あとがき
このたびは、私、雷紋寺音弥の初ホラー作品、猟闇師をお読みいただき、まことにありがとうございます。オカルティックなものを題材に話を書くのは初めての試みゆえに、神や霊、呪いや祟りといったものに関する独自の解釈をさせていただいた部分も多々あります。これが吉と出るか、それとも凶と出るのかは、正直なところ私にも分かっておりませんが……。
さて、ここまでお読みいただけた方ならお分かりかと思いますが、この話はほんの序章にすぎません。(一応)主人公である犬崎紅は、今回は完全なデウス・エクス・マキナです。本作においては、それ以上の役割を持っていません。それは、ヒロインである九条照瑠も同じです。一連の事件を通して見た場合、彼女もまた傍観者でしかありません。
先にも述べましたが、この話は紅と照瑠の出会いを書いた、ほんの序章でしかありません。恐れ多くもシリーズ化を考えているだけに、今回は必要以上に本筋に関わらせることを避けさせていただいたしだいです。
犬崎紅が四国地方に伝わる犬神を使役する者ということは、終ノ刻の最後で明らかになりました。しかし、彼が言っていた赫の一族という言葉や、照瑠の護衛を無条件で引き受けた背景などに関しては、まったく語られていません。これに関しては、後のシリーズで少しずつ明らかにしてゆくつもりです。
最後の最後で新たな伏線を張ったまま、それを回収せずに終わることに対しては、異論や反論もあると思います。ですが、私はこの古の呪という話に限って言えば、書きたかった最低限のことは書けたかな、とも思っております。
――――心病みし者が向こう側の世界にふれた時、病みは闇となり現実を侵食する。
これが、私が猟闇師シリーズを通して書いてゆきたい基本コンセプトでもあります。
よくよく考えてみれば、幽霊だってもとは人間です。呪いをかけるのも人間ですし、神の怒りに触れて祟られるのも、人間が禁忌を犯してしまったことに原因があるはずです。
終ノ刻で秤屋刑事が岡田刑事に言っていたことは、神仏と人間との在り方に対する私なりの考えでもあります。宗教というものに必ずしも深入りする必要はないのでしょうが、人知を超えたものに対する畏敬の念だけは忘れないようにしたいと思う、今日この頃です。
2010年6月13日(日) 雷紋寺 音弥
感想などは随時受け付けております。
また、地方に伝わる呪いや祟神の話なんかも大歓迎です。
今はまだネタがあるから良いものの、このままだとすぐに枯渇しそうで……。
東北、四国、山陰辺りの伝承を中心に集めています。
後は、離島とか沖縄とか……。
何か禍々しい伝説をご存知の方は、ご一報いただけると幸いです。(マテ