遣ったのだ。


 この情報に急遽(きゅうきょ)話し合いがもたれた。

「装備の特徴を聞く限り、孟国の正規軍の可能性が高いと思います」

 馬豹が指摘する。

「はい。私も同じように思います。しかし──、よもや彼等の影響力が正規軍を動かすまでになっているとは──、あまり考えたくはない事態です」

 雍白は言い(よど)みながらも、同意を示す。

「引き返して、別の道を行った方がいいのでは?」

 百鈴も言ってみる。

「私は明日には長陽(チョウヨウ)参内(さんだい)しなければなりません。そのためには、今日中に伯陽に着く必要があります。今からでは、間に合わぬかも知れません」

──色々都合があるのか。

 百鈴は自分が知らされていない事情が、他にも沢山あるのだろうと想像した。

「実際に、敵が動かしている場合、正規軍との戦闘に発展する(おそれ)があります。相手に後れを取るつもりは微塵(みじん)もありませんが、そうなったとき、我等の立ち位置はどうなるのでしょうか? 今後、彼等を敵に回した状態で任務を(まっと)うすることは不可能に近く、計画の大綱(たいこう)を見直す必要が出てくるかと具申いたします」

 馬豹の舌鋒(ぜっぽう)は、このような場面に()いても、そのなめらかさを失わない。

 いや、むしろ鋭さが増している感さえあり、百鈴は文字通り、馬豹の振るう槍のようだと思った。

 これに雍白は(しば)し考えて。

「馬車に雍の旗を(かか)げて、堂々と参りましょう。私もこの国の王女であります。敵がどれ程の権限を行使したかはわかりませんが、その一つや二つを退けるぐらいの権威はありましょう」

 そのように言った。

 袁勝は。

「我等は馗国の国軍の誇りに懸けて、雍白殿を無事に伯陽にお連れいたします。但し、正規軍との本格的な戦闘になった場合、以降の任務を中断し、我等は撤退する旨を伝えておきます」

 調子を乱さずに、淡々と言葉にした。

 雍白は静かに頷くと。

「はい。それで結構です」

 何かを撥ね()けるような、意思を込めて言った。



 袁勝は隊員たちに、予測される事態と、雍白の正体についても説明し。

「我等は、王女殿下の私兵という(てい)で堂々と行く。皆、自分たちの方が偉いのだという顔をしておけ」

 そのように言ってのけた。


 旗が掲げられた以外は先程までと同じなのだが、一行の(たたず)まいは、不思議な変様を見せた。

「進発!」

 青緑の集団は、再び動き出した。

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