表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鋼鉄の舞姫 ~昭和レトロ活劇・埼玉よ、滅びることなかれ~  作者: YOI
第五章 北の大地にて(八月)
68/101

蕎麦屋の中身

「ども。お初に、お目に掛かります。アタイは群馬支部、鋼組組長、草津鶴羽(くさつつるは)云うねん。宜しゅう」


 大刀を肩に抱えた女性が、軽く手を上げる。

 身長は160センチ程の細身で筋肉質。20歳前後の容姿にショートカットの髪。

 一見して美人顔だ。

 そんな草津に対して、浅倉も挨拶を返す。


「初めまして。埼玉支部、鋼組組長、浅倉上乃(あさくらあがの)と謂います。宜しくお願いします」


 二人はお互いに手を差し出し、握手をかわす。

 お互いに、肌の体温を感じたところで、先に口を開いたのは浅倉だった。


「まず初めに聞いておきたい事が有るのですが」

「なんや? ナンボデモきくで。……だが、想像は、出来る。何で群馬もんがこんなとこに居るのかって、事やろ」


 草津の口元がニヤリと緩む。

 だが、浅倉はその表情に対し、半分目を閉じて、すました顔を作り出す。


「いぇ、その似非(えせ)関西弁は何かと思いまして」


 草津が噴き出して笑う。


「かかか、これか? これはアタイの趣味や。気ぃせんといて」

「いゃいゃ、めっちゃ気になりますがな」


 浅倉は、草津に付き合って、つっこみを入れる。


「あーははは! あんさん面白いな」

「別に、貴女を楽しませるために居る訳じゃ無いんですけどね」

「せやな。……で、アタイらがなんでここに居るかは聞きへんのか?」


 浅倉は、被っているベレー帽を正し、姿勢も正す。


「……そうですね。話したいのであれば、どうぞお話下さい。止めはしませんし、ちゃんと聞いてあげますよ」

「……いけすかんヤッちゃなぁ。……自分では聞いてない。だが、話したければ話せという訳やな」

「まっ、そういう事です」


 草津は顎に手を置き、少し間を取りながら、思案する。

 場の空気を浅倉に持っていかれている今、何とかして自分の方に引き込みたいと画策しているのだ。


「……せやな、別に話してもかまへんが、面白ぉ無いで」

「じゃぁ、結構です」

「まちまち、ちょいまってや。ソコは止めるとこやろ。少しくらい、アタイを立ててくれても良いんちゃう? アタイがここにいる理由、聞いたら、腰抜かすで」

「いえ、想像はつくので」

「それじゃぁ、その答え、聞かせてもらおうかいな?」

「いいですよ。ようは、あれでしょ。単純に群馬支部、つまり高崎市からの方が近かったってだけでしょう?」

「……フフフ。……当たりや」

「えっ……当たりですか? 腰抜かす答えは何処に行ったのですか?」

「そんなものは、あるようで無いもんや」

「いい加減な……」


 そんな二人の横から、先程、浅倉に足蹴りを繰り出した女性が声を掛ける。


「鶴羽さん、ソロソロ無駄話止めてもらっても良いですか?」

「なんやねん伊香(いが)! 無駄話なんてしとらんわ! それに前に云うたろ。アタイの事は、『つーちゃん』と呼べと」

「……はい、そうでしたね。では、ボクの名前も伊香保(いがたもつ)なので、『たもちゃん』って呼んでもらってもいいですか?」

「分かったよ伊香」

「どの辺が分かっているんですか?」


 2人の会話に、浅倉は、一歩足を引きながら、2人の顔をさりげなくインプットする。


 ……この似非(えせ)関西人達はいったい何なの? 私に漫才でも見せたいの?

 ……とはいえ、こんなふざけた二人だが、鹿鬼を倒したのは事実。

 つまり、その実力は折り紙付きって事よね。


 浅倉が床に倒れている鹿鬼に目を向ける。

 パックリと右半分が切れた胴体からは、赤黒い血が流れ出ている。

 胴の半分以上を一刀両断しているところを見ると、草津の刀の威力がまじまじと分かる。


「せや、浅倉はん」

「何?」


 バガァァァァアアアアン!


 浅倉が返事をすると同時に、浅倉の背後にある金物屋の屋根が吹き飛んだ。

 浅倉が、後方に目を向けると、上空には、何やら大きな物体が舞い上がっている。


「云い忘れていたけど……」


 ひゅるるるるるる~~~~。

 ドサァァァアアアアッ!


 道路に肉の塊が落ちる。


「……もう1体の鹿鬼も、うちの所の『万座(まんざ)』が片付けておいたで」

「あっ、有り難う……」


 浅倉の声が震えた。


「よかよか。ついでやねん。まっ、埼玉さんには、荷が勝ちすぎる様なら、ゆうてや。アタイらが、まっさらにしてやるさかい」


 浅倉の拳が強く握られる。


「お気遣い有り難うございます。ですが、今後はその様な事が無いように、気を付けます」

「エエねん、エエねん。弱い者は、強い者が守る。これがアタイら、鋼組群馬支部の仕事やさかい」

「そうですか……」

「せや。弱き者は、みんなまとめて群馬支部に任せとき!」

「ウフフフ、それじゃぁ、その時はお願いしますね」


 浅倉は、笑顔で応える。


「おう、まかせとき! さて、お前ら、帰るで!」

「草津さん、せっかく本庄に来たんだから、名物のつみっこくらい食べて行きませんか。ボクお腹が空いたのですが」

「うるせぇ、伊香はその辺の雑草でも食ってろ! 万座も、落ちている蕎麦拾ってないで、帰るぞ!」


 草津が声を張り上げると、二人は、しょぼんとしながら、草津の後に付く。


「そんじゃ、上乃ちゃん。また今度会いましょう」


 草津は上乃達に手を振ると、しょんぼりとした二人のケツを叩きながら、駅へと向かって行った。

 浅倉達は、その後姿を、暴れ牛が通り過ぎたように見送る。


「……それにしても組長、よくあの草津って女に切れませんでしたね。完全に我々の事をバカにしていたじゃないですか」

「ん? そぉ?」

「そうだよ。だって、お姉ちゃん、バカにされていたんだよ」

「そうかしらね。私は違うと思うけど」

「組長ちゃん、それは、なぜそう思うんだい?」

「いゃ、だって、草津さんは、一度も埼玉支部って云ってなかったわよ。『弱い者』と云っていただけで」

「そうでごわすが、その弱い者と謂うのが、我々の事を云っていたのではないのでごわすか?」

「いぇ、多分違うわ。草津さんの謂う弱い者とは、町民の事よ。つまり、町民は自分たちが守るってずっと云っていたのよ。もし、私があそこで、『弱い者とは私たちの事ですか?』と聞いたら、きっと彼女は『あんさんらの事とは一言も云ってないで』って答えるでしょうね。そして、ケタケタと笑ってマウントを取ったに違いないわ」

「そうですかね……」

「えぇ、彼女の性格から推測するに、それは間違いないわ。きっと今頃私が、彼女の話術に引っかからなかったから、悔しがっているはずよ」


 浅倉達は、草津達が消えて行った本庄駅の方向を見つめていた。



 ● ● ●



「へくしょい!」


 草津は、本庄駅の駅前で、派手なくしゃみをする。


「草津さん、大丈夫ですか」


 伊香が、心配してなさそうに、声を掛ける。


「大丈夫や。つーか、もう少し、感情を込めてくれてもよかないか?」

「ボクは、草津さんに込めるほど、安い感情なんて、持っていませんよ」

「……失礼やな……まっ、ええわ。しても、あの白ベレー女、絶対にアタイの事、噂していたで」

「そうですか? 草津さんって自意識過剰ですからね」

「別に、自意識過剰じゃないわ! だがな、気を付けなあかんで、あの女。したたかなようで、結構やり手やで。アタイの言葉遊びにも気が付いて、落ち着いて対処していたしな」

「……草津さんは、ホント性格が悪いですよね。向こうの組長さんが気の毒になりますよ」

「ケッ、何を云う。性格の悪さなら、伊香には、負けるわ!」

「ただ、ボクも、あの組長さんには興味があります」

「……ほぅ……それはなぜ?」

「あの組長、ボクの回し蹴り、瞬きもしないで見ていたんですよ。それはもう、ボクが目の前で、足を止めるのが分かっていたかのようにね」

「そーなん? したっけ、あの女と戦うときが楽しみなんさー」

「……草津さん、口調が、群馬弁に戻っていますよ」

「そんな訳、ねえさぁ!」

さて、次週のストックが有りません。

来週までに新しい話が出来ていることを、祈っていて下さい。

ポニョみたいに、足出ろ!と言って足が出るように、アイデア出ろ!と言って、アイデアが出れば良いのですがね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ