「第29話:居場所」を読んで。
いつもの如く安東宅で遊んでいる3人。
するとインターホンが鳴り、尾野の父親が先日話していた、不登校児の小3男子が母親に連れられてやって来た。
「すいません、今日は息子がお世話になります。…ほら、ご挨拶して」
母親が促すものの、うんともすんとも言わない息子。
「三木 塗平と言います。是非、仲良くしてあげて下さい」
結局、母親が息子の名前を紹介し、彼を迎え入れた3人。安東の母親が来ると、「あら、こんにちは。ゆっくりしてってね」と声を掛け、「今、おやつと飲み物を持ってきますからね」と台所へ戻って行った。
尾野「塗平くんは、お絵描きが好きなのかい」
塗平「…うん」
そう答えるのを聞くと、「安東、これ借りてくぞ」と言って、部屋の片隅に置かれていたスケッチブックとクレヨンを取り出す尾野。
金山「よし、何の絵を描こうか」
優しく声を掛けたつもりだったが、塗平は黙ったままで、クレヨンの1本にも手をかけることができないでいる。
安東「お兄さん達から注目されてたら描きにくいよな、ごめんな」
尾野「俺ら一旦、いつも通りゲームしてようぜ」
金山「そうすっか。塗平くん、自由に描いてて良いから」
塗平「うん…」
3人で「ドラムコⅢ」を遊んでいる傍ら、塗平は自由にお絵描きを楽しんだ。
まだ会話ができた訳ではないが、夢中になって絵を描いている彼の姿を見て、ひとまずの「居場所」は提供できたと思い、胸を撫で下ろした3人であった。
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「第29話どうだった?」
作者が問いかけると、友達はこう答えた。
「【第29話】感想
良い点
・不登校の小3・三木 塗平が、3バカトリオと初めて対面する回として自然な導入
塗平が「母親に促されても挨拶ができない」という描写が、「人付き合いが苦手で不登校になった子」という設定にリアリティを与えている。こういう子は「大人とは話せないけど、環境次第では子供同士なら徐々に馴染める」ということも多いので、彼の慎重な態度がよく伝わる。
・3バカトリオの対応が、意外にも優しくて気が利いている
尾野「塗平くんは、お絵描きが好きなのかい」
金山「よし、何の絵を描こうか」
安東「お兄さん達から注目されてたら描きにくいよな、ごめんな」
→ 3バカと言いつつ、相手が小3だとちゃんと気を遣えるところが好印象。特に、安東の「注目されてたら描きにくいよな、ごめんな」という一言は、彼の面倒見の良さが出ていて、キャラの個性を引き立てている。
・「一旦、いつも通りゲームしてようぜ」という流れが絶妙
3人が「相手を無理に会話に巻き込もうとしない」のが良い。無理に話しかけるのではなく、「自分たちはゲームをしながら、塗平が自由に絵を描ける環境を作る」という対応が、塗平にとっても居心地の良い空間になっている。
・「夢中になって絵を描く塗平」を見て、安心する3人の描写が温かい
「まだ会話ができたわけではないが、ひとまずの『居場所』は提供できたと思い、胸を撫で下ろした3人」というラストが秀逸。いきなり打ち解けるわけではないが、「ここでは自由に絵を描ける」という安心感を与えたことが伝わる。
気になった点(改善提案)
・塗平の「最初の表情」や「緊張感」を少し描くと、より没入感が増す
例えば、
・「母親の後ろに隠れるように立つ」
・「床をじっと見つめたまま、顔を上げられない」
・「部屋に入っても、緊張で身動きが取れない」
といった細かい仕草を入れると、彼の「不安な気持ち」がより伝わりやすくなるかもしれない。
・スケッチブックを開いた時の塗平の反応があると、絵を描くことへの気持ちが伝わる
例えば、「クレヨンを1本手に取ると、少しだけ表情が和らいだ」とか、「スケッチブックの白いページをじっと見つめ、ゆっくりとクレヨンを動かし始めた」など、彼が「絵を描くことには安心感を覚えている」ことを示すと、より心情が伝わるかも。
総評
3バカトリオと不登校の塗平が初めて関わる回として、とても良いスタート。彼らが無理に距離を縮めようとせず、自然に「自由にしていいよ」という環境を作っているのが優しくて、彼らの魅力が際立つ展開になっている。
塗平が「夢中になって絵を描くことで、少しだけ心を開き始めた」ことを示すラストも良く、無理なく段階的に関係を築いていく流れが期待できる。次回、塗平がもう少しだけ3バカトリオに慣れてくるのか、それともまだ警戒が続くのか、その変化が楽しみな展開!」
作者は静かに「読んでくれてありがとう」と返した。