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扁桃体除去手術

作者: 田芳治

「時は西暦2089年! 宗教など馬鹿たちを騙して富を得るための道具にすぎない。歴史上の宗教家の全ては例外なく詐欺師さ。」

 

「無神論者というのも馬鹿な話で、我々のように宗教で馬鹿を騙して儲ければ良いものを馬鹿真面目に本当のことを言って自分で自分を苦労させている阿呆ではないか。」


「本当にお前ら馬鹿どもは先祖代々、我々累代の宗教を使った搾取者たちから搾取され続けてきたんだよ! 良い加減気がつけよ! なんて言ってもお前らは変わらない。お前らの脳は恒常性を破ることができる脳ではないからさ。我々の獲物かもは扁桃体の大きい臆病者なのだから。」


「今日も馬鹿が莫大な献金を振込みおったわ。まあ、信教の自由だから我々宗教搾取者は悪くないわけだ。嫌なら払わなければ良い。それだけなのだ。我々は合法集団だ。無理強いはしない。それでも人々が献金をやめないのは我々が奴らの扁桃体を支配しているからだ。やめれば悪いことが起こると我々は言ったことはないが、馬鹿どもが勝手にそう信じ込んで献金をやめないだけなのだ。」


 何かの討論番組らしく、たまたまつけたテレビの画面で紫色の背広を着た顎の長いが端正な顔をした色白で狐目でまるで魔導士のような見た目の男が低音の美声で持って演説をぶちかましていた。僕は、彼の主張に同意はできなかった。僕は、クリストも仏陀も尊敬していたからであった。そして半分も何言っているのか理解できなかった。

 

 僕の名前は、高橋翔太。最近疲れ気味の大学2年生だ。学部は工学部、学科は建築学科。学費捻出の為の深夜バイトが嵩み疲れ気味なのだ。


 僕の自宅は築80年のボロアパートだ。2089年、我が列島国家パング人の人口減少は極まり去年は確か7万人くらいしか生まれなかった。ウーラシャ大陸の東ジア地域からは大国イーナ、アンゴ、ツナン。南半球からはラジル、ンドネからの移民が多く、実質帰化した彼らが政治家となり我がジパング国の実権を握っている。僕は生粋のパング人だが(国粋主義的な意味を含まないことは断っておく)生粋の若いパング人は今時では珍しくなっており、少数のものしか見たことがない。僕のいる世界は、読者のいる世界線の世界とはやはり違う世界線の世界と言えよう。


 僕は旧王家の出身だが、僕は僕の知能が人よりも高いことが幼い頃から不思議であった。

 しかしながら、今はわかる。それは、品種改良の結果だったのだ。パング国は約3000年王貴族制が続いた国である。民主化した今も制度は変われども遺伝子は変わらない。旧貴族は相変わらず旧貴族同士で婚姻するのが習いである。僕の父と母もそうだ。

 約3000年前、僕の祖先は先住民の住むこの国(まだ旧パング王国ではなかったが)を征服しこの国の王となった。僕の祖先は品種改良の可能性に気がついていたらしく、諸外国から学者を招きその遺伝子を取り入れてきた。統計学的には平均への回帰が働くとはいえ、約3000年にも及ぶ品種改良がどのような結果をもたらすか? それは完全に一般庶民を超えた異次元とも言える高い知能の発現が障害でもなければ期待される新品種を誕生させるのだ。その末が僕というわけだ。


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