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鋼鉄の舞姫 ~昭和レトロ活劇・埼玉よ、滅びることなかれ~  作者: YOI
第三章 命の重さ(六月)
35/101

敵の狙いは

「浅倉少尉入ります」

「おう、入れ」


 私は、金沢支部長に呼ばれて、指令室へと足を運んだ。

 部屋に入ると、モニターの前には、金沢支部長。そして、その横の椅子には、三沢参謀長兼副支部長が座っていた。


「わざわざ来てもらって悪いな」

「いぇ、ご命令とあらば……。して、私になんの御用でしょう」

「いゃ、お前の報告書を読んだのだが。それで、少し、お前の意見を聞こうと思ってな」


 すると、三沢副支部長がモニターに埼玉県の地図と、中山道の道のりを表示させる。


 埼玉県。その形は、ちょっと丸っこいサツマイモを、床に置いて、横から見た感じだ。

 そして、中仙道とは、そのサツマイモが床に接している部分、つまり下の真ん中。ここよりちょっと右側から左斜め上。概ね10時半の方向に向けて、包丁でサツマイモを切ると、その切った切り込みの筋が、中山道となる。

 方位で説明すると、埼玉県の南側中心より気持ち東から、北西へと走っている街道となる。

 そして今、モニターには、物差しの目盛りの様に、中山道上に地名と鹿鬼の出現数が表示されている。

 私は、その地名を北から順に目で追った。


 本庄宿 零

 深谷宿 零

 熊谷宿  零

 鴻巣宿 鬼型2

 桶川宿 人型1

 上尾宿 鬼型1 鬼型1

 大宮宿 鬼型1 鬼型1 鬼型1&人型1

 浦和宿 鬼型1 鬼型1

 蕨宿  鬼型2


 ぱっと見ると、東京に隣接している南側に、鹿鬼が多く出現している事が分かる。

 ただし、これだけでは、分から無い情報もある。桶川宿の人型鹿鬼、マイクの情報だ。

 モニターに映し出されているのは、鹿鬼が出現した数だ。しかし、マイクにあっては、桶川宿で鹿鬼化した様には見えなかった。

 多分、彼は他で鹿鬼化して送り込まれた鹿鬼なのだろう。

 ……だとするならば、マイクは、どこで鹿鬼となった?


 私は、地図からそんな事を読み取っていた。

 すると、支部長が私に声を掛ける。

 

「浅倉、今お前さんに見てもらっている画面だが、何か思う所はあるか?」

「何か思う所とは、支部長……随分と、ザックリとした質問ですね」

「事前情報なしで答えてもらいたいのさ」

「……成程」


 私は、再度画面を睨み付ける。


「事前情報なしと云われましても、やはり、今までの鹿鬼とかの行動は考慮しますよ」

「かまわん。その上で、お前さんの意見を教えてくれ」

「分かりました。それでは、私の意見を述べさせてもらいます」


 私は大きく息を吐いてから、短く息を吸う。


「まず、鹿鬼についてですが、鬼型鹿鬼は、本能で町を破壊する動物型。そして、人型鹿鬼は、人間と同じく考えながら武器で攻撃してくる、達人の様な存在と解釈しています。人型鹿鬼は、我々とコミュニケーションが取れますが、鬼型鹿鬼には、それが出来ません。つまり、猛獣と呼んだ方が、近いかもしれません」

「……人間と猛獣。確かにその表現は正しいかもしれないな……。続けてくれ」

「はい。では、ここからは報告書には書いていない憶測をお話します」


 支部長及び副支部長の目付きが変わる。


「まず、人型鹿鬼についてですが、現時点で既に4人はいます」

「あぁ、それは前回話を聞いたよそれで、恐呼が加わって、4人になったんだろう」

「えぇ、その通りです。王が楠君を勧誘してきたときに、私は王に『麻雀でもするのか』とカマを掛けました。すると王は、『麻雀をするのには一人足りない』と答えましたので、既にその時点で3人はいる事となります。そして、大宮で生まれた女性の鬼恐呼(きょうこ)。これが加わって4人という訳です」

「……そのとおりだが、何か変わった事でもあるのか?」

「えぇ、しかし、恐呼は人型です。つまり、王を裏切っている可能性も無いと云い切れませんでした。ですが今回、私と交戦したマイクは撤退をする際に『恐呼が暴れている?』と話していたのです。これは念話か何かの一種だと思いますが、この通話により、恐呼が王を裏切っておらず、王の元に居ることが伺えます」

「念話……あぁ……報告書にあった『何か思いついたように』とニュアンスが誤魔化してあった部分だな」

「えぇ、そうです。報告書に確証の無い()()とは書けなかったものでして……」

「もし王達が、その念話を使用するとしているならば、お互いに通信できるのは、我々だけでは無いって事かぁ……これは厄介だなぁ……」


 支部長と副支部長の二人は、腕を組みながら衝撃の事実を受け止めている。


「あと、もう1つ気になる事があります。これは報告書に記載しましたが『石』の存在です」

「おぅ……。それに関してはこちらで調べてみた。マイクとか謂うやつが『独り言を呟きながら、石を破壊した』って書いてあった件だな。だが、今の話から推測すると、念話で誰かと話していたって事なのか?」

「可能性としてはかなり高いと思います。『石はちゃんと破壊した』つまり、誰かに命令されて破壊したのでしょう。その石と謂うのが何なのかは結局分かりませんでしたが……」

「それについては私が説明します」


 三沢副支部長が、冷水の様なキリッとした言葉を挟む。

 副支部長は、手元のキーボードを叩いて、モニターに破壊された石を表示させた。

 映し出された石の大きさは、大型犬くらいだろうか。

 元々は、縦長の形をした石碑か、または、墓石の様にも見える。


「今映し出しているが桶川での要石になります」

「……要石ですか?」


 私は、つい間抜けなトーンで、言葉を口に出してしまった。


「えぇ。その通りです。確認した所、今まで鹿鬼が出現したポイントにおいて、要石が数多く破壊されています。調べたところ、南から、蕨宿、大宮宿、上尾宿、そして、桶川宿と破壊されている事が分かりました。つまり、敵は、鹿鬼の生成、及び要石の破壊を目的としている様です」


 ……要石の破壊……鹿鬼の生成。

 鹿鬼は、仲間を増やす為なので理解はできる。では、要石の破壊目的は一体……。


「副支部長、質問よろしいでしょうか?」

「どうぞ」

「敵は要石を破壊してどうするのでしょうか?」

「……そうなのよね、理由が分からないのよ。……古来から要石の破壊の目的として考えられるのは、龍脈の移動とかでしょうけど……」


 龍脈……。土地に流れる地脈の1つ。

 古来より人々は、悪しき地脈を封印、又は流れを変更するために、要石を置いたと云われている。

 つまり、要石を破壊すると、その土地に地震や洪水等の天災が訪れる。

 これは、日本各地の伝承として、記されている。

 では、中山道といった、人の往来が多い場所の要石を破壊すると、どの様な天災が訪れるのか……。

 流石の私も、そこまでの知識を持ち合わせてはいない。つまり、こればっかりは、私も想像がつかないのだ。

 ……だが、今の話を聞く限り、まだ、壊されていない要石が存在する。

 つまり、それらを守る事を第一にすれば、先手が打てるのではなかろうか?

 もっとも、そんな事は、支部長達は当然考えている事だろう。

 ……そうなると、我々が調べる事は、要石が全て破壊された場合、埼玉はどうなるのか? といった、その後の事象についてか……。


「フフフ……。浅倉、考えているな。まぁいい、それはお前の宿題にしてやる。それよりも、お前にはチームを纏める仕事を優先させて貰いたい」

「えっ、チームを纏める……ですか?」

「あぁ、そうだ。今、鋼組はバラバラだからな。特に片桐と柏木の仲が悪い。上手に纏め挙げてくれ」

「了解しました!」


 私は敬礼で答える。


「あぁ……あとな。これは、もし心当たりがあったらでいいのだが、妖力を持った者がいたら、鋼組にスカウトしてくれ」

「……すっ、スカウトですか?」

「あぁ、うちも人数不足なのでな。目ぼしい者がいたら、スカウトして欲しいのだよ」

「りっ、了解しました。でも、そんな人物なんて、そうそう簡単には見つかりませんよ。お目当ての飴玉を、駄菓子屋で探すのとは、訳違うんですから……」

「……まっ、大きな期待はしていないから、()()()で構わんよ」

「わかりました。頭の片隅にでも覚えておきます。……で? もし見つけたとして、何を餌に我々の組織に協力してもらうんですか? お金ですか?」

「……そうだな。お前の美貌ってので、どうだ?」

「……なるほど。確かにそれ以上の餌は無いですよね。……ところで三沢さん。こういう時は、支部長を殴っても宜しいのでしょうか?」

「えぇ、安心して。宮司は、後で私が、『境内一周掃き掃除の旅』にご招待しておくので」

「それは、助かります。なにせ参道は2キロもありますからね。フフフ」

「あら、私も参道がキレイになるのは楽しみですわ。オホホホ」

「……いゃ、俺が悪かった。謝るから許しては貰えないか?」

「「ゆるしません!」」


 三沢さんと声が重なったところで、会議は終了となった。

こんにちは、YOIでございます。

さて、本作品は中山道(なかせんどう。中仙道とも書く)を中心に話が進んでおります。江戸時代に使われていた有名な街道の一つです。

東海道なんかは有名なのでご存じの方が多いのではないでしょうか?

さて、作中でも説明しておりますが、この中山道には宿場町が存在します。

宿場町って? って方に簡単に説明しますね。

なんでも、江戸時代は東京から、京都まで、埼玉、長野~と内陸を歩いて旅行するのが流行したらしいのです。

旅ブームですね。

そうなると、当然、泊まるところが必要になりますよね。それが宿場町ってな訳です。

ザックリとした説明ですが、ご理解いただければと思います。


そんな訳で、埼玉の中山道には9ヶ所の宿場町が存在します。

まだ、群馬県と隣接している北の方の3ヶ所の宿場町は登場しておりませんが、本作品をより楽しんでいただくために、一度地図システムで、これらの位置関係をサラッっと見て頂ければ、より楽しめるかと思います。


尚、本作品の年号は、昭和ではなく正和です。

フィクションとなっておりますので、誤りの無い様にお願いします。

「大宮に要石なんてないじゃないか!」とかの苦情は受け付けておりません。w


では、また来週お会いしましょう。CU

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