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鋼鉄の舞姫 ~昭和レトロ活劇・埼玉よ、滅びることなかれ~  作者: YOI
第三章 命の重さ(六月)
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うどの射出

036 うどの射出

 ドンドンドン!


 私が掃き掃除をしていると、昼下がりの氷山神社境内に、太鼓の音が鳴り響く。

 

 前回の戦いから、2週間。そろそろ来ると思っていたけど、……やはり出現したわね、鹿鬼!


 私は、お社裏のスイッチを押して、出撃準備をすべく、ポッドの中に体をねじ込んだ。


 白を基調とした戦闘服に着替え終えると、指令室に姿を現す。

 

 ザッ!


 渾身の敬礼をする。

 

「浅倉上乃、只今出撃準備が整いました」


 どうやら、私が一番初めに到着したらしい。

 指令室の上座には、金沢支部長が、腕を組みながら座っている。


「おぅ、浅倉、ご苦労。三沢君から話は聞いているよ。楠は、随分とお前さんになついているそうだな」

「そうだと、ありがたいのですが……」

「いゃ、組長としてよくやっていると思う。今後ともよろしく頼む。っと、続々集まって来たな」


 支部長が話を終えると、組員の3人が、続々と床から姿を現した。


「全員揃ったな。では、今日の作戦を伝える。三沢君、頼む」

「了解しました。それでは、現在把握している敵の位置について伝えます。現在敵は浦和市に、鬼型鹿鬼2体が出現中。県庁所在地で暴れている為、被害は甚大。至急鹿鬼の殲滅に当たられたい。尚、今回の作戦には片桐、柏木の両名で行ってもらう」


 しかし、それに対し、片桐さんが敬礼をして異を唱える。


「申し訳ありません参謀! この女たらしと行くくらいなら、俺は一人で行きます」

「あぁぁん? 俺だって、お前みたいな能面男はごめんだ」

「誰が能面だ?」

「お前しかいないだろう! この冷血能面!」


 お互いに、胸倉を掴み始める。


 片桐さんも、柏木さんに対しては感情を(あら)わにするのね。……って、感心している場合ではない。


 私は、二人の間に割って入る。


「ちょっと待って二人とも。仲が悪いのは分かったけど、楠君を出撃させる訳にはいかないでしょう」


 胸ぐらを掴み合っている腕から、お互いに、力が抜けて行くのを感じる。


「それに、私思うの……多分浦和の要石は、既に破壊されている……」


 喧嘩をしていた二人は、どちらともなく、手を放す。


「組長ちゃんは、浦和はどうすべきだと思うんだい?」

「……そうね。上手く云えないのだけど、多分浦和は既に目的を遂げている。だけど、このまま放置する事は出来ない。まだ何かがある気がするの」


 ……そう、私の考えでは、既に浦和の要石は破壊されている。しかし、鹿鬼はただ要石を破壊する為だけに出現したのではない。

 もし、石を壊すだけならば、こっそりと壊せばいいし、二体もいらない。

 つまり、町を破壊するのも、目的の1つと考えるべきなのだろう。


 敵が、町を破壊する目的とは……。いゃ、それは今考えることじゃ無い。

 少なくとも、敵も、試行錯誤しながら、破壊活動をしているのは確かだ。

 最初は鹿鬼1体。しかし、それが2体へと増えた。

 そして次に、時間差で、数か所同時攻撃。

 つまり、敵は手札を徐々に増やし始めている。

 敵は、手札を増やすが、減らすことはしない。つまり、今回も同時多発攻撃が行われるという事だ。

 私の予想では、前回私が訪れた鴻巣宿辺りなら、距離が離れていて丁度良い。

 距離があるので、そうそう応援も、転進も出来ないしね。


「片桐さんに、柏木さん。私の意見を聞いてもらえるかしら」


 二人は、私の顔を見る。

 

「では、私の考えを述べます。まず、浦和は県庁所在地です。ですから人口も多く鹿鬼に恐怖している町民が多い事でしょう。また、重要な建物が多い為、到着が遅れれば遅れるだけ、被害が甚大となる恐れがあります。そこで、うちのトップ戦力である片桐さんと、柏木さんに迅速に処理をお願いしたく思います」

「女ったらしと行くのはしゃくですが、組長はどうするんですか?」

「私は、多分次に鹿鬼が現れる鴻巣宿、もしくはそれ以外の町に備えます」

「……鴻巣ですか。前回鹿鬼が暴れたばかりですけどね」

「えぇ、ですが、前回石を破壊された形跡が見当たらないとの事ですので、多分今回は要石の破壊が目的で現れると思います」


 私がここまで説明したところで、金沢支部長が柏手を1つ打つ。


「俺も、浅倉と同じ考えだ。ってなわけで、片桐と柏木には浦和へ行ってもらう」


 ザッ!

 

「了解!」


 両名は金沢支部長に敬礼をした。



 ● ● ●



 指令室では、手元のモニターを確認しながら、すいちゃんが随時報告を入れる。


「片桐、柏木の両名は、無事浦和に到着しました。現在片桐は鹿鬼と交戦中。もう一体にあっては柏木が既に撃退済み」

「おぅ、ごくろうさん。……さて……」


 支部長は、大型モニターを見上げながら頬杖を突く。


「やっこさん、来ねぇなぁ……」

「支部長、質問宜しいでしょうか?」

「なんだ?」

「ところで、鴻巣の要石ってどこに在るのか分かっているのですか?」


 支部長が口をつむる。


「……え~っと、もしかして分からないのですか?」


 代わりに、三沢さんが口を開く。


「実はね、よくわからないのよ。要石についての伝承が、一切見つからなくてね」

「ってことは、敵の出方を見ないとなんですね。後手、後手ですね……」

「一応、それっぽい石を検索させて報告はさせているのだけれど、只の石碑だったり、お墓だったりと難航しているの。ごめんなさいね」

「いぇいぇ。それは仕方の無い事です。それよりも……」


 私達が悠長に話していると、うどちゃんが凍るような声で警告を促す。


「鹿鬼の発見報告、入電しました。場所は、鴻巣宿……から北へ500メートルほどズレた場所です」

「……やはり宿場町イコール要石と謂う訳ではなさそうね。とりあえず了解したわ。私と楠君の両名で向かいます」


 と、同時に、三沢さんが髪をかきあげる。


「それでは、浅倉組長と楠組員は煙突砲への発射準備に取り掛かって下さい。尾花沢さんは浦和のイ組の指令を! 浅倉組長のロ組へは、指示は私が出します。……水沢さんは、浅倉組長の発射準備を!」

「よろしくね、うどちゃん」

「かしこまり!」


 その言葉を聞くと、私は、出撃準備の為、煙突砲へと向かった。


「よう、組長。準備万端だ。いつでも行けるぜ!」

「ゲンゲン、いつもありがとうございます。行ってきます」

「おぅ!」


 私はゲンゲンに送り出されて、煙突砲へ搭乗する。


「浅倉、準備OK。いつでも行けるわ!」

「指令本部かしこまり! ほんじゃまっ浅倉組長、射出します。カウントダウン5・4・3・2・1・0……」


 …………あれ? 全然射出されないんだけど。

 故障かしら?

 うーん、全くもって、射出される様子がない。


 私は、カタパルトが故障したのかと思い、足元を見る。

 すると下を見た瞬間に、カタパルトが天空へと加速する。


 ゴフゥゥゥゥウウ!

 

 …………えっ!


 私の体は、直立の常態から、首だけが下を向いた状態でロックされた。

 そう、空へと打ち出すときのGにより、下に向いた首を、元へ戻す事が出来なかったのだ。


「がごぉぉおお。首、首、首がもげるぅぅぅぅうううう!!!」


 私は、むち打ちになるのでは無いか! いゃ、なっているのでは無いかと思いながら、上空へと放り出された。


「…………あっ…………こちら……浅倉……現在……最高到達点に……到着しました……が、既にダメージが……ゴホッ」



 その様子を、三沢は、大型モニターで確認していた。そして、頬に手を当てながら、首を少し斜めに傾ける。


 浅倉組長、鹿鬼と戦えるのかしら……。辿り着く前から心配だわ……ハァ。

 

 三沢は、心配そうな目で見つめると共に、水沢の射出に対して、指導せねばと考えていた。



 ……風が生温かいわね。

 まっ、快晴なので、空を飛ぶのには最適だけど……。


 私は順調に、桶川宿の上空を飛んでいた。


「こちら浅倉、現在桶川宿を通過。間もなく鴻巣に入る。どうぞ」

「指令本部了解」

「こちら楠。こちらも組長の後方に付けています。組長同様、間もなく鴻巣に入る。どうぞ」

「指令本部りょうか……ぁ、あっ、今、鴻巣の情報が入ったよ。鹿鬼は以前戦ったメリケン男だってさ」

「……うどちゃん、メリケン男って、マイクの事かしら?」

「そう、そう。拳闘士のマイクだよ」

「……拳闘のマイク。前回、散々スウェーバックに悩まされた相手ね。今回は、攻撃をもう少し深くまで踏み込む。避けられても当たる距離で、攻撃してやるわ」

「期待しまくりです! 浅倉組長よろしくです!」

「了解!」


 私は、モニターを確認しながら飛行を続ける。


 到着予定時間……あと1分って所ね。

 ……さて、マイク。卑怯かもしれないけれど、空中から先制攻撃させてもらうわね。

 残念ながら、私は平安時代の武将では無い。『やあやあ我こそは』と云っている場合じゃないのよ。


 私は、あと数十秒で目的地に到着のため、目を凝らす。

 

 ――見えた! 相も変わらず、砂埃がいい狼煙ね。何処にいるのかすぐにわかるわ。


 フライングスーツを傾けて、微調整を行う。


 さて、間もなく砂ぼこりの上空だけど……マイクはどこ? 砂埃はキレイに上がっているのに、肝心のマイクの姿が発見出来ない。

 ……くっ、にしても、砂埃のせいで、地表が見えにくい……。


 私は速度を落として、ゆっくりと下降を始める。しかし、その直後、砂埃の中から人影が現れた。


 しまった!

 こんなところに、火の見(やぐら)が! 櫓を足場に……。


 マイクが、ジャンピングパンチを、私のボディーに炸裂させる。


「ごはぁぁ」


 私は、見事に迎撃されたのだ。

 腹部には激痛が走り、呼吸すらままならない……。


「よう、レディー、久しぶりだな」

「ごほごほぉぉ」


 ……くっ、マトモに、返事も出来やしない……。


 ズザザァァァアアア…………。


 私は、転がるように、地表へと落下した。

 そんな私を、マイクは虫けらを見るような目で、見下ろす。


「まっ、レディーは、これで、暫く動けないだろう。いゃ、リタイヤか……」


 マイクは私に背を向ける。

 そして、敵は、本命の方へと体の向きを変える。


 ズザザァァァアア……。


 着陸と共に、楠君が既に臨戦態勢で、構えをとる。


「さて、久しぶりだな……ボーイ! それじゃぁ、再戦と行こうか! 俺はこの日を楽しみにしてたんだぜ」


 畦道(あぜみち)に着陸した楠君と、マイクはお互いに対峙する。


「どうも、久しぶりです。因みに、僕も会いたかったんですよ……」

「ほぅ……。ボーイは同性愛者かい?」

「同窓会ですか? 云っている意味が、よく分かりませんが、前回の僕と思ったら大間違いですよ」

「成る程……。前回とは違うと……な……。少し身長でも伸びたかな? 何ミクロン伸びた?」


 楠君の目が、細くなる。


「バカにしないでください。……それより、あたなのお名前、何て云いましたっけ? ブサイクでしたっけ?」


 今度は、マイクの目が細くなる。


「ブサイクじゃねーよ、マイクだよ、マイク」

「あっ、そうでした。マイクさんでしたよね。顔があまりにブサイクだったので、ブサイクさんかと思っていましたよ。アハハハ」


 ブチーン!


 マイクの脳血管が切れる音が聞こえてきそうだ。

 

「……ケッ、ボーイ、いい度胸だな。今日はサンドバッグじゃ許さねぇぜ。サラサラと砂がこぼれ出るまで、殴ってやるからな……」

「……別に許してくれる必要ないですよ。――なにせ、僕は、あなたを許す気なんて、サラサラ無いのですから!」


 楠君は、眼光鋭くマイクを睨み付けた。

さて、次回からは対マイク戦です。

マイクは書いていて、楽しいキャラですね。

ザ悪って感じなのが最高です。

マイク戦、楽しんでもらえれば幸いです。

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