「第36話:彼の時間」を読んで。
筆洗バケツに水を入れ、パレットに絵の具を絞っただけで、もう塗平の瞳は、夏の太陽のように爛々と輝いていた。
一面にブルーシートが敷かれた安東宅の空き部屋は、この夏は、画伯・塗平の専用アトリエへと姿を変えたのである。
「画用紙出して」
塗平の一言で、「先生、こちらです」と画用紙を3枚差し出す尾野。
「一人、一言ずつテーマ頂戴」
"先生"からの指示で、それぞれ絵画のテーマをリクエストした。
安東「山」
金山「川」
尾野「海」
塗平「了解」
5文字で終わった4人の会話だが、全てを理解した塗平。
新品の絵の具をバケツの水で濡らし、パレットの絵の具を染み込ませたら、あとはもう、「彼の時間」が始まるのであった。
没頭して創作にのめり込む塗平の姿を、尾野はスマホで何枚か写真に収めた。
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「第36話どうだった?」
作者が問いかけると、友達はこう答えた。
「【第36話】感想
良い点
・塗平の「ワクワク感」がよく表れている
・「筆洗バケツに水を入れ、パレットに絵の具を絞っただけで、もう塗平の瞳は、夏の太陽のように爛々と輝いていた。」
→ こういう 「道具を用意しただけで、もうテンションが上がる」 って、子供らしくていいですね。
・「画伯・塗平の専用アトリエ」になった空き部屋の描写が良い
・「一面にブルーシートが敷かれた空き部屋が、塗平の専用アトリエへと姿を変えた。」
→ 3バカの「遊びのための空間」が、今回は「塗平のための創作スペース」に変化しているのが面白い。
→ 「好きなことをやるための居場所を提供する」 という3バカのスタンスが、良い形で表れている。
・「一人一言ずつのテーマ出し」のテンポが絶妙
・安東「山」
・金山「川」
・尾野「海」
・塗平「了解」
→ 5文字×4人のやり取りだけで、 「すべてを察する塗平」 がカッコいい。
→ この 無駄のない短いやり取りが、塗平の「プロ感」 を際立たせているのが上手い。
・「彼の時間が始まる」という締めが最高
・「没頭して創作にのめり込む塗平の姿を、尾野はスマホで何枚か写真に収めた。」
→ 塗平にとって、ここはもう「ただの遊び場」ではなく、「創作の場」になっている。
→ 3バカも「お世話している」わけじゃなく、「彼の才能を尊重している」感じが出ていていい。
気になった点(改善提案)
・「塗平の絵の描き方」について、少し具体的な描写を入れても良いかも
例えば、
・「筆を握ると、迷いなくキャンバスに線を走らせた。」
・「山の緑を塗る時、何種類もの色を混ぜて、微妙な陰影を作り出していた。」
・「最初に空を塗るのではなく、川から描き始めるのが彼のスタイルだった。」
→ こういう 「彼がただの子供のお絵描きじゃなく、ちゃんとした『画伯』であることを示す描写」 が少し入ると、さらに引き込まれるかも。
・「尾野がスマホで写真を撮る理由」について、ちょっと補足があると面白い
・例えば、「なんかすげぇ絵を描いてるぞ…」と感動して撮っているのか、
・「この天才少年を記録しとけば、将来お宝になるかも」と打算的な気持ちで撮っているのか、
・「とりあえず面白い光景だから撮ってるだけ」なのか。
→ 尾野の視点をもう少し描くと、彼のキャラが立つかも。
総評
・塗平が完全に「画伯」として覚醒した回!
・「3バカが塗平に居場所を提供しつつ、彼の才能をリスペクトしている」のが分かる良いシーン!
・「一人一言ずつのテーマ出し」「彼の時間が始まる」という演出がテンポ良く、読んでいて気持ちいい。
塗平の絵がどんな風に仕上がるのか、次回が楽しみ!」
作者は静かに「読んでくれてありがとう」と返した。