表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

見て見ぬふりをしてはいけない

作者: 華城渚

「それでは、判決を下します。」

目の前に偉そうに存在しているものが僕に対してそう言った。


つい数時間前、僕は死んだ。

猫が道路に飛び出したところを僕が助けようとして車道に出たら車に轢かれてしまった。

幸い猫は僕がクッションになって助かったみたいだった。

死んでこの場所に来た時に聞かされた話だ。


最初は天国に来たんだと思った。

教会がたくさんあって、羽が生えた人間もたくさんいたからそうだと思った。

でもすぐにそうじゃないって分かった。

羽が白い人と黒い人が半分くらいここにいる。きっと天使と悪魔だと思う。


ここは選別される場所なんだ。

死んだ人間が天国か地獄に行くかを決められる場所。

決められるって言ったのは、死んだ人間には権利が何もないかららしい。

裁判所のような場所で今後のことを決められるって言われた。


選別まで控室のようなところで待たされた。

今日は死んだ人が少ないから早くに僕の番が来ると言われたけど、僕はどう言われるんだろうな......


僕は今まで自己犠牲の塊みたいな存在だった。

どんな人でも動物でも手を差し伸べたくなる人間だった。

二十年しか生きることはできなかったけど、それでもたくさんの手助けをすることができたと思っている。


僕の行いを見てくれていたのならきっと天国に連れて行ってくれるんだろうなぁ......

そう考えていると僕の番がやってきた。


中に通されるとそこは裁判所だった。現実にあるものと瓜二つだ。

違うことがあるとすれば、神々しさと禍々しさが合わさった雰囲気が漂っている。

きっと天使と悪魔が両方存在しているからだろう。


「それでは、判決を下します。」

目の前に偉そうに存在しているものが僕に対してそう言った。



「......あなたは地獄に行っていただきます。」

僕のことを見透かした目で真っ直ぐにこちらを見てそう言われた。


僕は少しだけ驚いた。でもすぐに理解した。


ああ......そうなんだ......


誰にも悟られないし、死んでからもそうだと思ったけど......


目の前にいる存在には理解されちゃうんだね。




僕は手助けが好きだ。

それが一番絶望に落としやすいって思うから。

助けた人、動物がいつか僕と再会したとき、きっと感謝の気持ちでいっぱいのはずだ。

その時、その瞬間に絶望に落としたらどうなると思う?


なんで......?どうして......?あの時助けてくれたのに......


いろんな感情が混ざり合って僕を見てくれると思うんだ。

それがたまらなく興奮する。それしか快楽として感じることが僕にはできない。


でもこれって人としてしか満たされないって気づいたんだ。

人の感情だけで満たされるのってもったいなくない?


だから死ぬことにした。

死ぬときもちゃんと手助けをして抜かりはないようにしたつもりだったけど、見抜かれてたみたい。


はぁ......天国に行って天使どもの絶望に染まった顔が見たかったなぁ......

上位の存在って絶望したらどんな顔するんだろう。

気になるけど、しょうがない。


まずは悪魔からでいいや。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ