19話 異世界征服序章
ジョージ・フォン・ヨーカは領主邸で客人を出迎えた。
相手は中年の貴族だが若々しく猛々しい。
ジョージ「よくぞおいで下さいました。ダルセイン卿。」
ダルセイン「うむ。息災…ではなさそうだな?調子はどうだ?」
ジョージは顔面蒼白、髪も薄くなっている。
ジョージ「調子は…正直に申しましてあまりよろしくないです。実は…ここだけの話し…」
ダルセイン「何か良からぬことがあったのか?」
ジョージ「息子が…私と似たような症状だったのですが…先日街に出て、出先で倒れ、そのまま意識戻らず、そのまま息を引き取りました。」
ダルセイン「それは…悪いことを聞いた。それはさぞ辛かっただろう。私からも良い医者を探すよう皆に申し付けよう。」
ジョージ「ありがたき幸せ。しかし、本日お越し頂いたのは、別の要件もあるのです。」
ダルセイン「自分の命よりも重要な案件なのか?」
ジョージ「はっ。実はこの私の症状も、息子も、同じ人物からの人為的攻撃、それも呪いに近しい物らしい…のです。」
ダルセイン「らしい、とは?」
ジョージ「さる所からの有力情報で、彼の者はノースアメリア大森林に1人で住んでいる、との情報を掴み、手の者に調べさせておりました。」
ダルセイン「うむ。」
ジョージ「大森林のとある所に彼の者の拠点がある、と分かり、討伐隊を組み、領軍で制圧すべく動いたのです。」
ダルセイン「うむ。」
ジョージ「結果は…今までに遠征2度。全ての隊員と連絡がつかなくなりました。」
ダルセイン「なんと…噂は真であったか。」
ジョージ「は。今このヨーカを彼の者に攻められれば、簡単に落ちます。」
ダルセイン「…」
ジョージ「つきましてはダルセイン卿、もし今後私の身に何かありましたら、ヨーカや私の親族だけでも、ダルセイン卿のご助力承れますよう、お願い申し上げたい始末なのです。」
ダルセイン「援軍の申請ではなかったのか?」
ジョージ「彼の者は手練の単独、もしくは少数精鋭。ヨーカ領軍を持ってしても尻尾すらつかませません。このままでは陛下に言い訳も立ちません。」
ダルセイン「万が一の場合、切り捨てろ、と?」
ジョージ「その方が都合がいいかと。」
ダルセイン「覚悟は決まっているようだな。」
ジョージ「は。これは私の独り言、として聞き流して頂いて構わないのですが…」
ダルセイン「なんだ?」
ジョージ「可能性として。私どもの行動、思考、全て彼の者の思惑通りなのだとしたら…。」
ダルセイン「そこまでか。考えたくないな。」
ジョージ「は。卿の寛大なご配慮、感謝致します。」
ダルセイン「うむ。」
シン「話しはまとまったか?」
2人が一気に凍りついた。
2人の目の前には、いつからそこにあるのか、いつからいるのか分からない、大きな"鷹"がいる。
シン「こいつは俺が使役してるゴーレムでな。普段は認識阻害をかけて国中の人間を監視している。」
2人は凍りついたまま、黙って聞いている。
シン「もちろんこの事を他人に漏らすのは許可しないぜ?お前らはもう俺の管理下にあるからな。」
ダルセイン「何が目的だ。」
シン「うーん。」
ダルセイン「はっきり言え。」
シン「おい、口の聞き方に気をつけろよ?お前にもそいつと同じ呪いかけてやろうか?」
ジョージの顔がビクッと一瞬恐怖に歪んだ。
それを見たダルセインは、はぁーと一息ついて次のように続けた。
ダルセイン「卿は我々に何を望む?」
シン「あぁ。国取り、手伝ってもらおうか?」
ダルセイン「無謀だ。」
シン「もう片はついてる。」
ダルセイン「どういう意味…ですか?」
シン「お前らも含めて、アメリア国内全ての王族、貴族に対して"隷属"、"支配"の魔法を施行済みだ。」
ダルセイン「…」
シン「一度だけ試してみても良いぜ?許可はしないが王族に国家転覆の危機だと進言してみろよ?やろうとしても出来ないから。」
ダルセイン「…」
ジョージ「我々は何をしたら良い?」
シン「あぁ?」
ジョージ「何をしたら良い、ですか?」
シン「そうだな。じゃぁ今すぐ領地運営権の全てを貰おうか。」
2人の脂汗まみれの顔面から、一気に血の気が引いたのだった。
※ヴァルグベルト・フォン・ダルセイン侯爵
アメリア半島北東の国境沿い港町、イーストダルセイン領主。人口7万人。
ジョージ・フォン・ヨーカとは義兄弟であり、仲も良く貴族社会でのジョージの後ろ盾でもある。
終焉の暁シュウエンノアカツキと言います。
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終焉の暁 @syuennnoakatuki




