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パーフェクト・デイズ⑩

この作品は10作目です。

 はぁー。疲れたー。あの北村とかいう顧問えげつないな。加えてくる圧がすごい。ま、元川とのことがバレてないから大丈夫っしょ。あの試合から1週間が経過した。地区でも最強格といわれていた膳南を破ったことは、島田を大いに満足させたようだ。事あるごとにあの試合の振り返りをしてくる。つか練習試合じゃねーか。しかも1-0だから、ウカウカしてる場合じゃないだろ。もちろん、口に出して言うことはない。心の中でそっと思っているだけである。でもこれはヘタレとかチキンとかそういうんじゃない。自分の身を守るために必要なことなのだっ!

「…先輩。頷きすぎて気持ち悪いっす」

「ホントにー。マジでキモい」

遠慮容赦なく罵詈雑言を浴びせてきたのは、森と羽田だった。今、俺たちはショッピングモールに来ている…いや、訂正。もともと美舞と一緒に来ようとしていた。なのに唐突に今日の朝に推しのライブ配信があるとかなんとか言ってドタキャンをかましてきた。しかし、わざわざ予定を開けていたのに、彼女のドタキャンで何もできなくなっていては片手落ち。羽田を誘ってゲーセン巡りに来た。そしたら、羽田が人数多いほうが楽しいとかいう謎理論(人多いと気ぃ回すからめんどくさいだろぉ!)によって、なぜか森も来ることになって、ハッピーセットが完成した。ったく。羽田だけならまだしも、森もいるとなるとめんどい。さっきもゲーセン行くって言ったら「…今日お金ないんで」の一言でおじゃん。なんでショッピングモール行くのに金がないんだよぉ!そう言って問い詰めたら「…羽田先輩からショッピングモール行こうとしか言われてないんで」と先輩に責任転嫁。羽田に聞いたら聞いたで「え?何かヤバかった?」のキョトン顔が返ってきた。…頭が痛い。というわけで、金をかけずにショッピングモールを楽しむというある種の縛りプレイが始まった。で、今はとりあえずウインドウショッピング。服、ゲーム、食いもん…欲しいものはあるのに、なんで金を使えないんだ。はぁー、とため息を繰り返しながら歩いていたら、突然森が立ち止まった。ん?なんだ?森の視線を追うと…サッカーのスパイクのポスターがあった。…こいつ、マジか。俺もサッカー好きとして学年で通っているが、森には勝てないだろうな。スパイクのポスターを見て立ち止まるとかしないもん。んー…これ欲しいのか?確かに森のスパイクは、この前見たときかなりボロボロだと思ったが。改めてポスターを見る。最近話題の女優がスパイクを持ってニッコリしているポスターだ。スタートダッシュ!とでっかく書いてあるから、何かの企業のキャンペーンなんだろう。スパイクは、白地に金色の線が入っているだけのシンプルなデザイン。ちらりと横目で森を見ると、まだポスターを見続けている。そんなに欲しいですアピールされたら、買わなきゃいけない空気になるだろ!そんな思いを込めて軽く睨んでみても、こっちを見ようとしない。はぁ…しょうがない。さっさとウインドウショッピングを再開させたかった俺は、羽田に森を連れて先に行くよう伝え、そのスパイクを買いに行った。税込みで10000円ジャストってことは、やっぱり何かの割引が効いてるんだろうな。そんなことを思いながら購入した後、二人と合流した。

「森」

「…なんすか」

「この前の試合、すごかったな」

「…ありがとございます」

「だから、お前にちょっとしたご褒美だ」

そう言ってスパイクの箱を渡す。

「…え、これって」

「さっきお前が見ていたポスターのやつだ。欲しそうだったからな。プレゼントだ」

うわ。俺、めっちゃいい先輩みたいじゃね?俺も成長したな…自分の成長にうんうんと頷いていたら、森が先輩、と呼んできた。どうした、愛しの後輩よ。

「…あの、いらないっす」

「…ほへ?」

「…いや、この前スパイク買い換えたんで」

「え、いや、でも、これが、欲しいんじゃ、ないの?」

「…いや、スパイクじゃなくて」

何やらモゴモゴ話してるが、財布がすっかり軽くなってしまった俺の耳には届かなかった。そしたら、羽田が爆笑しながら教えてきた。

「森が見ていたのは、スパイクじゃなくて女優の方!あいつの推し!」

コメントいただけたら幸いです。

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