変人出現
先日、一瞬この話しを、間違って投稿してしまいました。汗
先に読んでしまった方、すみません。削除の仕方が分からなくて、大変でした。小説家になろう、使い方がまだよく分かっていません。
『ミンミン』と、セミの声が、境内にも響く季節となってきた。
……今日から7月かぁ。
私がここに来て、もう3ヵ月が過ぎたのね。
……意外と早いものだ。
日差しが段々と厳しくなってきたし、巫女装束もちょっと暑いなぁ……。
朝日に手をかざして、季節を感じとる。
今朝も、ルーティンである境内の掃除を終えると、私は、お守りの陳列を始めた。
「お姉ちゃん、頼まれていたお札をここに置いておきますね」
お札が、ぎっしりと入った箱を、楠君が、お札売り場の下に置く。
「あっ、楠君ありがとうね」
「いぇいぇ。では、失礼します」
楠君がお辞儀をしながら、その場を発つ。
私は、微笑みながら手を振り、後ろ姿を見送った。
ホント、いい顔をするようになったわね。
お姉ちゃんは嬉しいわよ。
楠君が、元気を取り戻し、年齢相応の表情を浮かべるのを、私は喜ばしく感じていた。
……しかし、優しい空気は続かない。
そんな、柔和な横顔を見てなのか、背中に同僚が重くのし掛かる。
「あ~が~の~ちゃ~ん!」
「なっ、何かしら……すいちゃん?」
すいちゃんが、首に腕を絡ませて、力を入れる。
「く……苦しい……」
ホント、一体いつも、何処から現れるのかしら。
まるでストーカーよね……。
私は、呆れ顔を作る。……が、すいちゃんには、その顔は見えない。
「いゃぁ……キヨちゃんが、上乃ちゃんに、すっかり骨抜きにされているな~って」
「……骨抜きって……すいちゃん、そういう云い方は、止めてもらってもいいですか?」
「な~に云っているのよ。『お・ね・え・ちゃ・ん』とか呼ばせているくせに。もしかして、逆光源氏計画ですか? 果実は自分で実らせて、食べちゃう派ですか? キヨちゃん、大人になれば、イケメン確定ですものね~」
べちぃ!
すいちゃんのおでこを、指をそろえて叩く。
「あうぅぅ……上乃ちゃん、痛いですぅ……」
「だったら、そういう事は云わない事!」
「は~い」
すいちゃんが、口を尖らせて、不貞腐れた。
「そうだ、上乃ちゃん!」
「なに? まだ楠君で遊ぶの?」
「いゃいゃ、違う違う。別のお話」
「別の?」
「そうそう。最近大宮近郊で、若い男が、失踪する事件が流行っているのって、知ってる?」
「……若い男? 若い女じゃ無くて?」
「そうなのよ。大抵この手の話って、若い女の子が狙われるじゃない。でも大宮では違うのよ。なんでも、若い男が拐われるんですって」
「へ~、幾つ位の男の人?」
「なんでも二十歳前後のイケメンに限るらしいよ」
「……イケメンに限るの?」
「そう。ブ男は全く見向きもされないんだって。つまり、うちの整備班の男は大丈夫って事よ!」
「よし、すいちゃん。それ地下基地に行って、もう一度その話をしようか」
「なっ、そっ、そんな事云える訳ないでしょう! うちの整備班は、ブ男しかいないなんて! そんなこと云ったら私は……」
ジャリッ!
おみくじ売り場の外から、玉石を踏み潰す音が届く。
「ほぉぉぉおおお。お・ば・な・ざ・わぁぁぁぁ。その話、ちょっと詳しく聞かせてもらえませんかねぇぇええええ?」
おみくじ売り場の外には、絵馬を抱えた整備班の柴崎さんが立っていた。
「あっ……ぁぁ、これは柴崎さん、今日もいい天気でございますね。オホホホホ」
「尾花沢、天気の話なんてしてねぇよ。整備班がなんだって?」
「……いぇ、整備班の方々は、皆さんいつも大変ですねぇぇって話していたのよ。オホホホホ……ねぇ、上乃ちゃん?」
「えっ、私? 私に話を振らないでよ。自分の発言なんだから、自分で責任取ってください!」
「そっ、そんなぁ……」
「おぃおぃ……尾花沢さんよぉ、ちょ~っと、地下までお茶でも配達に来てもらおうかね。ほら、俺達『ブ男』しか居ないから、モテないんだよ。そうだなぁ……恰好は、忘年会の時に使った、『バニーガール』の恰好で配達してもらおうかね」
「そっ、そんなのいやぁぁぁぁあああ!」
「すいちゃん、自業自得、口は災の元よ! あっ、そうそう柴崎さん、すいちゃん今日ヒマなので、しばらく連れて行ってもいいですよ!」
「おう! 上乃ちゃん、ありがとうね。……さぁ、尾花沢行くぞ!」
「いっ、いやぁぁぁあああ! 助けてぇぇえええええ!」
ズルズルと、引きずられて行くすいちゃんを、私は合掌をしながら見送った。
「ありゃぁ、すいのやつ、連れていかれてしまったわね」
何処にいたのか、ひょっこりと、水沢うどちゃんが顔を出す。
「そうね。まぁ、仕方が無いでしょう」
「うんうん。すいのやつ、バカだからね。そいう云えば、さっき何の話をしていたの?」
「さっき? ……あぁ、なんでもイケメンが拐われるって話をね」
「あっ、私も訊いたよ。なんか最近流行っているらしいね」
「……流行ってるって……ちょっと違うと思うけど……」
「うちだとギリちゃんと、龍ちゃんが危険よねぇ」
そうね。片桐葵、柏木龍三の両名は確かに顔が良い。
一緒にいる機会が多すぎて、麻痺している部分があるけれど、たまに一緒に街をあるくと、すれ違う女の子が二人をチラ見する。
そして、その二人の間に、割って歩こうものならば、町の女は、即陰口をたたく。
『誰あの女! ブスなのに、イケメン二人を両手に何て生意気!』
やれやれ……。私は、そんな関係の女じゃないのに……。
「ねぇ……。私って、そんなにブスなのかしらねぇ~」
「えっ、なに急に。上乃ちゃんはブスじゃ無いと思うよ。かなり美人でしょう」
「だって、たまに三人で歩いていると、『ブスが両手に花を……』なんて、町の女の子が話しているからさ……」
「……それって、明らかに僻んでいるだけでしょう。もてない女の僻みだから気にしないで」
「……そうかな……」
うどちゃんは、私の背中をポンと叩き、励ましてくれた。
「上乃ちゃん、その話は終わりにして、最近大宮では、変人が現れるって話知ってる?」
「……大宮も、イケメンが消えたり、変人が現れたり大変ね。……で、どんな変人なの?」
「なんでも、いつも棺桶を背負っているらしいわ」
「……それは確かに変人ね。出会ったら、気を付けるわ……」
「うん、そうして…………って云いたかったけど、残念ね。……あれ……」
うどちゃんはプルプルと震えながら、参拝客を指差す。
すると、金髪で、棺桶を背負っている男性が、お賽銭を投げ入れていた。
「外国人でも、神様って信じるのかしら?」
「信じるっていうか、イベントの1つとして考えているんじゃないかなぁ~」
「そうかもね」
そんな話をしていると、金髪男性が、私たちの方へと向かって来る。
「こんにちは。ようこそ氷山神社へ」
「oh、こんにぃちわぁ。巫女ガール、キレイですね」
「ありがとうございます」
ちょっと片言の日本語が楽しい。
……それにしても、間近で見ると、身長が高い。190センチは有るかしらね。
顔も掘りが深くて、鼻が高い。
年齢は25歳位かしら。
控えめに云ってもイケメンだわ。
背中に背負った棺さえ無ければモテるでしょうに。……棺さえ無ければ……。
それにしても、海外の棺って、長方形じゃ無いのね。
縦長の六角形って謂うのかしら。
確か、ドラキュラってのが入っていた棺が、こんな形だった様な気がするわ……。にしても、棺にしては薄い気がする。
厚さは30センチ程度しか無いけれど、人なんて入れたら潰れちゃうわよね……。
いや、もしかしたら……。
「巫女ガール、これなんですか?」
「あわわわ。はい、何でしょう」
まずい、まずい。仕事に集中よ、上乃!
金髪男性が、手に取ったお守りを私に見せる。
「そちらは、お守りです」
「おもり?」
……釣り道具屋では無いので、『重り』など売っていません。
「お守りです。中に神様がいるんですよ」
「oh、中、見てもいいですか?」
「ダメです!」
「では、このお守り買いま~す! 神様見たいで~す。いくらですか?」
「いくら……って、……そもそも、それ学業守りですが、受験でもするのですか?」
「じゅけん?」
「受かりたい、試験とかありますか?」
「試験? 無いで~す!」
「……でしょうね。でしたら、そのお守りは必要ありませんよ」
「では、こっちのお守りにしま~す!」
金髪男性は、安産のお守りを手に取る。
「うん、それはもっと必要ないと思うわ。交通安全か、恋愛成就にでも、してみてはいかがでしょうか」
「それでしたら、恋愛成就にしま~す。素敵な日本人女性と仲良くなりたいで~す。貴女と友達になれるお守りは、どれですか?」
うっ…………そのキャラクターは、柏木さんだけで充分だ……。
「残念ながら、その様なお守りは、置いていません」
「残念で~す。でも、神様見たいので、恋愛成就で我慢しま~す」
「……はぃ、10銭になります」
私は、恋愛成就のお守りを、紙袋に入れる。
「ところで……この神社は、不思議な香りがしますですね。もしかして……」
「……もしかして?」
「あっ……いぇ、今のは無しで~す。またガールに、会いに来ますね。オイドンはパイン云います。お見知りおきを」
そう言葉を残すと、金髪男性は去っていった。
「……何だったのだろう?」
「上乃ちゃん、スゴいのに好かれたね~。また来るってさ」
「そう云ってたね。来なくて良いのに……」




