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無双xロジスティクス ~落ちこぼれ部隊?いいえ、最強実践部隊です~  作者: テンチョウ
第一章 ~散ずる道、成す小径~

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第17話 廉潔の士

 騎兵の数は百を超えた──。

 もともと二十騎ほどしかいなかったが、呼延吹(コエンスイ)を止めに来た騎馬を組み込んで五十を超えた。

 ()国に入り森で野営したところ、敵に知られたのか、百騎の騎馬隊を呼び寄せてしまった。それ自体は失態であったが、呼延吹は賊徒に扮した囮を使い敵を罠に掛け、ほとんどを討ち取った。

 そのとき手に入った七十頭ほどの馬の中で、怪我がなく、すぐに乗れるもので更に騎兵を編制した。


 結果、騎馬百、歩兵三百の一軍ができあがった。


 そんな折、突然に強い雨が降り出した。

──天佑の雨だ。

 呼延吹はそう思った。

 激しい雨は、当然の事として行軍には不向きだった。だが、奇襲をかけるという観点に立てば、自分たちの存在を隠してくれる天の助けであった。

 敵の騎馬の幾つかは逃げてしまったので、存在自体は知られると思われた。だが、何処にいるか把握できなければ、対処のしようがない。馬という戦果を手に入れたため帰還した、と考える可能性もある。

──これは、(かたき)を討てという天意かも知れない。

 呼延吹は降り注ぐ雨を身に受け、益々、仇討ちの炎を燃え上がらせた。





 昨日に引き続き、天候の懸念があった。

 第三輜重隊は普段以上のペースで荷車を押し、かなりの距離をかせいだが、昼過ぎには大粒の雨に降られることとなった。

 隊員たちは慣れたものであったが、それでも大変なのは大変で、百鈴も何か手伝いたいと思わずにはいられなかった。しかしながら、このようなときこそ騎乗の者が周囲をより警戒せねばならず、百鈴は自分の仕事に注力した。


 しばらくして、百鈴は馬を一頭発見した。

 正確には騎馬だったのだが、乗り手は鞍にしがみつくようにして(うつむ)いていて、一見しただけでは荷物を載せてるだけに見えた。

 百鈴はすぐに袁勝に報告し、馬豹と二人で、騎馬の様子を見に行った。


「こちらは国軍兵站(へいたん)部運搬科、第三輜重隊である」

 馬豹が(さえぎ)るように前に行き、そう名乗ったが、相手はまったく反応しない。

「百鈴」

「はい」

 百鈴は警戒しながら騎乗の男に近づいた。そして──。

「曹長、死んでます」

 そう報告した。



 袁勝が来て、死体を検分する。

 馬豹は彼に代わって隊を進ませている。

 強い雨に打たれている状況で中途半端に停止すれば、行軍を再開したときに思うように体が動かないことを、経験則として知っているからだ。

 いつ止まり、どれくらい休むかという判断は、地味に指揮者の力量が問われる軍事の要所でもあった。

「袁家軍の騎兵で間違いないだろう。傷はみな下から受けている──」

 幾つも出血の痕があったが、脇腹からのものが酷く、それが致命傷になったと思われた。

 百鈴も腹の傷が死因だろうと見ていたが、攻撃の角度までは考えが及ばなかった。

「歩兵にやられたという事ですか」

「ああ──。そうなると、良くない事態が起きている」

 袁勝はそう言うと。

「軍曹、空馬を引いてこれるか?」

「はい、できます」

「では、たのむ」

 彼は百鈴に指示をだし、自分は素早く隊列に戻った。



 百鈴が馬を連れて戻ると、袁勝は隊員の一人をその馬に乗せ、一番近い軍営まで連絡を命じた。

 それは──。

 袁家軍の精鋭である騎馬隊が壊滅した可能性が高いというもので。それを為し得るだけの戦力を持った敵対勢力が、付近にまだ滞在しているおそれがあり。要警戒の指令を出すべきだという具申であった。


 連絡に選ばれた隊員は、前回の戦いの傷がまだ完治しておらず。この後、輜重隊が敵と出くわす可能性を考慮しての判断であった。

 袁勝としても馬豹を手元に置いておきたいのかも知れないと、百鈴は思った。

 そしてそこには、三人の隊員が犠牲になった事も関係しているのではないかと、想像した。





 偵察の報告によれば、敵の根拠地には(あわ)ただしさがあるという。

「やはり、こちらの存在は知られたとみるか」

「構うことはない。こっちの居場所が知られるまえに強襲してしまえばいい」

「しかし警戒中の相手だ、すぐに守りを固めるかも知れん。そうなると手詰まりになるぞ」

「ああ、こちらとて、動きが悪いのは同じだからな」

 隊長以上を集めての作戦会議だ。


 呼延吹は。

「立場を気にせず忌憚(きたん)なく申せ」

 と、彼等に言っていた。

 ここにいるのは、亡き呼延枹(コエンホウ)を慕う者たち。彼の(かたき)を討つために、危険を冒し、後の処罰まで覚悟してやってきた。その志に、階級の差を付けたくはなかった。


 色々と意見は出たが、全体としては本拠を直接攻めるのは難しいというものだった。

 そこで(おび)き出す方向で話が進み、賊徒として村などを襲い、それを討伐するために出てきたのを叩けばいいという形になってきた。


 ここで呼延吹は。

「私は、それでも本拠を攻めたいと思う。私達は兄様の敵討ちに来た。村を襲えば、相手を釣り出す事はできるかも知れないが。それは、どこか敵討ちを汚す行為のようにも思える。難しいのは重々承知しているが、何か工夫の余地があるように感じる。なんとか、そちらの方向で考えてはもらえないだろうか」

 いつになく、静かに言葉にした。

──呼延吹様の(おっしゃ)る通りだ・・

 多くの者が彼女の言に感じ入り、自分たちの浅慮(せんりょ)を恥じた。そして今一度、志を強く持ち、本拠を攻めることで知恵をだした。



 作戦のまとまった呼延吹たちは、袁家軍の根拠地に向けて静かに軍を進めた。

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