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鋼鉄の舞姫 ~昭和レトロ活劇・埼玉よ、滅びることなかれ~  作者: YOI
第四章 西方より来る者(七月)
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変人出現

 先日、一瞬この話しを、間違って投稿してしまいました。汗

 先に読んでしまった方、すみません。削除の仕方が分からなくて、大変でした。小説家になろう、使い方がまだよく分かっていません。


 『ミンミン』と、セミの声が、境内(けいだい)にも響く季節となってきた。


 ……今日から7月かぁ。

 私がここに来て、もう3ヵ月が過ぎたのね。

 ……意外と早いものだ。

 日差しが段々と厳しくなってきたし、巫女装束(しょうぞく)もちょっと暑いなぁ……。


 朝日に手をかざして、季節を感じとる。

 今朝も、ルーティンである境内の掃除を終えると、私は、お守りの陳列を始めた。


「お姉ちゃん、頼まれていたお札をここに置いておきますね」


 お札が、ぎっしりと入った箱を、楠君が、お札売り場の下に置く。


「あっ、楠君ありがとうね」

「いぇいぇ。では、失礼します」


 楠君がお辞儀をしながら、その場を発つ。

 私は、微笑みながら手を振り、後ろ姿を見送った。


 ホント、いい顔をするようになったわね。

 お姉ちゃんは嬉しいわよ。


 楠君が、元気を取り戻し、年齢相応の表情を浮かべるのを、私は喜ばしく感じていた。

 ……しかし、優しい空気は続かない。

 そんな、柔和な横顔を見てなのか、背中に同僚が重くのし掛かる。


「あ~が~の~ちゃ~ん!」

「なっ、何かしら……すいちゃん?」


 すいちゃんが、首に腕を絡ませて、力を入れる。


「く……苦しい……」

 

 ホント、一体いつも、何処から現れるのかしら。

 まるでストーカーよね……。

 私は、呆れ顔を作る。……が、すいちゃんには、その顔は見えない。


「いゃぁ……キヨちゃんが、上乃ちゃんに、すっかり骨抜きにされているな~って」

「……骨抜きって……すいちゃん、そういう云い方は、止めてもらってもいいですか?」

「な~に云っているのよ。『お・ね・え・ちゃ・ん』とか呼ばせているくせに。もしかして、逆光源氏計画ですか? 果実は自分で実らせて、食べちゃう派ですか? キヨちゃん、大人になれば、イケメン確定ですものね~」


 べちぃ!


 すいちゃんのおでこを、指をそろえて叩く。


「あうぅぅ……上乃ちゃん、痛いですぅ……」

「だったら、そういう事は云わない事!」

「は~い」


 すいちゃんが、口を尖らせて、不貞腐れた。


「そうだ、上乃ちゃん!」

「なに? まだ楠君で遊ぶの?」

「いゃいゃ、違う違う。別のお話」

「別の?」

「そうそう。最近大宮近郊で、若い男が、失踪する事件が流行っているのって、知ってる?」

「……若い男? 若い女じゃ無くて?」

「そうなのよ。大抵この手の話って、若い女の子が狙われるじゃない。でも大宮では違うのよ。なんでも、若い男が拐われるんですって」

「へ~、幾つ位の男の人?」

「なんでも二十歳前後の()()()()に限るらしいよ」

「……イケメンに限るの?」

「そう。ブ男は全く見向きもされないんだって。つまり、うちの整備班の男は大丈夫って事よ!」

「よし、すいちゃん。それ地下基地に行って、もう一度その話をしようか」

「なっ、そっ、そんな事云える訳ないでしょう! うちの整備班は、ブ男しかいないなんて! そんなこと云ったら私は……」


 ジャリッ!


 おみくじ売り場の外から、玉石を踏み潰す音が届く。


「ほぉぉぉおおお。お・ば・な・ざ・わぁぁぁぁ。その話、ちょっと詳しく聞かせてもらえませんかねぇぇええええ?」


 おみくじ売り場の外には、絵馬を抱えた整備班の柴崎さんが立っていた。

 

「あっ……ぁぁ、これは柴崎さん、今日もいい天気でございますね。オホホホホ」

「尾花沢、天気の話なんてしてねぇよ。整備班がなんだって?」

「……いぇ、整備班の方々は、皆さんいつも大変ですねぇぇって話していたのよ。オホホホホ……ねぇ、上乃ちゃん?」

「えっ、私? 私に話を振らないでよ。自分の発言なんだから、自分で責任取ってください!」

「そっ、そんなぁ……」

「おぃおぃ……尾花沢さんよぉ、ちょ~っと、地下までお茶でも配達に来てもらおうかね。ほら、俺達『ブ男』しか居ないから、モテないんだよ。そうだなぁ……恰好は、忘年会の時に使った、『バニーガール』の恰好で配達してもらおうかね」

「そっ、そんなのいやぁぁぁぁあああ!」

「すいちゃん、自業自得、口は災の元よ! あっ、そうそう柴崎さん、すいちゃん今日ヒマなので、しばらく連れて行ってもいいですよ!」

「おう! 上乃ちゃん、ありがとうね。……さぁ、尾花沢行くぞ!」

「いっ、いやぁぁぁあああ! 助けてぇぇえええええ!」


 ズルズルと、引きずられて行くすいちゃんを、私は合掌をしながら見送った。


「ありゃぁ、すいのやつ、連れていかれてしまったわね」


 何処にいたのか、ひょっこりと、水沢うどちゃんが顔を出す。


「そうね。まぁ、仕方が無いでしょう」

「うんうん。すいのやつ、バカだからね。そいう云えば、さっき何の話をしていたの?」

「さっき? ……あぁ、なんでもイケメンが拐われるって話をね」

「あっ、私も訊いたよ。なんか最近流行っているらしいね」

「……流行ってるって……ちょっと違うと思うけど……」

「うちだとギリちゃんと、龍ちゃんが危険よねぇ」


 そうね。片桐葵、柏木龍三の両名は確かに顔が良い。

 一緒にいる機会が多すぎて、麻痺している部分があるけれど、たまに一緒に街をあるくと、すれ違う女の子が二人をチラ見する。

 そして、その二人の間に、割って歩こうものならば、町の女は、即陰口をたたく。

 『誰あの女! ブスなのに、イケメン二人を両手に何て生意気!』

 やれやれ……。私は、そんな関係の女じゃないのに……。


「ねぇ……。私って、そんなにブスなのかしらねぇ~」

「えっ、なに急に。上乃ちゃんはブスじゃ無いと思うよ。かなり美人でしょう」

「だって、たまに三人で歩いていると、『ブスが両手に花を……』なんて、町の女の子が話しているからさ……」

「……それって、明らかに(ひが)んでいるだけでしょう。もてない女の僻みだから気にしないで」

「……そうかな……」


 うどちゃんは、私の背中をポンと叩き、励ましてくれた。


「上乃ちゃん、その話は終わりにして、最近大宮では、変人が現れるって話知ってる?」

「……大宮も、イケメンが消えたり、変人が現れたり大変ね。……で、どんな変人なの?」

「なんでも、いつも棺桶を背負っているらしいわ」

「……それは確かに変人ね。出会ったら、気を付けるわ……」

「うん、そうして…………って云いたかったけど、残念ね。……あれ……」


 うどちゃんはプルプルと震えながら、参拝客を指差す。

 すると、金髪で、棺桶を背負っている男性が、お賽銭を投げ入れていた。


「外国人でも、神様って信じるのかしら?」

「信じるっていうか、イベントの1つとして考えているんじゃないかなぁ~」

「そうかもね」


 そんな話をしていると、金髪男性が、私たちの方へと向かって来る。


「こんにちは。ようこそ氷山神社へ」

「oh、こんにぃちわぁ。巫女ガール、キレイですね」

「ありがとうございます」


 ちょっと片言の日本語が楽しい。

 ……それにしても、間近で見ると、身長が高い。190センチは有るかしらね。

 顔も掘りが深くて、鼻が高い。

 年齢は25歳位かしら。

 控えめに云ってもイケメンだわ。

 背中に背負った(かんおけ)さえ無ければモテるでしょうに。……棺さえ無ければ……。

 それにしても、海外の棺って、長方形じゃ無いのね。

 縦長の六角形って謂うのかしら。

 確か、ドラキュラってのが入っていた棺が、こんな形だった様な気がするわ……。にしても、棺にしては薄い気がする。

 厚さは30センチ程度しか無いけれど、人なんて入れたら潰れちゃうわよね……。

 いや、もしかしたら……。


「巫女ガール、これなんですか?」

「あわわわ。はい、何でしょう」


 まずい、まずい。仕事に集中よ、上乃!


 金髪男性が、手に取ったお守りを私に見せる。


「そちらは、お守りです」

「おもり?」


 ……釣り道具屋では無いので、『重り』など売っていません。


「お守りです。中に神様がいるんですよ」

「oh、中、見てもいいですか?」

「ダメです!」

「では、このお守り買いま~す! 神様見たいで~す。いくらですか?」

「いくら……って、……そもそも、それ学業守りですが、受験でもするのですか?」

「じゅけん?」

「受かりたい、試験とかありますか?」

「試験? 無いで~す!」

「……でしょうね。でしたら、そのお守りは必要ありませんよ」

「では、こっちのお守りにしま~す!」


 金髪男性は、安産のお守りを手に取る。


「うん、それはもっと必要ないと思うわ。交通安全か、恋愛成就にでも、してみてはいかがでしょうか」

「それでしたら、恋愛成就にしま~す。素敵な日本人女性と仲良くなりたいで~す。貴女と友達になれるお守りは、どれですか?」


 うっ…………そのキャラクターは、柏木さんだけで充分だ……。


「残念ながら、その様なお守りは、置いていません」

「残念で~す。でも、神様見たいので、恋愛成就で我慢しま~す」

「……はぃ、10銭になります」


 私は、恋愛成就のお守りを、紙袋に入れる。


「ところで……この神社は、不思議な香りがしますですね。もしかして……」

「……もしかして?」

「あっ……いぇ、今のは無しで~す。またガールに、会いに来ますね。オイドンはパイン云います。お見知りおきを」


 そう言葉を残すと、金髪男性は去っていった。


「……何だったのだろう?」

「上乃ちゃん、スゴいのに好かれたね~。また来るってさ」

「そう云ってたね。来なくて良いのに……」

 

 

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