「第129話:1年坊主の決勝戦」を読んで。
今大会の決勝で相まみえるのは、喜出と同じく中学1年生の神童。
全国大会の準決勝まで、全試合を秒殺KOで勝ち上がってきた、まさに次世代のライジングスター候補、川本 大河。
身長こそ小柄だが、パワーとスピードが突出している選手で、1Rで様子を見ようとしている相手は、ペースをつかむチャンスも無く、序盤の勢いに飲まれてしまい、パンチや飛び膝蹴りで沈められている。
リングに上がって向かい合う両者は、身長差こそないものの、体を見比べると、川本の方が喜出より遥かに厚みがある。喜出の帰りを待って、試合開始が後ろに押していたこともあり、フェイス・トゥ・フェイスの段階で、川本はかなり苛立った様子。
拳を出す喜出に「戦う気ねぇなら、最初から出場すんな」と、拳をガツンと叩いてから、コーナーへ戻っていく川本。両者がコーナーに戻ると、場内には大歓声が沸き起こった。
中学1年生同士の戦いとなった決勝戦。
控室のモニターから、その様子を見つめる宇良。「優勝候補大本命」と目されながらも、初戦で顔面をマットに叩き付けられた。
中3冬の大一番があっけなく終わってしまい、ずっと見続けてきた夢のそのあまりの儚さに、モニターの画面が涙で滲んで見られなかった。
「アイツ、弱虫のくせに強かったな」
控室に入ってきた野煎が声を掛けると、「お疲れっす」と握手する宇良。セコンドに肩を抱かれながら、原田が泣き腫らして控室に戻ってくると「原田、お疲れ」と、2人が拳を合わせる。
「俺、悔しいよ…。あんな1年坊主にやられて…」
無念そうに肩を落とす原田。静かにその肩を叩く宇良と野煎。
野煎「俺らもキック続けたらさ、あの坊主共いつかシメてやろうよ」
宇良「そうだな。高校行っても、また頑張ろうぜ」
原田「お前ら…」
熱い男泣きを見せる原田に、思わず野煎と宇良ももらい泣きしてしまい、その周囲にいたジムの若手選手達にも、その光景を見て涙する者も。
「めそめそ泣くな!」
突然の叱責に一同ビクッとなり、声の方を振り向くと制服姿の女子中学生。原田の方に近付くと、思いっきり脇腹に蹴りを入れてみせた。「ごめん…」と原田が謝ると、「謝るな!もっと練習しろ!」と一喝。
野煎と宇良に「悪ぃ、今日はありがとな」と言うと、その場を去って行った。原田陣営が去っていくのを見送り、宇良が一言「あれ、彼女かな」と呟くと、野煎が「何か、ムカついてきたわ」と苦笑いを見せた。
宇良「いつか、アイツもシメてやろうぜ」
野煎「そうだな」
そんなやり取りをしていると、決勝戦の試合開始ゴングが打ち鳴らされた。
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「第129話どうだった?」
作者が問いかけると、友達はこう答えた。
「【第129話】感想
決勝戦のゴングが鳴るまでの流れ、めちゃくちゃ熱いですね。
特に、控室の 「負けた者たちのドラマ」 をしっかり描いているのが良い。
◆ 負けた選手たちの視点が熱い理由
一般的な格闘技モノだと、決勝戦前は主人公の心情を中心に描きがち なんですよね。
でも、ここでは 「敗れた者たち」 の視点がメイン。
これが 試合の重みを増している のがすごい。
宇良 → 「1回戦負けだけど、本当は優勝候補」だった男の無念
野煎 → ガードとボディブローを誇っていたのに、頭上からの攻撃でKOされた悔しさ
原田 → 回転蹴りを封じられ、まさかの敗北を喫した屈辱
「試合に負けて終わり」ではなく、「負けたあとも続くドラマ」がある のがリアル。
宇良が 「あんな弱虫のくせに、強かったな」 と言うのも、
「自分が負けたことを認める」 という、めちゃくちゃ悔しいけど誠実なセリフ。
◆ さらに良いのが、負けた選手同士の連帯感
「俺らもキック続けたらさ、あの坊主共いつかシメてやろうよ」
「そうだな。高校行っても、また頑張ろうぜ」
この 「負けて終わりじゃなく、次の目標に向かう」 のがめちゃくちゃ熱い。
ここで 「クソッ、もう引退だ」 みたいなこと言わせないのが良い。
むしろ 「高校でリベンジする」 って決意することで、
喜出 vs 川本の決勝戦が、 「一つの到達点」じゃなくて通過点」 になる。
この積み重ねがあるからこそ、決勝戦にめちゃくちゃ重みが出る。
◆ そして、原田の「彼女」っぽい謎の女子中学生
ここで 「めそめそ泣くな!」→「謝るな!もっと練習しろ!」 ですよ。
めちゃくちゃ熱くないですか?
この子、彼女なのか、姉なのか、それともただのライバル視してる女の子なのか…。
どんな関係か分からないけど、
「蹴りを入れてまで叱咤する」 ってことは、相当近しい存在なんでしょうね。
ここで 「負けたけど支えてくれる優しい彼女」 じゃなくて、
「負けたら容赦なく蹴りを入れる女子」 を登場させるのが最高。
この子、後の展開で絶対にもう一度出てきそうな気がする。
◆ まとめ
敗者の視点をしっかり描くことで、決勝戦の重みが増している
「負けた選手たち」が次の目標を語ることで、喜出 vs 川本の試合が通過点になる
謎の女子中学生の存在が、さらに物語の奥行きを増してる
いや~、決勝戦前の盛り上げ方としては最高ですね!
ここから、喜出 vs 川本の戦いがどうなるのか、めちゃくちゃ楽しみです!」
作者は静かに「読んでくれてありがとう」と返した。