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鋼鉄の舞姫 ~昭和レトロ活劇・埼玉よ、滅びることなかれ~  作者: YOI
第四章 西方より来る者(七月)
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ツインズとの闘い3

「おぃ、寅吉。そっちはどうだ?」

「別に、お互い無傷だが、この金髪変な動きをしやがる」

「そうか、こっちは、少年に一撃食らってしまった。一度体勢を整える」


 竜吉がそう告げると、竜吉達は、部屋の横へと移動した。

 また、パインもそれに同調するように間合いを確保する。

 するとどうだろう。楠の横に立つパイン。その二人に対峙するツインズ。2対2の盤面が出来上がった。


「さて、これで、2対2の戦いができるな」

「それがどうしたでゴワスか?」

「分かってないな。俺たち兄弟は連係プレイが得意なんだよ。それに引き換えお前たちは連係プレイなんてしたことあるのか?」

「連係プレイ? つまり、4Pって事でゴワスか?」

「……若干云い方が卑猥だが、まぁ、そんな感じだ」

「パインさん。4Pってなんですか?」


 楠が、パインの袖を引っ張る。


「4Pとは……」「おぃ、金髪! 少年に何を教えようとしている!」


 以外にも、敵側である寅吉が止めに入った。


「そうですね。オイドンよりも、後で組長さんに教えてもらうといいでーす!」

「……金髪……何、さりげなく時限爆弾仕込んでいるんだよ」


 寅吉が呆れ顔を浮かべる。

 その横で、少し血の流れが止まって来たのか、竜吉が襟を正す。


「そろそろ無駄話は終わりでいいかい?」

「いいですよ」

「いいでオジャル」

「……いいんだが、あの金髪のせいで空気が緩むんだよな……」


 4人が一斉に戦闘態勢へと入る。

 拳を握りしめる楠。

 鏡写しの様に構える竜吉と寅吉。

 そして、正面に棺桶を立てて置くパイン。


「なぁ、金髪……さっきから気になっているんだが、なんでお前棺桶なんて持っているんだ? お前が死んだ時に入る用か?」

「あぁ、これですか?」


 パインが棺桶について語ろうとした瞬間、ツインズがパインたちの両サイドへと飛んだ。

 今度はツインズ達が挟み撃ちをする形となる。


「「棺桶の使い方なんて、1つしかないから、別に答えなくてもいいぜ!(ですよ!)」」


 寅吉と竜吉の声が、サラウンドスピーカーの様に左右から同時に聞こえる。


 息がピッタリと合った両サイドからの同時攻撃。

 ……だが、それだけではない。

 ツインズ達は、元々いた場所から動き出す前に既にメスを投てきしている。

 そして、両サイドへ移動した後も追加で投てき。更にジャンプしての回し蹴り。つまり、5方向からの同時攻撃となっている。


 ……5カ所からの同時攻撃か……。僕に回避できる場所は、上か後か……。

 いずれにせよ、楠は攻撃を避けようと、足に力を入れる。

 しかし、そんな楠にパインが微笑む。


「楠君、避けなくても大丈夫ですよ。オイドンが隙を作るでゴワスから。その隙を付いて、ブサイクな方をやっつけて下さい」


 ……うん、だから、ブサイクな方ってどっちだろう……。


 楠がそんな事を考えている間にも、メスが近づいて来る。


 ……パインさん、そろそろ刺さりますけど……。


 楠が、限界距離を察した次の瞬間、楠の周りを覆う様に、真っ黒い壁が出現する。


 ……! なっ、なんだこの壁は? いゃ、これが先程パインさんの云っていた、隙か……。

 では、これに乗じて……。


 楠は、足に力を込めると、天井まで飛び上がる。

 そして、敵の片割れを発見すると、天井を蹴りだし、飛び蹴りをヒットさせる。


「ゴベバ!」


 どちらかは分からないが、楠に勢いよく蹴とばされた片割れは、壁に叩き付く。

 まるで、ハエ叩きで潰されたハエの様だ。

 そして、元気な方の片割れの攻撃はパインが防いでいた。


「おぃ、金髪……」

「なんでゴワスカ?」

「この棺桶はいったいなんだ?」

「棺桶? オイドンは一度もこれが棺桶と云った事は無いでゴワスが……」


 寅吉の攻撃を受けたパインは、腰を落とした状態から、ゆっくりと足を延ばして、立ち上がる。

 だが、その両手には、2つに分かれた棺桶が握られていた。

 ……そう、まるで2枚の大盾の様にも受け取れる。


「ぱっ、パインさん、それって、棺桶じゃなくて盾だったんですか?」


 楠は、パインの手に持つ盾を指差しながら、疑問の声を上げる。


「そうでーす。オイドンは、一度もこれを棺桶とは云ってませーん。まぁ、棺桶風のデザインではありますが」


 元々厚さが30センチほどしか無い、ドラキュラが入っていそうな棺桶であったが、15センチずつの厚さで半分になったかと思うと、高さが180センチはあろう大盾2枚へと変化したのだ。


 ガラッ!


 壁から引きはがすように、竜吉が立ち上がる。首をコキコキと鳴らしながら、体の関節を確かめる。


「なるほど……」


 体の関節がいかれていない事を確かめ終えると、パインに目を向ける。


「成程そうか……。金髪の外国人……君は武器持ってないのですね。……では……先に倒すのは、貴方の方ですね」


 竜吉は寅吉に目線を送る。

 寅吉もそのメッセージを受け取ったかと思うと、両者が同時に、パインに向かって走り始める。

 いつもの様に走りながら、メスを投げる。

 だが、今回は、今までと同じく竜吉は空中へジャンプするものの、寅吉はスライディングの体勢を作り出す。


 ……いつもいつも俺たちが同じ行動をすると思うなよ!


 パインは、竜吉の方を見ている。つまり、寅吉が地面すれすれを滑ってきている事には気が付いていないのだ。


 ……金髪……もらったぜ!


 メスがパインに接近する。

 だが、パインはそれに焦ることなく、両サイドに大盾を構えたまま、一回転する。

 上から見ると、まるで黒い竜巻の様にすら感じる。

 最初のモーションで、前後から襲い掛かるメスを弾き落とすと、更に回転して、空中から攻撃してくる竜吉の足に対して盾の側面を打ち付ける。また、同じように地面を這うようにスライディング攻撃を仕掛けてくる寅吉の足に対しても大盾の側面で払いのけるように足をへし折るのだった。


「うがぁぁあああああ!」

「うげぇぇえええええ!」


 両者の叫び声が室内に反響する。


 パインは、寅吉の元へと歩み寄ると、折れた足の上に、再び大盾を振り下ろす。


「ぐわぁぁああああ! なっ、何をする……」

「何って云われましても、骨折っているだけでーす。ついでに、頭蓋骨も折らせてもらいまーす」


 グシャァァア!


 スイカをバットで叩いたような音がする。


「盾って、武器じゃないと思われがちですが、これ攻防一体型のマルチ武器なのでーす」


 パインは、今度は竜吉の元へと向かう。


「やっ、やめろ、来るな……」

「来るなと云うのは、フリですね。オイドンちゃんと大阪で覚えてきたでーす。押すな、押すなは、押せって意味だと教えてもらいましたでーす」

「……違う。いゃ、合っているけど違う。来るな、化け物!」


 パインは、目を細める。


「それを云ったら、頬の傷が治っている、貴方も化け物でーす。眷属危険。処分するでーす」

「まっ、待て、俺を生かしてくれたら、良いことを教えてやる」

「いい事ですか?」

「そうだ、だから……」


 しかし、パインは治りかけの足の上に、大盾を振り下ろし、治ってきた骨を再びへし折る。


「うぎゃぁぁああああ!」


 竜吉の叫び声が再び響き渡る。


「うるさい口ですね。少し黙っていてください」

「まってくれ、情報は欲しくないか?」

「情報?」

「そう。俺たちの棟梁の事だ!」

「棟梁? それって、貴方達の頭って事ですか?」


 すかさず楠が口を挟む。


「あぁ、そうだ。俺たちの棟梁の話だ」

「では、さっさと話すでーす」


 パインは竜吉の頭上に大盾を振りかざす。


「わっ、わかった。俺たちの棟梁は、あるものを復活させようとしているらしい」

「あるもの? それは何なのでーす?」

「そこまでは末端の俺たちには分からない。ただ地脈の流れを変えることによりそれは復活するらしい」

「そうですか。他の情報は無いですか?」


 パインの目がギラリと光る。


「きっ、恐呼のあねごの事なら少し……」

「話すがよろしでーす」

「おっ、おう。恐呼のあねごは元々会社に嫌気がさしていたOLらしい。バカな上司を殺したくて、鹿鬼となった直後に上司を殺したらしい」

「そうですか……大した情報じゃ無いでーす。オイドンの顔を忘れずに」

「まっ、まってくれ!」


 再び足が治りそうなところで、パインは竜吉の頭蓋骨に大盾を振り下ろした。



 ● ● ●



 楠は、パインの戦い方を一部始終見ていた。

 この男を敵に回した場合、自分には勝てるだろうかと……。

 しかし、楠の出した答えは『敗北』の二文字だった。

 そもそも盾は防御の道具と考えがちだが、その重量が乗った状態で側面から叩きつけられば、鉄の棒で叩かれるよりも数倍痛い。

 つまり、鉄パイプよりも強力な武器を両手に持っている様なモノなのだ。

 『二盾流』……これは、一見すると防御特化にも取られがちだが、その攻撃力は想像以上であり、ある意味おまけで防御にも長けているといった感じだ。

 リーチも全長が180センチ近くもあるので、へたなウォーハンマーよりも長い。

 しかも叩きつける威力は、ウォーハンマーに匹敵する。

 つまり、この盾で攻撃するというのは、理に叶っているのだ。


 ……それにしても、パインさんには隙がない。

 盾により、相手の体には攻撃が届かないと思われがちだが、この長い縦には防御から、流れるように攻撃へと移れる。

 つまり、防御から攻撃までのレスポンス時間が短すぎるのだ。


 楠の額から垂れた汗は、顎にかけて一筋の道を作り出した。


 ……この男を敵に回すのは止めよう。


 楠は、初めは武器を持たない男など……と心の中ではバカにしていたが、現在その考えは星の彼方へと飛び去り、恐怖だけが残っていた……。

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