突入
一周年記念連続投稿!
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パインが仲間に加わって、4日が経過した昼過ぎ、鋼組達は氷山銭湯の食堂に集まっていた。
三沢はタブレットを片手に、上座へと立つ。
「皆んな、集合してくれたわね。パイン君もありがとう」
「いぇいぇ。吸血鬼倒す。力貸す。当たり前ですで」
「……さて、今回皆んなに集まって貰ったのは、他でもないわ。……ついに、恐呼の居場所が分かったの」
浅倉の眉が、『ピクリ』と動く。
同時に口元が緩む。
「三沢さん、こちらから先制攻撃を仕掛けるのは初めてですね……」
「えぇ、そうよ。うちの諜報部が頑張ってくれたお陰よ。……それで、恐呼の居場所なんだけど、意外な所だったわ」
「……意外なところ……ですか」
「えぇ、そうよ。恐呼の何所は病院だったわ」
「……病院……ですか?」
「えぇ。大宮第八病院」
ガタッ!
「大宮第八病院って、歩いて行ける距離じゃないですか」
浅倉が、驚きの声を上げながら、立ち上がる。
大宮第八病院とは、氷山銭湯から、南へ2キロメートル程の距離にある大型病院だ。
病床は200床を有し、内科はもちろんの事、外科、小児科、その他を含む総合病院として、この辺りで知らない者はいない。
それ程に、有名で、名の有る病院だ。
「三沢さん。質問よろしいですか?」
「どうぞ、浅倉組長」
「病院が、敵の根城なのはわかったのですが、恐呼は、どこの病室に潜んでいるのでしょうか? あそこは病室が有りすぎます」
三沢は腕を組んで、眉をひそめる。
「浅倉組長……実はね、恐呼は病室に潜んでいる訳じゃ無いのよ」
「……潜んでいない? では、恐呼は何処にいるのですか?」
「恐呼の居場所は、病院そのもの。つまり病院が敵の巣なのよ」
「なっ!」
流石の浅倉も、その回答には、息を飲み込んだ。
「oh! 敵はケンゾクを作ったですね」
「その通りよ」
「……剣族? 敵は刀を持っているの?」
「……浅倉組長、違うわ。眷属とは、吸血鬼が作り出すことのできる駒よ」
「やれやれ、組長ちゃんの頭の中は、剣術ばっかだなぁ……」
キッ!
口を挟んだ柏木を、浅倉が睨む。
会議の途中とあってか、すぐさま柏木は両手を上げる。そして、「ハハハ」と乾いた笑いを上げながら、全面降伏を表現した。
柏木が黙ったのを確認すると、浅倉は、再び三沢へと顔を向ける。
「三沢さん、駒とはどういう意味ですか?」
「どうと云われても、そのままの意味よ。恐呼の召し使い、奴隷、言いなり。まぁ、どの言葉を選んでも構わないわ」
「……なるほど。何となく分かりました」
「うん。……分かった所で、話を続けるわね。現在第八病院の従業員及び患者は、全て恐呼の眷属、つまり配下となっています。もし恐呼が院長室を占拠しているとするならば、病院の最奥となります。……つまり、全ての敵を相手にしないと、恐呼の元にたどり着くことは出来ないと謂うことになります」
「……最奥ですか……。狭い通路での戦闘となると……かなり大変そうね」
「えぇ、今までに無い戦いとなるわ。片桐君と柏木君には、辛い戦いを強いる事になるわね」
「……ですね。……で、作戦はどうするのですか?」
「……作戦……まぁ、有るには、有るけれど、専門家の意見も聞いてみたいわね。……そこで、出番となるのが、今回お招きしたパイン君! 何かアドバイスとかないかしら?」
「遂に、おいドンの意見でござるか……」
……おいドンって、あんたは九州出身なのかい!
浅倉は、心の中でツッコミを入れる。
また、周りを見るも、皆一様に微妙な顔付きだ。
……あっ、皆も同じ気持ちなのね……。よかったわ……。
そんな皆の気持ちを他所に、パインが胸を張る。
「では、バンパイアについてお話しするです。まず、バンパイアは、首を切り落としても死にません。何故なら、体のどこかにあるコアが無事だからでーす」
「コア?」
「そうでーす。核の方が、馴染みが有りますですか?」
「……どちらもそんなに馴染みは無いけれど、意味は分かるわ。続けて頂戴」
「Yes、話続けるです。ですから、私達、まず恐呼バンパイアのコア壊すでーす。そうすれば、全員元に戻るでーす」
「……えっ、ちょっと待って、眷属になった者を戻せるの?」
「そうでーす。但し、首切れたもの、恐呼殺した瞬間、死ぬでーす。足切れている者、恐呼殺した瞬間、足治りませーん」
「……成る程。つまり、病院関係者や患者は、無傷で倒さないといけないのか……」
「そうでーす。ちなみに、眷属に噛まれると、あなたも眷属のお仲間になるでーす」
「……噛まれたら、ゲームオーバーの一発勝負か……。中々燃えるシュチュエーションね」
「Yes! バーニング局面です!」
浅倉とパインは、不思議な形で、士気が高まる。
「組長、話がまとまった所で、そろそろ出撃しましょう。俺も今回は、短い棒で何とかしのいで見ます」
「おぅ。組長ちゃん、俺と片桐は今回然程有効に立ち回れないけれど、出来るだけのサポートはするつもりだ。気張っていこうぜ!」
「えぇ、二人ともよろしく! 頼りにしているわ」
浅倉は、二人に挨拶を終えると、楠に顔を向ける。
「今回は狭い場所での戦いになるので、楠君には、かなり頼る事となると思うの。だから、よろしくね」
「はぃ! まかせてお姉ちゃん!」
楠は、親指を立てて答えた。
浅倉は、最後にパインを見る。
「今回は、あなたの力をお借りしたいと思います。ハーフバンパイアの力、是非貸してください」
「わかたですよ!」
パインも楠と同じく、親指を立てる。
浅倉も同調して、親指を立てて、それに応える。
「では、話がまとまった所で、浅倉組長。それと皆。元気に、行ってらっしゃい!」
「行ってきます!」
三沢からは、いつもとは違う、ちょっと間抜けな出撃命令が出された。
しかし、そんな事で士気が変わるほど鋼組は温くない。
各々は武器を手に取るなり、目つきが変わった。
その目は、紛れもなく、肉食獣のそれと何1つ変わらない、そんな鋭さを放出していた。
「……さて、恐呼……首を洗って待ってなさい。今からその首、取り外してあげるわ……」
浅倉の掛け声と共に、組員は、現場である大宮第八病院へと歩き始めた。
● ● ●
食堂では、頃合いを見計らってか、金沢支部長が姿を現す。
「三沢君、お疲れさん。パインはまだ仲間じゃないから、基地には入れられ無いし、こんな場所でやらせてすまなかったな」
「いぇいぇ。なんか新鮮でしたよ。最後も、出撃! じゃなくて、行ってらっしゃい! でしたし」
「あぁ、裏で聞いていて、吹きそうになったよ。さて、尾花沢と水沢は既に指令室で待機している。移動するとしますかね」
「了解!」
三沢は、先程出来なかった敬礼を、ここぞとばかりにやって見せた。
● ● ●
「浅倉より、指令本部」
「指令本部ですどうぞ」
「間もなく病院に到着します。ブリーフィングの通り、正面玄関から侵入します。また、予定通り中庭で片桐さんが、眷属の注意を引きます」
「指令本部、了解! ……上乃ちゃん、敵の巣穴だから、充分に気をつけてちょうだい」
「了解」
その言葉を最後に無線が切れる。
浅倉達が到着した病院は、上空から見ると、漢字の百の様な形をした、総5階建ての建物となっている。
各棟の説明をすると、百の字の一角目、この棟の1から3階は職員用の部屋、4階はビップな入院患者。5階は医院長室となっている。
また、2角目の縦棒の連絡通路を隔てると、日という字の棟が現れる。
ここには、中庭が2ヵ所存在し、1,2階は手術室、3から5階が病室となっている。
また、この病院の出入り口は、6画目、つまり最後の画数の1階中央が正面玄関となっていた。
つまり、正面玄関から、医院長室は最も遠い場所となってるのだ。
「……さて、入口に到着したけれど、みんな準備は出来てる?」
浅倉は、正面玄関入口で組員に声を掛ける。
「組長ちゃん、ちなみに準備が出来てないって云ったら、突入は取りやめてくれるのかい?」
「何を云っているの? 出来ていなくたって、突入するわ」
「……それって聞く意味あるのかい?」
「別にないわ。まっ、定型文ね。それにこのメンバーには、そんなの無意味よ」
「おっ、ってことは、俺たちを信用しているってことか?」
「いゃ、準備が出来ていないのは、自己責任って解釈しているだけよ」
「酷いなぁ……」
しかし、そんな浅倉と柏木だが、無駄話をしながらも、しっかりとガラス越しに室内を観察をしていた。
「……ねぇ、パイン。玄関入ってすぐの大広間にうごめいているゾンビみたいなのは何?」
浅倉の目線の先、室内には多くの人間が、ゆらりゆらりと左右に揺れながら、歩いている。
服装と体だけを見れば、傷んでいる様子はない。ただ、口が半開きの為か、よだれがしたたり落ち、首元はベチャベチャとなっている。
そして、明らかに違うのは、紫色に輝く瞳の焦点が、左右バラバラに動いている事だ。
まるでカメレオンの目の様に、ギョロギョロと動いている。
「Oh! 恐呼まだまだデース。眷属の作り方失敗デース。今度、おいドンが正しい赤ちゃんの作り方、レクチャーしてあげるデース!」
「……パイン、貴方、柏木さん寄りなのね……」
「って、組長ちゃん、それ、どういう意味よ!」
「言葉のまんまよ。つまり、貴方達の頭には 、汚い男根が生えてるって事よ」
「おぃおぃ、組長ちゃん。いつからそんなに辛辣になったんだい?」
「楠君に、変なこと教えられると、困るからね」
「……いゃ、でも、そういう事って誰かが教えないとだろ? それとも、組長ちゃんが楠に教えてあげるのか?」
「バカなこと云ってると、蹴り倒して、あの中に放り込むわよ。そして、あなたを、恐呼の眷属にさせるわ!」
「……怖い事を云うな……。まっ、でもキヨが大人になった頃は、組長ちゃんはハバアだから、キヨも願い下げか! アハハハハ……ボエグァバ!」
浅倉の右フックが、柏木の頬にめり込む。
「あら、恐呼が作った、ハエの眷属が頬に止まっていたわよ。助けてあげたのだから、感謝しなさい」
「ハエなんて眷属に出来ないでしょうに……」
「なんか云ったかしら?」
「いぇ、何も……」
なんとも間抜けな会話をしているが、それでも5名の統率は取れていた。
正面出入口の前に整列すると、各々気合いを入れる。
「……さて、いよいよね。……みんな、行くわよ! 私一度やってみたかったのよ。道場破りってやつをね」
「……道場じゃなくて、病院だけどな……」
「細かいことは気にしない。さて、行くわよ!」
浅倉の号令と共に、全員が病院出入口へと向かった。
いゃぁ。ほんと、よく一年書き続けられたと感心をしています。
読者に支えられるとよく聞きますが、ホントその通りだと思います。
今後も頑張りますので、もしよろしければ高評価でなくてもいいので、評価等をつけていただければと思います。<(_ _)>




