「第12話:底辺の2人」を読んで。
「私さ、学校行って家帰るまでに会話するの、北野くんだけなんだよね」
中間テストにボヤいたかと思えば、今度は人間関係をボヤき出す珠莉。
「私も正直、クラスで人と会話することは無いですね」
北野もまた、同等の内容を淡々とした口調で返してくる。
珠莉「バレエもあるし、部活なんて面倒だなって最初は思ってたんだけど、結果的に、北野くんという話し相手が見つかって良かったわ」
北野「私も塾の前に部活は結構しんどいと思っていましたが、白鳥さんとお話ができるのは、自分にとってはプラスなことでした」
互いにクラスでは友人ゼロ。
珠莉「もし、クラスでムカつくことがあって、それを北野くんに話せなかったら、ずっと自分の中でため込んで、どこかでいきなり爆発してたかも」
北野「それは危険ですね」
珠莉「北野くんは、授業と授業の間の休み時間とかどうしてる?」
北野「休み時間にはクラスを出て、廊下とか外でぼんやりしてます」
珠莉「へぇー、それ何か良いかもね」
北野「居場所も無いですから。外気を吸わないと窒息しそうになります」
珠莉「めっちゃ分かる」
およそスクールカーストの「最底辺」と言っても良いような2人の会話は、このストレッチ部の部室から一歩出たら、到底理解を得られるものではない。
珠莉「あっちの3人は、同じクラスで友達同士だもんねぇ」
北野「そうですね」
珠莉「しかも縦に並んで3人だから、いつでもお喋りできるでしょ。そんな仲良い人達がクラスにいるとか、私には想像もできない」
北野「楽しそうで何よりです」
バレエと勉強、それぞれ自分のやることを一生懸命やってきたはずなのに、気付くと周りには、楽しい人間関係のようなものが作られていなかった2人。
そうこう話していると、部室のドアをノックする音が聞こえた。
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「第12話どうだった?」
作者が問いかけると、友達はこう答えた。
「【第12話】感想
良い点
・珠莉と北野の「同類感」がしっかり描かれている
「学校で話す相手が北野くんだけ」という珠莉の発言に、北野も「私も同じです」と返すことで、2人がいかに似た立場にあるかが明確になる。どちらもクラスでは孤立しているものの、ストレッチ部で唯一の会話相手を見つけているのが印象的。
・「居場所のなさ」に対する共感がリアル
北野の「外気を吸わないと窒息しそうになります」という言葉に、珠莉が「めっちゃ分かる」と即答するのが、2人の共通した孤独感を強調していて共感を呼ぶ。学校という空間が息苦しいものであり、彼らにとっては「ストレッチ部の30分」が唯一の気楽な時間であることが伝わる。
・スクールカーストの対比が明確
珠莉と北野が「最底辺」であることを自覚している一方で、3バカトリオは「いつでもお喋りできる環境」にいるという対比がはっきりしている。特に、「3人並んで座っているから、ずっと話せる」という言葉が、珠莉にとっては想像もできない環境であることを示しているのが良い。
・ラストのノックが展開の転換を予感させる
静かに2人の孤独感を語る流れから、最後に「部室のドアをノックする音」が入ることで、新たな展開を示唆している。これが誰なのか、何をしに来たのかが気になり、次への引きがうまく作られている。
気になった点(改善提案)
・「スクールカースト最底辺」という表現をもう少し描写で見せるとより効果的
言葉で説明するのもありだが、「例えば体育の授業ではペアがなかなか見つからない」とか、「給食の時間、いつも1人で食べている」といった具体的なエピソードが少しでも入ると、読者がよりリアルに2人の立場を理解しやすくなる。
・「楽しそうで何よりです」の北野のセリフにもう少し感情を滲ませても良い
今のままだと「淡々としすぎている」ので、「少し自嘲気味に言った」や、「皮肉めいた笑みを浮かべながら」といったニュアンスを加えると、彼の内面がより伝わるかもしれない。
・「そうこう話していると」ではなく、少し緊張感を持たせても良い
「まるで2人の会話を遮るように、部室のドアがノックされた」といった書き方にすると、「静かな2人の空間に変化が訪れる」という演出がより際立つかもしれない。
総評
珠莉と北野が「お互いしか話し相手がいない」という関係を、自然な会話の流れでしっかりと描いている回。2人の共通点や孤独感が丁寧に表現され、読者が感情移入しやすくなっている。一方で、もう少し2人の立場を具体的なエピソードで補強すると、より深みが出るかもしれない。
最後のノックが次回の展開を期待させる良い締めになっているので、「この来訪者が誰なのか」が非常に気になる。次回も楽しみにしています。」
作者は静かに「読んでくれてありがとう」と返した。