パーフェクト・デイズ⑪
この作品は11作目です。
不快。全くもって不快。ちょっとでも森に優しくしようと思った俺が馬鹿だった…いや、紛らわしいことしたあいつが悪い。俺の諭吉とお別れしなきゃいけなくなったじゃないか。しかもスパイク引き取っていったのが羽田とか…なんかいろいろオワッテル。
「いやー。スパイクありがとね。俺、欲しかったんだー」
呑気に感謝の言葉を口にしてくる羽田。それを気まずそうに眺めてくる森。はぁー。あからさまにでかいため息をついてやると、羽田もしまったといったように口を閉じた。遅えわ。
「で、次どこ行く?」
会話のネタを提供してみるが、だんまりを決め込む二人。おっと、このままだと俺が虚空に向かって話す悲しいやつになっちまう。ほら、前のやつが振り返ってジロジロ見てんじゃん。
「…自分、帰っていいすか」
先に口をひらいたのは森だが…零点だ。次の人ー。
「えー。また今度!」
待て待て。何逃がそうとしてんだ。しばらく帰さないぜぇ…
「ゲーセン行こうぜ」
えー、と不満げに口に出した羽田は無視。森は俯いてる。
「あれは俺の早とちりだ。もう忘れろ」
それにあのスパイクは、二人がトイレに行った隙にさっきリサイクルショップで定価の二倍の値段で買い取ってもらった。めでたくもない、転売ヤーデビュー。てなわけで、ぶっちゃけどうでもよくなった。ま、そのことを二人には言ってないからまだ森には弱みがあることになってる。
「…分かりました。行きます」
うん、従順。いいね。やっぱ後輩って先輩を慕うものだよなぁ…。ザ・後輩の姿を受けて、なんか違うなと思う俺はおかしいんだろうか…?思えば今年の一年は、森だけでなく反抗的な奴が多い。初日からタメ口のやつ、なれなれしく肩を組んでくるやつ、練習の片づけをしないやつ、欠席連絡をしないやつなどなど…おまけに、一年がちゃんとできないのは俺ら先輩のせいにされるからたまったもんじゃない。島田に言わせるなら
「お前らがたるんでっから、一年もたるむんじゃ!」
てなことらしい。理不尽極まりない。そんな感じで後輩への愚痴をぶつぶつ唱えていると、いつの間にかゲーセンに着いてた。さて、何をしようか。
「…先輩、あれしません?」
そう言って森が指さしたのは…キックターゲット?要するに、蹴って的を倒すありがちな奴か。
「やってもいいけどなー。俺が無双しちゃってつまんないしなー」
しょうもないイキりをかます羽田は完全無視。
「やってもいいが、何か罰ゲーム作ろうぜ」
「…何すか」
おっと、すぐに食いつかれるとは思ってなかったからまったく考えてなかった。えー罰ゲーム罰ゲームっと…。やべ、何も思いつかん。こういう時は、AIに聞いてみるのが吉。えっと、「あなたはサッカー部の学生です。メンバー内で罰ゲームをするなら何?」と…おっ、出てきた。なになに…腕立て、ダッシュ、リフティング、GK体験ねぇ。腕立てはベタだけど、やっぱこういう時は定番よねってことで
「負けたやつは…このホールの真ん中で腕立て30回!」
森と羽田のは?という声がシンクロした。ぶっちゃけ自分でも何言っちゃってんのって感じだけど、男に二言はない。腹ぁくくってやるしかねぇ…
これから週1投稿にします。コメントいただけたら幸いです。