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無双xロジスティクス ~落ちこぼれ部隊?いいえ、最強実践部隊です~  作者: テンチョウ
第一章 ~散ずる道、成す小径~

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第3話 なに、この強さ!?

 賊は目前に迫っていた。

 それでも隊員たちは落ち着いていて、それぞれ五~六人の班をつくり、迎撃態勢を取った。

「雑魚は皆に任せればいい、私達が狙うのは隊長格だ」

 馬豹(バヒョウ)(こと)()げに言う。

 百鈴(ヒャクリン)はここに(いた)っても、戦うという選択が信じられなかった。

「首領を含めて、五人ってところだ。たぶん馬に乗ってる奴だろう。ほかに弓を(つか)う者がいたら、そいつも優先して倒せ」

 馬豹は、百鈴の動揺を気にした(ふう)もなかったが──、最後に。

「大丈夫だ、我等には隊長が付いている」

 と、これまでとは少し違う音で言った。


 賊の兇刃(きょうじん)輜重隊(しちょうたい)に襲いかかる。

 が、このとき既に、攻め手の勢いは幾分(いくぶん)か弱まっていた。

 奇襲を受けるという状況下での、隊員たちの整然とした対応に、なにか異質なものを感じていたのだ。


 その感覚は正しかった。



〔 窮鼠噛獣(キュウソゴウジュウ) 〕



 次の瞬間。

「かかれ!!!」

 袁勝(エンショウ)の大喝と共に、輜重隊の兵が賊に向かって踏み込む。

 賊と隊員、二つの勢力が激しくぶつかる。

 が、その強度は圧倒的に違っていた。

 ぶつかるや否や、賊の方は綿毛(わたげ)のように()らされた。


「いくぞ、立て直させるな!」

 馬豹が言って駆け出す。

 百鈴も遅れまいと急ぎ馬を走らせた。

 しかし、馬豹が速すぎる。彼女の乗る馬も、百鈴と同じく名も無き軍馬でしかないはずだが、どこぞの名馬かと思わんばかりの疾走であった。

 馬豹は一直線に迫る、向かう先は隊長格と思われる賊だ。

 相手も気付いて、返り討ちにせんと馬豹に向かって駆け、槍を突き出した。

 馬豹はそれに自身の槍を軽く合わせると、瞬刻、槍を回して相手の持ち手を払い、敵の槍を()ね飛ばした。そしてすかさず賊の胸を槍で貫いた。


──なに、あの動き!?

 百鈴には、馬豹の槍が、達人のそれに見て取れた。

 彼女は馬豹の武技に、大いに興味を持ったが、今そんなことを考えている暇はない。

 百鈴に対しても、賊の何人かが襲いかかろうとしてた。

──こんなところで、こんな奴らに!

 百鈴は軍人を志したときから、前線で華々しく活躍するのを夢見ていた。

 それがレベルがなく、スキルを得られず、輸送部隊に回され、今こうして奇襲を受け、危機に(おちい)っている。

 哀しく(みじ)めであったが、同時に言いようのない理不尽さを感じ、腹が立った。

 彼女は怒りを利用して、自身の闘争心を掻き立てた。

「ハッ!」

 百鈴は敵の捕捉に、先手を打って仕掛けた。

 相手も当然それに対抗せんと槍を突き出す。

 百鈴はそれを軽く()なしつつ、直ぐに攻撃に転ずる腹積もりであった。


 しかしどうしたことか?


──隙がある!

 百鈴はそのように感じ、敵の攻撃に構わず一気に突いた。

 すると彼女の槍は、自身が想定してたよりも、(はる)かに速く、鋭く、強烈に賊を貫いた。

 刹那(せつな)、反対側から別の害意が迫る。

 だがそれにも、百鈴は左の逆手で剣を抜き敵の攻撃を弾くと、すばやく持ち替えて相手の腕を切り落とした。


──なに、この動き!?

 百鈴には、自分で見たもの、自身がやったことが信じられなかった。

 驚きと、得も言われぬ高揚があったが、感慨に(ふけ)っている時間はない。

 彼女の仕事は隊長格を倒す事だ。

 理屈は分からぬが、今はそれが不可能ではなく、()いては賊を撃退することに(つな)がると確信を持った。

──あれだ!

 百鈴は指示を出している賊に狙いを付け馬腹を蹴る。

「ハァァァア!」

 気合いの声。

 反応したか相手も。

「舐めるな、小娘!」

 同じく馬腹を蹴って向かい合う。

 相手の武器は、柄の長い戦闘用の斧だ。



〔 崩落割 〕



 賊の強烈な振り下ろしが来る。

──まともに受ければ折れる。

 百鈴は瞬時に攻撃の勢いを読みより、受け流す事に徹した。

小賢(こざか)しいわ!」

 敵は続けて横薙ぎに仕掛けてきた。

 このままだと、馬ごと斬り付けそうだ。

──防ぎきれない。

 思うや否や、百鈴は槍を手放し剣を抜き放った。

 その抜剣は、やはり彼女の予測を超え、一閃、賊の体を斬り付けた。

「ぐぁ!」

 相手が(うめ)きをあげる。

──もう一撃で倒せる。

 百鈴が思ったときには、敵は馬腹を蹴って駆け出した。

「逃がすか!」

 言ったものの、馬の足が違いすぎる。両者の距離は直ぐに開いた。

 すると──。

 逃げた賊に呼応するように、他の賊達も逃走に転じた。


──やった! 撃退した!

 百鈴は自分のやった事を噛みしめ、心だけでなく、全身が震えた。



 が、しかし──。

「一人も逃がすな! 追撃!」

 袁勝の指示に耳を疑った。

 百鈴が真偽を確かめようと当惑している間にも、隊員たちは烈火の如く賊に襲いかかった。

「百鈴、ぼけっとするな!」

 馬豹の叱責が飛ぶ。

 百鈴は、予期せぬ展開と、馬豹から呼び捨てされた事で更に惑乱しそうになったが。

──くそ。どうにでもなれ!

 と、唇を噛んで馬を走らせた。


 隊員たちの動きは良く、逃げる賊にも連携して(うま)く討ち取っていた。

 袁勝が馬で先回りし退路を断ち、歩兵が足の止まった賊を倒すといった動きも見られた。


 百鈴も何人か討ち取ったが。

「ダメだ。あれは届かない・・」

 自分が逃がした賊が遠くにいるのを見て、そう(つぶや)いた。

 と、そのとき。



〔 脱兎捉爪(ダットソクソウ) 〕



 馬豹がこれまでよりも、更に速く馬を疾駆させ、あっという間に百鈴の逃がした賊の背後に迫った。

 そして、気付いた相手が振り向いた際に、駆けた勢いのまま槍で突き落とした。

 遠くて百鈴には詳細は見えなかったが、賊が絶命しているのはわかった。



 配属初日の夕刻、任務中に襲撃を受けた百鈴であったが、彼女を含めた隊員の働きによって撃退した。

 実に賊徒の九割を討ち取るという信じ難い戦果だった。

 百鈴は、何が、どうしてそうなったかを考える以前に──。


 これが現実である事を認識するのに、しばしの時を要した。

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