表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鋼鉄の舞姫 ~昭和レトロ活劇・埼玉よ、滅びることなかれ~  作者: YOI
第四章 西方より来る者(七月)
47/102

走れすい!(後編)

「ゴハァ!」


 尾花沢の口から、鮮血の血しぶきが飛び散った。

 

「ねぇちゃん、大丈夫か?」


 尾花沢は吹き飛ばされている最中(さなか)、少年を胸に抱きかかえた。そして、転げまわる地面、はたまた塀にぶつかる瞬間、自分の背中を犠牲にして、少年をかばったのだ。

 尾花沢の背中からは、おびただしい量の血液が流れだす。

 また、彼女の体内では、何らかしらの臓器が欠損したのだろう。口からは、ぽたぽたと、血液が流れ続ける。


「……オラ……あなたは、無……事?」

「グスッ。……あぁ、オラは、ねえちゃんの柔らかいおっぱいのお陰で助かったよ」

「オ……ラ……。あんた……ほんと……バカね。……でも……助かったのなら……逃げなさい……」

「だめだよ。オラ、ねぇちゃんを置いて逃げられないよ!」

「……くっ……めんどう……かけさせるじゃ……ないわ……よ……」


 尾花沢は残った力を振り絞り、物干し竿を握りしめる。


 ギリッ!


 食いしばった奥歯から、鈍い音が生み出される。


 ……私はまだ武器を握れる。

 ……武器が握れるなら、まだ立てる。


 ガンっ!


 尾花沢は、物干し竿を、杖の様に地面に突き立てる。

 そして、重心を杖に乗せる。

 グググっと竿に体重をかけながら、ゆっくりと、しっかりと、尾花沢は立ち上がる。


「くっ……がぁ!」


 苦虫をつぶしたような顔を浮かべながらも、直立する。


「へへ……もう大丈夫よ」


 尾花沢は、少年の頭を優しくなでる。

 それと同時に、満面の笑顔を作り出す。


「オラ、私は大丈夫よ。……私を誰だと思っているの? 私の名前は、尾花沢すい! 尾花沢すいよ!」


 その話し方は、少年に対してではなく、自分自身に自己暗示をかけている様でもあった。


「オバナザワスイ……?」

「……そうよ、……それが私の名前! ちゃんと覚えておきなさい!」


 ジャリッ!


 尾花沢は、両足に力を籠める。

 二本の足で立ち上がり、物干し竿を構える。


 そして、大きく息を吸う。


 吐く……。


 再び、息を吸う。


 ザンッ!!


 眼光鋭く、化け物を睨み付ける。

 尾花沢の目は、まだ死んでいない。

 

「私は、妖鬼殲滅隊埼玉支部、絹組『尾花沢すい』! 任務を受ければ、目的地まで人から戦闘機だろうと、なんでも届けるスペシャリストよ!」

「スペシャリスト?」


 鼓舞の為の口上に、少年が口を挟む。


「フフフ……そうよ……それが本当の私の仕事。……だから、私は、あの化け物からオラを逃がすと決めた時点で、私の仕事は決まったの……。オラを安全な場所まで届けるというね……」

「……オラ……を……?」

「……そう、オラをよ。……それに、悪いけど。『モノを届ける』この一点に関して、私の右に出る者はいないわ!」


 尾花沢は元来た道を少年に指し示す。


「さぁ……今来た道を戻りなさい。ここは私が何とかする」

「グズッ……やだよ。ねぇちゃんを置いてなんていけないよ。……だって何とかするって、……ねぇちゃん、どうするのさ。あの化け物が、こっちに向かって来るよ」


 夕日を背中に仁王立ちをしている化け物は、尾花沢達に黒い影を落とす。

 あたかも、黒い影は、尾花沢達を飲み込んでいる様だ。

 そして、その、そびえ立つ化け物の両脇には、6本の腕がイソギンチャクの触手の如く揺れている。


「……ねぇちゃん」


 少年の声は、今までに無く、か細くなっていた。


「オラ、泣くんじゃないよ。男の子でしょう。それに私は云ったでしょう。必ずあなたを安全な場所に届けるって……」


 尾花沢は気丈にふるまう。

 だが、徐々にだが、声は弱々しくなっており、口元からもタラリと血液が流れ落ちる。

 もはや、気力と体力は限界に達していた。


「……ねぇちゃん……オラ……」


 少年は、目元に涙をたっぷりと溜ながら、言葉を振り絞る。

 尾花沢は、そんな少年の涙を人差し指でぬぐい取ると、その指を夕日へと向けた。

 そして、夕日をみながら、尾花沢は口を開く。

 

「……オラ、知ってる? こういう、どうしようもない時に、1つだけ信じられるものがあるのよ」

「信じられるもの?」

「そう、私はそれを信じている。……だから……私を()()()()()()()!」

「……金成……新次郎。……それって……オラの名前……」

「……そう、とても、いい名前ね」


 尾花沢の顔は夕日を見たままだ。

 

「ほら、夕日を見て……」

「夕日?」

「……そう、よ~く見て」

「よ~く…………ん? 点?」


 少年が目を凝らして見ると、夕日の中には黒い点が4つ見える。


「ねぇちゃん、黒い点が4つ見えるよ」

「……そう……よかった、来てくれたのね……」


 ドサッ!


 その言葉を最後に、尾花沢が地面に倒れた。


「ねぇちゃん、ねぇちゃん。立ってくれよ!」


 少年の目から、涙がこぼれる。

 ポタポタと落ちる涙の粒が、尾花沢の頬を伝うも、尾花沢が目を開けることは無い。

 

「うわぁぁあああ!!!」


 少年の泣き声が、辺りに響き渡る。

 だが、いくら泣ことも、叫ぼうとも、尾花沢はピクリとも動かない。


 その感情に流された泣き声は、化け物に位置を知らしめる。

 この行動は、マイナスにしか働かない。

 そんなことは、少年にも分かっていた。

 だが、頭では理解できても、感情がついていかない。

 そこまで、感情コントロールが出来るほど、成熟していない。


「グガァァアアァァ」


 案の定、化け物が少年らを発見する。

 そして、当然の如く、少年らに照準を合わせる。

 もう、少年を守れる者はいない。

 化け物は、直感でそれが分かるのか、大きく、二本の触手を天高く持ち上げた。

 帯の腕が、天を突きさす様に真っすぐに伸びる。


 ブワァァアア!


 次の瞬間、叩きつける様に振り下ろされる触手が、二人の頭上から襲い掛かる。


 …………が!


 ズバーーーーン!


 化け物の体に、風穴が空いた!


「えっ! なんだ? 何が起きたんだ? ……なぁ、ねぇちゃん、教えてくれ! なぁ……」


 少年は、呆然と、立ち尽くしながら、化け物を見上げる。

 だが、理解に苦しむ少年をよそに、気を失っているはずの尾花沢の顔は、なぜか微笑んでいた。

 年末スペシャル 3作同時公開でした。


 よって、来週1月3日はお休みします。

 次回1月10日をお待ちください。



 さて、今年の3月よりスタートした鋼鉄の舞姫、なんとか毎週更新できました。

 これも皆さんの応援のお陰です。

 予定では、第四章をちょうど、一周年あたりで終えて、来年3月より第五章へと入れればなぁと考えております。

 いゃぁ、四章が、無駄な事を書いていたら、想像以上に長くなってしまいまして……ハハハ。


 ちなみに、かなり影響を受けている作品にのっとって章を作っていますので、どんなに頑張っても作中の冬、2月頃で終わります。

 なんとなく、分かっている方もいらっしゃるかと思いますが、これは決定事項なのですよ。

 いずれにせよ、最後まで書き続けたいと思っております。


 今後も応援よろしくお願いします。

 それでは、よいお年をお迎えください!



 令和の空に鐘は鳴る!


 ゴーン!



あっ、今年最後ですから、ついでに、下にスクロールさせて、⭐を


⭐⭐⭐⭐⭐


べべべべっってやっていって下さいね。


っと、まぁ、年末最後まで、露骨に宣伝してみる。(笑)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ