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鋼鉄の舞姫 ~昭和レトロ活劇・埼玉よ、滅びることなかれ~  作者: YOI
第四章 西方より来る者(七月)
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布虫の強さ

 ……あの、光の柱はいったい……。


 目的地である春日部市からは、上空に向けて光の柱が地面から伸びていた。


「組長ちゃん、ありゃなんだい?」

「お姉ちゃん。僕も確認できました」

「……そうね……多分、あれはすいちゃんじゃないかしら」

「尾花沢が……か?」

「えぇ。多分お札の力だと思います。私も詳しくは知らないのだけれど、巫女にはそう謂った力がある。その様なことを前にすいちゃんが話していたの」

「つまり、組長も同じことが出来る……と……」

「いぇ、私にはまだ……。ただ可能性の話です。(いずれ)にせよ、目的地が分かりました。総員、光の柱へ最短ルートで向かってください!」

「了解!」

「まかせて!」

「あいよ!」


 やれやれ、掛け声が全く合わないわね。相変らずバラバラなチームだわ……。

 でも……すいちゃん、私達が到着するまで、無事でいてね。


 浅倉は祈りながら、飛行を続けた。



 ● ● ●



「目標確認。組長ちゃん、間もなく射程に入るぜ!」

「了解よ。では、柏木さんは、射程に入ったらすかさず4発撃って下さい。敵の気をこちらに引かせるのを、第一の目的とする」

「あいよ!」

「失速して目的地に付けなくても構いませんので、必ず4発当てて下さい」

「任せな。当てるだけなら、朝飯前だ」

「片桐さん、とれますか?」

「感度良好」

「では片桐さんは、敵が振り返ったら、向かって左側の腕を切り落として下さい。私は向かって右側の腕を切り落とします」

「了解!」

「……あっ、でももし、振り返らなかったとしても、向かって左側を切り落として下さい」

「了解」

「楠君、聞こえる?」

「メリット5」

「楠君は、敵の首筋辺りに跳び蹴りを食らわして、相手を地面に倒して下さい。まぁ、のぺっとしているので、首がどこかって問題もありますが」

「お姉ちゃん、分かったよ。まぁ、なんとかしてみます」

「お願いね。では、各員作戦通りお願いします」


「「「了解」」」


 あっ、珍しく、声がそろったわ。



 ● ● ●



 柏木は滑空しながら狙いを定める。

 スコープ越しに、布虫が腕を上空へと持ち上げているのを確認する。


 おぃおぃ、腕を振り上げやがった。これは、何かを狙って、叩き付け様としているって事だよな。

 動きから推測するに、かなり怒っているのか?

 ……だとするならば、狙いはすいって事になるか……。

 まじかよ……これは、外せないぜ!


 柏木は照準を合わせる。


 スー、ハー、スー、ハー。


 呼吸の音が、柏木の耳をつく。


 息の音が、うるさいな。……だが……いける。


 柏木は落ち着きながら、トリガーを引く。


 バシーーン!


 布虫の腕が弾け飛ぶ。


「ビンゴ! へっ、後は、簡単だ!」


 柏木は続けて3発の弾丸を、布虫の背中に叩き込む。


「ごあぁぁああ!」


 布虫は、何処からともなく悲鳴を上げる。


「あいつ、口無いのに、何処から声を出しているんだ?」


 柏木は、フライングスーツを折り畳んで銃を構えた為、他のメンバーよりも遅れをとった。

 空中で銃を撃つ事は、失速を免れない。それと同時に高度も落ちる。

 つまり、目的地に到着出来ない場合があるのだ。


「……後は任せたよ、組長ちゃん」


 その無線を最後に、柏木は、高度を落としていった。


「柏木さん、上出来よ! 後は任せて。さて、次は私達の出番よ! いいかしら?」


 浅倉は、無線を流すと同時に、抜刀する。

 布虫が、予定どおり振り返る。


 布虫……その腕、もらい受けるわね。


 浅倉は滑空しながら、右側、真ん中の触手を切り落とす。


 軽い。鹿鬼に比べると軽すぎる。まるで紙でも切っている様だわ。

 

 浅倉に腕が切り落とされた衝撃から、布虫の注意は浅倉へと向く。

 いくら妖怪とはいえ、注意が反れてしまえば、ただの布。完全にフリーとなった片桐は、この隙をついて左側の腕を切り落とす。


「ぎゃわぁぁああ!」


 布虫が悲鳴を上げると同時に、今度は楠の飛び蹴りが、最上部より2メートル程下がった位置に炸裂する。


 バフッ!


 干してあるシーツを、布団叩きで叩いた様な、鈍い音がする。

 そして、布虫に包まれる形で、楠が地面へと着地した。

 布虫が地面に押し倒されると、此を待っていたと云わんばかりに、浅倉と、片桐がスパスパと切り裂く。

 もはや、布虫は、ボロ切れ状態。裁断された、端切れと化していた。


「随分と呆気ないわね。私達は、鹿鬼と戦うことによって、知らず知らずの内に、力が付いていたって事かしら?」


 浅倉は、布虫が動かなくなったのを見計らい、辺りを見回す。

 すると、少年に介抱されている、尾花沢を見つける。


「すいちゃん!」


 浅倉は、尾花沢の元へと、駆け寄る。


「すいちゃん、大丈夫?」


 浅倉は、少年から尾花沢をあずかると、腕の中で、抱きしめた。

 しかし、尾花沢に反応は全くない。


「オラ……オラのせいで……」

「少年、何があったの。泣いていないで、私に教えてちょうだい」


 浅倉は少年に質問を浴びせる。

 しかし、彼は泣き叫ぶばかりで、何も答えない。

 

「あっ、……あが……の……ちゃん」

「すいちゃん、気がついたの?」

「……あんまり……オラ……を……金成を……いじめないで」

「わかった。それより、妖怪は倒したわ。もう大丈夫よ」

「あ……がのちゃん……あいつ、気を……付けて。さ……いせ……い……する……」

「何? 今……何て云ったの? さいせする? さいせって何?」

「ち……がう。さ……い……せ……い」


 ガクッ。


 尾花沢が、崩れた。


「すいちゃん! すいちゃん!」


 浅倉の声はもう届かなかった。

 だが、尾花沢が必死になって伝えようとしたことは、理解した。


「分かったわ、すいちゃん。……敵は、再生するのね」


 浅倉は、端切れとなって散らばった布虫の残骸を見る。

 すると、そこには、散り散りになっていたパーツが、徐々に元へと戻っていく姿があった。

 まるで、アメーバが結合している風にも見える。


「……さて、これからどうするべきなのかしらね。取り合えず、再生できなくなるくらいまで細かく切って見ましょうかしら」


 浅倉達は、更に細かく切り裂く。

 だが、1センチ角くらいにしようとも、再生能力は衰えなかった。


 ん〜。気のせいじゃ無いわよね……。


 浅倉が不安要素を見つけた。

 なんと、徐々にではあるが、布虫の再生能力が上がっている様なのだ。

 浅倉は考える。

 もし、このまま再生能力が上がると、倒せる手段が見つかった時に、倒せない可能性もあり得ると謂った事実に……。


「全員、布虫を攻撃するのは、少し待ってちょうだい。このままでは、私達は倒すことが出来なくなるわ」


 浅倉は焦る。

 攻撃力は然程(さほど)強くないのに、再生力が強いと謂うだけで、これ程までに手こずる敵になるとは……と。

 先程、少年と話した際に、少年がこの布虫の封印を解いた事は教えてもらった。

 話から想像するに、多分昔の僧も、倒すことは(まま)ならなかったのだろう。よって、封印と謂った形で、その場を(しの)いだと考えられる。

 つまり、過去にも布虫を退治する方法は分からなかったと謂う事だ。


 当然、浅倉も思考を張り巡らせてはいるものの、布虫を退治する手立ては一向に思いつかない。力でねじ伏せられる相手であれば、幾らでも闘志が湧いてくるのだが、それほど強くは無い上に回復力だけは桁違い。

 今までに無いタイプの敵であると共に、戦いにくい相手であると浅倉は肌で感じていた。


「……組長、どうする? 俺の槍では、細かくは出来るが、すぐに再生されてしまう」

「そうよね……。とりあえず、さっきわかったのだけど、布虫は妖力を使わなくても切れるみたい。なので、みんなは妖力を温存して置いてくれるかしら」

「あぁ、それなら、さっきから温存している」

「僕もです」


 浅倉が見つけ出した妖力を一時的に止める方法は、練習の成果があってか、すでに鋼組の面々は習得していた。お陰で、妖力切れで倒れる心配は一先(ひとま)ず回避出来たようだ。


「……さて、どうしようかしら。とりあえず一度、完全に回復させて見せましょうか」

「組長、大丈夫か?」

「思っていたよりも弱いので、3人居れば余裕でしょう」

「まぁ、それはそうかもしれないが……」


 取り敢えず、浅倉は仕切り直し、相手の弱点を探し出すため、布虫を完全回復させてみる事とした。



 ● ● ●



「グゥォオオ!!」


 布虫は完全回復すると、口もないのに、咆哮を上げた。


「……ホント……この妖怪。どこから声出しているのかしらね……」


 浅倉は、布虫を観察しながら、刀を構える。


「さて……どうやって……って……あれ? あれ?」

「どうしました組長」

「いゃ、何かおかしいな……って」

「何かって、何がです?」

「う〜ん、バランス?」

「傾いていますか?」

「いゃ、そうじゃなくて……なんだろう」


 浅倉は、説明できない違和感の原因を突き止めるため、首を(ひね)りながら布虫を注視した。


 ……この違和感が、勝敗を分けるかもしれない。

 新年あけましておめでとうございます。

 今年も鋼鉄の舞姫をよろしくお願いします。

 <(_ _)>

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