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パーフェクト・デイズ⑦

この作品は7作目です。

 表紙に書いた文字が認識できないほど、ぐちゃぐちゃに変形したノート。”あの日”以来一回も開いていないノート。自分の呼吸が荒くなってくるのが分かる。おそるおそる手を伸ばす。掴んだ、と思ったら思わず熱いものを触ったかのように手を引っ込めてしまった。手も細かく震えていた。ふーっと深く深呼吸して、再び掴んだ。ページをめくろうとするにも時間が必要だった。でも、これ以上自分はごまかさない。ページをめくろうとしたとき、

「ただいまぁ」

間延びしたような母の声が一階から聞こえた。マズい。叩きつけるように引き出しにしまい、無理矢理元気な声をつくっておかえり、と迎えた。

 翌朝、目を覚ました時は寝汗でびっちょりとパジャマが湿っていた。結局、母が帰ってきてからあのノートを見る気が失せてしまった。逃げるのか。そんな声が聞こえるような気もしてくる。頭を振って声を掻き消す。今日は、ライバル校との練習試合だ。しっかり勝たなくては。

 練習試合。試合は好きなのだが、試合前にコートをセットするのだけがたまらなく嫌いだ。まだ頭が回っていないうちからゴールを運んだり、コートの長さを測ったりするのはまあまあめんどい。そのくせ、島田は隅の方で暖かそうなベンチコートを着て、隅の方で作戦ボードをいじっている。許せん。俺らは半そで短パンのユニフォームだけなのに。はぁ、寒。そんなことを思ってたら後ろから声を掛けられた。半分眠ってる感じで、誰かわからずに振り向いた。誰だよ。しょうもない用事だったらしばいたる。振り向いた先にいたのは、森だった。

「…大丈夫ですか」

「何が」

「…昨日ボールぶつかったんで」

ぶつかったっていうか、お前がぶつけてきたんだけどなぁ!覇気があり余ってる時ならそう言っていたかもしれないが、覇気0状態では、無言でうなずくしかできなかった。そうですか、とだけ言って森は立ち去った。…謝罪はないのか。ムカつくやつだ。森への怒りを糧に、準備を黙々と進めた。朝8:30。試合開始30分前になって、スタメン発表があった。まぁ、聞くまでもない。いつも通りのワントップ…じゃない!なんかツートップになってるぅ!あの顧問、俺はワントップが好きだから絶対にワントップとかほざいていたのに。まぁいっか。相方が足引っ張らなきゃ…。なになに。背番号8番のやつとツートップか。てことはいつもはミッドフィルダーあたりのやつか。あれ。ちょっと待てよ。8番ってことはミッドフィルダーの中でも攻撃よりの選手がつけることが多い(島田の謎のこだわり。俺の背番号10は志願して手に入れたけど)。てことは…

「…先輩とツートップですか」

森ぃ!こいつとか!…まぁ公平な目線を持てば、実力十分の選手が来た。だ・け・ど。そんなんしたら、俺がボール持つ時間が減るだろぉ!くそ。島田め。森が県選抜に選ばれて張り切ってんな。あぁ試合まで時間ねーし。しゃーない。今日はこのコンビで勝つか…。グラウンドに一列に整列し、挨拶してから入る。コイントスの結果、マイボーになった。さて、俺がぶち抜いてやるか。ピーッ!。審判のホイッスルが空に舞い上がっていった。

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