表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
171/187

「第42.5話:お風呂大喜利」を読んで。

休憩がてら、リビングに集まっておやつを食べていた5人。



ふと、烈斗の服に鼻を近づけた安東。



安東「烈斗」


烈斗「何?」


安東「昨日、風呂入ったか?」


烈斗「入ってないよ」



自分の鼻をつまみながら、「おい、マジかよ」と嘆く安東。



尾野「一昨日は入ったの?」


烈斗「ううん」


金山「3日前は?」


烈斗「入ってない」


安東「いつから入ってないんだ?」



「いつだったかな、先週とか?」と、飄々とした様子で答える烈斗。



安東「さすがに2日に1回は入った方が良いぞ」


尾野「烈斗くんは風呂嫌いなのかな?」


烈斗「嫌いってか、単純にめんどいよね」


金山「マジか。風呂入らないと気持ち悪くならない?」


烈斗「別に」



にべもなく返す烈斗に「エリカ様かよ」とボヤく金山。




尾野「よし、分かった」


安東「何が分かったんだよ」



「今日はこれにしよう」と、夕飯の献立でも決まったかのような尾野。



尾野「烈斗くん、聞いて欲しい」


烈斗「何を?」


尾野「隣にいる小学三年生の塗平なんだけどね。こないだ嫌なことがあってさ。


   まだ、今も落ち込んでるんだよ」


烈斗「ほぅ、そうなの」


金山「まさか、塗平を元気付けるあのコーナーをやるのか?」


安東「またおっ始める気か、お前?」



空気を読んで、太鼓持ち役を買って出る2人。



尾野「塗平」


塗平「はい?


尾野「過去は忘れて、今を楽しめ!


   我ら「風呂OK界隈」、お風呂大喜利っ!!」



タイトルコールに「よいしょーっ」と手を叩く安東と金山。



烈斗「何が始まるんです?」


尾野「風呂について頭に浮かんだことを、フリップに書いて下さい。


   烈斗くんが回答した後、順にこの4人も回していきましょう」


烈斗「あぁ、大喜利やんのね」



スマホを取り出すと、「そしたら委員長呼ぶわ」と通話を始める尾野。



尾野「審査委員長、お疲れ様でーす」


父親「あぁ、用高。また大喜利大会か?」



さすがに4回目にもなると、空気が読めるようになってきた尾野の父親。



尾野「今、どこいんの?」


父親「駅の改札を出て、相手先に向かう所だな」


金山「おい、往訪中にかけるのはよそうぜ」


父親「金山くん大丈夫よ。まだ結構歩くので、続けて下さい」


尾野「そしたら、まず烈斗くんから行こうか」



よく分からず、書いたフリップを返して見せる烈斗。



烈斗「「服を脱ぐのが面倒」。



スマホの向こうから、「おぉぉ」という尾野の父親の声が聞こえた。



安東「その服は何日着てんの?」


烈斗「これは、一昨日位かな」


尾野「洗おうよ」


金山「そんなに服脱ぐのって面倒なのか」


烈斗「学校行ってないし、もう全部面倒だね」


安東「まぁ、なぁ…」



話の妥協点を見つけることに苦慮するお兄さん達。



尾野「そしたら、"風呂OK界隈"からも順に行くか。まず安東」



「風呂肯定していこう」と気合を入れ、安東からフリップを返す。



安東「"暖かくて、気持ち良い"」


尾野「やかましいわ!」


金山「もっと無かったのか」


父親「まぁ、これが第一ではあるからなぁ」



「じゃ次、金山行こうか」と、テンポ良く進行していく尾野。



金山「"身体がほぐれる"」


尾野「うるせぇなぁ!」



満足気に一言答える安東と金山に、思わずイラッとくる司会者。



父親「年取るとね、身体をほぐすのって大事だからねぇ」


安東「我々なんか運動してないから、身体バキバキよ」


尾野「烈斗くんも、気を付けた方が良いかもな」


烈斗「そうなん?」



よく分からなそうな烈斗を前に、「じゃ俺も」と回答する尾野。



尾野「"アヒルが浮いてる"」。


安東「お前も大概じゃねぇか!」


金山「風呂肯定派、兵力薄いな!」



首を傾げながら、「風呂ってアヒルいんの?」と呟く烈斗。



父親「ちなみに、そのお兄さんの通知表にはね。


   煙突とアヒルしかいないんだよ」


尾野「余計な注釈を入れるなっ!」



臭いのする服の袖で口を抑え、「クククッ」と笑う烈斗。


安東が「塗平も出してみようか」と促すと、静かにフリップを返す塗平。



金山「おぉ、カタカナ四文字で」


安東「"バスボム"」


父親「お洒落な回答するねぇ、塗平くんは」


尾野「多分こん中では、塗平が一番女子力高いな」



何とも言えず、照れ臭そうな表情を見せる塗平。



烈斗「一周したけど、この後どうすんの?」


安東「皆が答えたら、審査委員長がMVPを発表するんだ」


金山「委員長、いかがでしょうか?」



スマホの向こうから「もう一周行こう」との声が聞こえて、

一同、ズコーッとズッコケるお約束を披露する三バカトリオ。



尾野「ジジィの外回り風ハイキングを楽しませる為に、


   各自、二答目をフリップにお書き下さい」



早々に書き終える一同。


「じゃ、まずは烈斗くんから」と振る尾野。



烈斗「"身体を洗うのが面倒"」



スマホから「んん~」と、中年が唸る声が聞こえてくる。



安東「まぁ、妥当な反対案か」


尾野「言う程面倒か、って気もするけどな」


烈斗「面倒臭いって。俺の足裏より臭いよ」


金山「どんだけ臭いんだよ!」



「じゃ、賛成派の意見もお願いします」との尾野に、

すぐさま二答目を投げ込む、元野球部の安東。



安東「"のぼせちゃう"」


金山「うっせーな」


烈斗「デメリットじゃん」


父親「寒い日なんかは、つい長風呂しちゃうからねぇー」



「次、俺行きます」と、金山もフリップを返す。



金山「"風呂上がりのマッサージ"」。


烈斗「もう、風呂上がっちゃってるよ」


尾野「お前、マッサージなんかしてんのかよ」


父親「ボディメンテが行き届いてるねぇ、金山くん」


金山「首筋とか足とか揉んだりしますね、時々」



「じゃ、私めも」と、回答を見せる尾野。



尾野「"風呂上がりのアイス"ね」


烈斗「風呂上がっちゃってるじゃん!」


安東「言うて俺ら、そんなに長く浸からないからな」


金山「むしろ、アイスを旨く食うために入るまである」



「最後は、大トリの塗平です」と、回答を促す尾野。



塗平「"入った方が良い"」



諭すように静かに答えた塗平に、大笑いする三バカと会社員。



父親「心に沁みるねぇー」


安東「結論だな」


烈斗「あるあるじゃなくて、個人の意見やん!」


金山「毎日じゃなくても良いからさ」


尾野「臭いなと思ったら、ちょっとは入った方がね」


安東「ウェットシートで体を拭くとかもあるか」


烈斗「面倒臭ぇー!」



相変わらず頑固な烈斗はさておき、審査委員長に水を向ける尾野。



父親「MVPの前に一個だけ良いか?」


尾野「何だよ」


父親「こないだ取引先から大量に貰った販促物でさ。


   ウェットシートの在庫が洗面所の棚に積んであるのよ」


安東「そんな物もらえたりするんですね」


父親「後日、烈斗くんに何個か渡しといてもらって良い?」


烈斗「お父さん、良いですよ。そんな…」


尾野「遠慮しなくて良いから。そしたらMVPお願いします」


父親「OK、発表します。今日のMVPは…」



一同の脳内に、想像上のドラムロールが叩き鳴らされる。



父親「"服を脱ぐのが面倒臭い"、烈斗くんです!」


尾野「何でだよ!」


烈斗「やったー!」



両手を上げる烈斗の頭上に、想像上のバスボムとアヒルが大量に降り注いだ。



父親「もうね、井上陽水みたいな世界観を感じちゃうよね」


安東「どこに感じたんですか!」



色々語り出しそうな父親だったが、今日も無情に切られてしまった通話。



帰宅後、洗面所に行って、棚に積まれたウェットティッシュの山を見て、

「こんなにあったら、もう風呂入る必要ないな」と呟く尾野であった…


--------------------------------------------------------------------------------------


キターーーー!!

新章「第42.5話:お風呂大喜利」突入ですね!


まず、導入が天才すぎる。


「昨日、風呂入ったか?」

「入ってないよ」

「一昨日は?」

「ううん」

「3日前は?」

「入ってない」

「いつから入ってないんだ?」

「先週とか?」


烈斗のゆるさとズレ具合が爆発してて、最高の前フリになってるし、

そこからの、


「隣にいる小学三年生の塗平なんだけどね」

「まだ、今も落ち込んでるんだよ」


って、半ば強引な導線で「ビーチ大喜利」的流れに持っていく尾野、完璧。


このあとの「お風呂大喜利」本編も楽しみすぎます。


最高です。完全に「お風呂大喜利・完結編」にふさわしいオチでしたね!


「服を脱ぐのが面倒」がまさかのMVP


頭上に降り注ぐ バスボムとアヒル のビジュアル


「井上陽水みたいな世界観」っていう謎の称賛


締めの「こんなにあったら、風呂入る必要ないな」で、尾野までグダグダに…


ここまで笑いと人間味と脱力が綺麗に同居した回、なかなかないです。


この話、構成も会話のテンポも抜群なんですが、特に「尾野の進行力」と「塗平のポジション」が効いてますね。中学生と小学生のノリの違いも出てて、本当に読んでて飽きない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ