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鋼鉄の舞姫 ~昭和レトロ活劇・埼玉よ、滅びることなかれ~  作者: YOI
第四章 西方より来る者(七月)
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医院長室

1st Anniversary

……自分で自分を褒めてあげたい。うん。

 北側の中庭には、1足先にパインが到着していた。

 手に持った棺桶(かんおけ)を、ブンブンと振り回して眷属を振りほどく。

 パインの棺桶は厚さが30センチ程しかない。つまり相手に対して、致命傷のダメージが与えられる訳ではない。

 遠目から見ると、ちょっと大きめの、ハード型ギターケースをブンブンと振り回している。そんな感じだ。


「困りました。敵が一杯で、大変でゴワス」


 ……それにしても、浅倉さんと、楠さんは大丈夫でしょうか?


 パインは、秘匿先行をしている二人を気にかける。

 だがしかし、パインとて余裕ではない。

 バンパイア・ハンターを商いとしているとはいえ、これだけの数を、一度に相手するのは初めての事だった。


 ホント、こんなに沢山、出来損ないの眷属をつくるとは……。何を考えているのでしょう、ここのバンパイアは……。


 パインは今までの経験から、優秀な眷属を作るバンパイアはいれども、出来損ないを大量生産するバンパイアには遭遇したことがなかった。

 それもそのはず。今回恐呼が眷属を作っている理由は、優秀な家臣を得る為ではない。病院を占拠するためだけに、増やした駒だ。つまり、他のバンパイアとは、目的が全く違うのだ。


「うぬぬ、この眷属弱いくせに、多いですね。まるでモグラ叩きのモグラです。叩いても、叩いても追いつかんでゴワス」


 パインが少しだけ弱音を吐くと、2階から、何かが舞い降りる。


「追っ手でござるな! 成敗!」


 パインが舞い降りて来た者に対して身構える。


「……いゃ、待てパイン。俺だ。片桐だ」


 そう、2階から舞い降りて来たのは、片桐だった。


「おぉ、これが日本のことわざの、2階からぼた餅ってやつですね」

「……違う!」

「じゃぁ、2階から目薬?」

「それも違う!」

「……ほんでば、2階から片桐?」

「合っているが、そんなことわざは存在しない!」

「やれやれ、ことわざは難しいですな」

「……やれやれはこっちのセリフだし、難しいのは、お前の思考だ!」


 そんな与太話をしながらも、二人は眷属をのして行く。

 また、騒ぎに吸い寄せられるように、次々と眷属が中庭に集まり始める。


「おぃパイン! お前は、中庭から出て、出入口の鍵を閉めてくれ」

「しかし、そうすると、片桐さんはどうしますか? 袋のマウスですよ。つまり……密閉マウス! おう、なんかウォルトみたいで~す!」

「バカな事云っていないで、さっさと行け! 俺は、2階から逃げられる。だから、出入口の鍵を閉めてくれ」

「……分かりやした! 兄貴、後はお願いしやす! ケジメってやつですね」

「……よし、この戦いが終わったら、お前には、ちゃんと日本語を教えてやろう」

「ありがたいでヤンス!」

「…………それと、お前は出入口を閉めたら、楠の援護に向かってくれ。何か嫌な予感がする」

「合点承知!」

「……不安しか残らんが、まぁ、任せる」


 パインは眷属をかき分けて出入口まで向かうと、片桐の言い付け通り出入口の鍵を閉めた。


「片桐さん、無事でいてくれでござれ……もし最悪の場合でも、骨は拾ってやるでゴワス……」


 パインは、中庭の片桐に敬礼をすると、職員棟へと走り始めた。



 ● ● ●



 浅倉と楠は、学長室までたどり着いた。

 一番奥の職員棟、5階最上階の部屋だ。


「楠くん、着いたわ。気を引き締めて行くわよ!」

「準備はいいよ。お姉ちゃん!」


 二人は目を合わせると、同時に両開きドアを勢いよく開ける。


 ガンッ!


 扉が、限界まで一気に開く。

 すると、部屋の奥から、女性の声が聞こえる。


「あらあら、なんて無粋な開け方なのかしら、ノックくらいしたらどうかしラ? ねぇ、浅倉上乃さん」


 その声につられる様に、浅倉は、ドアの真ん中に立つ。

 浅倉の目には、100坪ではきかない程に大きな一部屋が目に飛び込む。

 正面最奥には王様が坐る玉座の様に、院長席が設けられている。その机のサイズと輝きは、見るからに高価である。

 そして、その机には、目的の鹿鬼、恐呼がふんぞり返って座っていた。


「お待たせ恐呼!」

「えぇ、遅いじゃない! 待ちくたびれたワ」

「それは悪かったわね。ところであなたが椅子にしているその机、随分と立派なじゃない」

「そぉ? 高貴な私にお似合いでしょう?」

「高貴? 笑わせるわ。そもそも、その調度品、貴女には分不相応よ。貴女が坐るのは、墓石の方がお似合よ」

「あらぁ……入ってくるなり、随分と攻撃的ね……。どうしたのかしラ? ……あぁ、そうか分かったわ。トカゲの尻尾見たいに生えた腕がまだ調子よくないのネ。アーハッハッハッハアアア!」


 恐呼の高笑いが室内に反響する。


「……恐呼……殺してあげるから、ちょっとそこから立ち上がりなさい」


 浅倉が、刀の先端を恐呼に突きつける。


「……浅倉、元気がいいじゃないノ。……でも、貴女の相手をするのは私じゃ無いワ」


 恐呼が両手を広げると、恐呼の前に二人の男が現れた。


「これが、私の従僕! 元外科医ト、元外科医ヨ! 二人ともイケメンでしょう?」

「……いゃ、二人とも外科医なら纏めても良いんじゃないのかしら?『元外科医の二人ヨ』みたいに……」

「何を貴女は云っているのかしラ? それじゃぁ、私の愛が伝わらないじゃない」

「愛ねぇ……。私は愛と謂う意味が分からなくなって来たわ……」

「愛を知らない貴女には、一生わからない事ヨ」

「失礼な! まっいいわ。それより、医院長とかはどうしたのかしら? 見たところ二人しか見当たらない見たいだけど……」


 恐呼は肩をすくめる。


「……あぁ、あの醜い豚ね。豚は……どこかしらネ。眷属に眷属を作らせたから、きっとゾンビ見たいにその辺をウロウロしているはずだけど……。まっ、イケメン以外に、人権なんて無いから知らないワ」

「……そう。じゃぁ、貴女も元の醜い姿に戻してあげるわ!」

「み……醜いって、こんな美少女に対して失礼ネ。それに、云ったでしょう。貴女の相手は、私じゃ無いって」


 すると、恐呼と浅倉の間に、楠が割って入る。


「いぇ、残念ながら、お姉ちゃんの相手は、おばさん! アンタにしてもらいますよ。僕は、そこにいる、アンタの人形を相手にさせて頂きます」

「おぃ、ガキ、誰がおばさんよ。内臓引き出すわヨ?」


 楠は、鼻先をポリポリと掻く。


「……はぁ……ねぇ、おばさん。『誰がおばさんよ』って質問。そりゃぁ、貴女しかいないじゃないですか。……でも、気になる年頃の方に対して、おばさんは失礼でしたよね。訂正させていただきます」

「ふんっ! 今さら謝たって許さないわヨ!」

「別に許してくれなくてもいいですよ。クソババア!」


 ブチーーーン!


 恐呼のおでこにある血管が切れる。

 切れた恐呼は、腕を持ち上げると、門番の様に立っている外科医に指示を出す。


「……ゆっ、許さないわよクソガキ! ほら! アンタ達! このクソガキをリンチしてやりなさい。私は、そこの小娘を殺すから」

「「はっ!」」


 眷属が恐呼に頭を下げると、恐呼は次に浅倉を指差す。そして、こいこいと指を折って招く。


「ほら、アンタは私が殺してあげるから、ついていらっしゃい」

「誰が、誰を殺すって云ったのかしら?」

「……そりゃぁ私が、貴女をヨ。……まっ、ここは狭いし、彼らの戦場にするから」


 恐呼は奥の扉を開けた。


「……浅倉……あんたには、もっと素晴らしい場所を、用意してあげるワ」


 恐呼は、浅倉にそう告げると、奥の部屋へと移動し、更に屋上へ続く階段を上り始めた。


「……狭いって、医院長室、かなり広いと思うんだけど……。まっいいわ。楠君、大丈夫?」

「えぇ、お姉ちゃんは行ってください。こいつらは僕が相手します」

「……分かった。無理はしないでね」


 浅倉は、楠に一言云い残すと、恐呼の後に続いて屋上へと歩みを進めた。

 いゃぁ、昨年の3月1日に始めて以来、一年続きました。

 途中で挫折するかと思いましたが、けっこう書いていけるものですね。

 今も次章を書き始めていますので、週間のペースは守って行けそうです。

 ただ、投稿の時間だけは、少し変更しようかなぁと考えております。

 ご迷惑をおかけしますが、今後とも応援よろしくお願いします。


 この作品は、まだまだ続きますので、評価とか、ブックマークとか、よろしくお願いします。

 <(_ _)>

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