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無双xロジスティクス ~落ちこぼれ部隊?いいえ、最強実践部隊です~  作者: テンチョウ
第二章 ~敷く擬石、咲く造花~

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第28話 唇歯輔車

 第三輜重隊は二週間の任務を終え帰還した。

 百鈴は、初回からこの行程じゃ大変だったろうと、新しく入った兵を心配したが。彼女の目に映る彼等の姿は、存外()()()()としていて、先輩風の吹く隙は微塵もなかった。

 そんな百鈴は相変わらず、わかり易いのか。

「残念だったな──、先輩面できなくて」

 逆に、馬豹に先輩風を吹かされた。


 前回の鹵獲品で報奨金が出た。一人当たりにするとほんの僅かだったが、皆の、特に新兵である四人の気持ちは高揚したようだった。

 百鈴は彼等と比較し、自分はひねくれてたかも知れないと反省し。

──やりがいなんて、やってるうちに感じるものか。

 などと、(もっと)もらしく考えた。

 それを見た馬豹は。

「知った風な顔してるぞ。何を考えてるか知らんが、哲学だけは語るなよ」

 と、先輩として釘を刺した。

 百鈴も少々シャクだったので。

「私は曹長ほど舌が回りませんので、ご心配なく」

 そう返すと。

「ほう──。顔を真っ赤にするぐらいしか能がなかったのに、成長したな。嬉しいぞ」

 言って笑った。


 若干モヤる百鈴だったが、それでもすぐに気分は()いだ。

 なにしろ明日から三連休だ。

──家に帰ってみるか。

 特に決めてはなかったが、百鈴は実家に行く事を考えた。

 武官学校時代は、馬で半日ぐらいかかっていたが──。

 馬術も上達したと自負している今なら、もう少し早く着くのではないかと想像した。



 袁勝が気を利かせたのかどうか定かじゃないが、この日はかなり早めの解散となった。

 百鈴はさっきまで、明日の早朝にと思っていたが。

──今からもアリか・・

 と、今日中に家に戻ると決めた。

 百鈴は脱兎の勢いで部屋に戻り、素早く旅装を調え、すぐさま部屋を飛び出した。

 馬を借りに向かう道すがら、訓練帰りと(おぼ)しき部隊とすれ違った。

 すると、駆け足で行く彼女の後ろから誰かが追ってきて。


「百鈴! 俺と勝負しろ!」


 と、怒声を発した。


 声の主は尚史(ショウシ)だ。

 訓練用の棒を二本持っている。

 おそらく自分の一本と、部隊の他の者に借りてきた一本だろう。

──またコイツか・・

 先を急ぐ百鈴は、面倒なのに捕まったなと思ったが。前に査問官に呼び出されたことを思い出し、ふざけるなよという感情が高まった。なので──。


「上等だ!!!」


 尚史に負けじと、怒号で返した。


 百鈴は、尚史が投げた棒を拾うや否や。

「はっ!」

 気合いと共に間合いを詰め、鋭く突く。



〔 鱗茎剥捨 〕



 尚史はスキルを使い、百鈴の突きを大きく()なす。

 百鈴の体勢が左に傾く隙に、この間のお返しとばかりの突きが放たれる。

 が、百鈴は前に踏み込みながら石突きの側でそれを弾く、続けて返す動きから左足で踏み込んでの振り下ろし。

 尚史は引いて(かわ)すが、この時の百鈴の右手の位置はいつのも短めのスタイルではなく、やや後ろ側にあり。撞球(どうきゅう)(ビリヤード)のような姿勢からの強い突き出しがきた。



〔 鱗茎剥捨 〕



 再びスキルを使った尚史だったが、インターバルが足りなかったのか百鈴の攻撃を往なし切れず、突きを受けて棒を落とした。

 しかしそれでも百鈴は止まらず、尚史の腹に一撃を入れ、前回と同じように彼を悶絶させた。


 百鈴は尚史が気を失うと棒を捨て、とっととその場をあとにした。

──気絶させたのはやり過ぎたか?

 思ったが。

「知ったことか」

 と、考えるのをやめ、替わりに自身の動きを思いだし。馬豹の槍を参考に、石突き側で踏み込んでみたのが良かったと振り返った。



 百鈴は馬を借りると、九門(キュウモン)を東に出て、一路故郷に向けて馬を走らせた。





 雍白(ヨウハク)は、彼女と面談した馗国の高官たちに向かって言った。

(モウ)国は、()国からすれば歯に対しての唇、目にとってのまぶたような存在です。または、車と荷台、瓶と蓋、上あごと下あご、骨と肉かも知れません」


 彼女の言葉は──。

 両国の関係は密接で、切っても切れない間であり、仮に一方を失えば、もう片方も大いに困ることになるというものだった。


 これに高官の一人は。

「それは孟国によった見方ではないですか? 我等馗国からすれば、孟国は多くの貿易国の内の一つに過ぎません。今、我が国がそちらに援助をしても、受ける恩恵など、これまで以上には見込めないと思うのですが・・」

 雍白は。

「幸福にある者は、自分が今、満ち足りているとは、なかなか気付かぬものです。また、健康であるという事は、病になって初めてありがたみがわかるもの。愛も、失ってから気付くのかも知れません」

 彼女は続けて。

「この先、孟国が(シュウ)国によって滅びれば、次に周国が考えるのは何でしょうか?」

 そう高官たちに問うた。


 雍白は答えを待たずに。

「私も、馗国に来て知ったのですが、北の(オウ)国が何度も国境を侵しているとか。なんでも北を守っている軍閥と、激しい戦闘もあったと聞きました。また、東では(ライ)国と、常に小競り合いが起きているとも聞き及んでおります」

 この時点で、多くの者が彼女の真意に気付いた。

 雍白にもそれがわかり、声にも一層力が入る。

「周国が孟国を滅ぼせば、次に狙うのはここ馗国です。そうなったとき馗国は、謳、礼、周の三カ国からの侵攻に対処しなければならなくなります。いえ──、これは少し間違っていますね。おそらくその時は、二国、もしくは三国による連携した動きになるはず。それならまだ良い、おこぼれに預かろうと、いらぬ欲を持つ国が加わってもおかしくありません」

 うなづく高官たちに。

「今、孟国を救うことに利は少ないかも知れません。しかし、救わねば大きな不利益を(こうむ)ることになります。どうぞ私達の存在を、炎天を和らげる日傘か何かにお考えになり、そのほつれを直すつもりで御助力を頂きたい。なにとぞ、何卒、お願い申し上げます」

 言って、慇懃(いんぎん)に礼をした。

 それは、一国の王女としては最大限のもので、馗国の高官たちも恐懼(きょうく)せずにはいられなかった。



 (おおむ)ね、高官たちも雍白の意見に理を見付けた。

 しかし、ひと言に助力、援助と言っても、どのような手段を用いればという問題があった。

 ここで雍白は。

「難しいことでも、殊更に手間のかかることでもありません。私達と直接交易をして頂きたいと考えております」

 そう言った。


 今後、孟国と馗国の貿易は全て、雍白派と馗国との取引にしてほしいというわけだ。

 雍白派でなければ馗国に売ることも、馗国から買い付けることも出来なくなる。そうなれば、馗国との交易に依存する孟国は、自然と雍白派に傾くことになるとの考えだ。


「それは簡単で良いとは思いますが、既に孟国内では闘争が起きているとか。ならば、実力を(もっ)てそれを阻止する動きも出ましょう。やや悠長ではないでしょうか」

 この指摘に。

「闘争のことでしたら、もとよりの話なので私達も対処はしております。ただ、荷が奪われたり、その運行を妨げる動きには、なかなか対応できぬかも知れません」

 雍白はここまで言ってから、再び頭を下げ。

「できますれば、貴国の精鋭なる輜重隊、特に、第三輜重隊にお願いしたいと考えております」

 そう言葉にした。

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